自治体新電力とは

全国で急増する「自治体新電力」とは


 電力自由化を機に、全国的に「自治体新電力」が急増しています。そもそも自治体新電力とは何なのか、またどのような意義・問題点があるのかを整理します。



そもそも自治体新電力とは何か


 まずは自治体新電力とは何かを整理します。


自治体新電力の定義


 まだ定まった定義は無いようですが、一般的には「自治体が設立に関与している小売電気事業者」と理解されていると思います。厳密に定義するならば、自治体が出資して設立された新電力会社です。


自治体新電力と地域新電力は必ずしも同じものではない


 事業内容は様々ですが、まずは設立した地域の公共施設などへの電気の供給から始めて、事業が安定した後に地域の一般家庭や企業にも供給を始めるところが多いです。また、設立された狭い地域だけでなく、「九州電力エリア全体」など広い地域に電気を供給している自治体新電力も存在します。


 似たような言葉として「地域新電力」がありますが、こちらは必ずしも自治体が出資しているものではありません。自治体が入らず、地域の人や企業・団体などの出資で設立されたものが多く存在します。一方、自治体新電力の多くは地域新電力とも呼ぶことが出来るでしょう。


全国の自治体新電力の一覧(35社)


 自治体が出資している(もしくは設立時に出資した)と確認できたものを一覧で紹介します。


社名 出資している自治体
東北地方
かづのパワー 秋田県鹿角市
やまがた新電力 山形県
東松島みらいとし機構 宮城県東松島市
宮古新電力 岩手県宮古市
北上新電力 岩手県北上市
久慈地域エネルギー 岩手県久慈市
かみでん里山公社 宮城県加美町
気仙沼グリーンエナジー 宮城県気仙沼市
葛尾創生電力 福島県葛尾村
そうまIグリッド合同会社 福島県相馬市
関東地方
銚子電力 千葉県銚子市
成田香取エネルギー 千葉県成田市、香取市
CHIBAむつざわエナジー 千葉県睦沢町
中之条パワー 群馬県中之条町
おおた電力 群馬県太田市
東京エコサービス 東京二十三区清掃一部事務組合
ところざわ未来電力 埼玉県所沢市
秩父新電力 埼玉県秩父市
中部地方
浜松新電力 静岡県浜松市
松坂新電力 三重県松阪市
関西地方
いこま市民パワー 奈良県生駒市
泉佐野電力 大阪府泉佐野市
こなんウルトラパワー 滋賀県湖南市
中国地方
中海テレビ放送 鳥取県米子市、境港市、日吉津村など
とっとり市民電力 鳥取市
南部だんだんエナジー 鳥取県南部町
ローカルエナジー 鳥取県米子市、境港市
奥出雲電力 島根県奥出雲町
九州地方
みやまスマートエネルギー 福岡県みやま市
いちき串木野電力 鹿児島県いちき串木野市
ひおき地域エネルギー 鹿児島県日置市
北九州パワー 福岡県北九州市
おおすみ半島スマートエネルギー 鹿児島県肝付町
ネイチャーエナジー小国 熊本県小国町
Coco テラスたがわ 福岡県田川市

 出資比率は様々です。また、一般家庭に電気を供給していないものや、自治体施設にのみ供給しているもの、あるいはまだ電気の供給を開始していない自治体新電力会社もあります。


 家庭向けの料金プランを公表している自治体新電力については、当サイトの料金シミュレーションに掲載しています。多くは大手電力会社よりも若干安い料金プランを提示しています。


自治体新電力の意義とメリット


 自治体新電力がなぜここまで増えているのか、その意義やメリットを解説します。


地域の経済を活性化する


 多くの自治体新電力は、設立の目的として「地域経済の活性化」が挙げています。


 多くの大手電力会社や新電力会社は大都市に本社をかまえています。地域で毎月生み出される電気代という「消費」は、地方都市への恩恵が小さいです。自治体新電力を設立することで、これまで大都市に流出していた電気代(年間で世帯あたり約10万円)を地域に取り戻し、税収や雇用を確保するという目的があります。


地域内での富の循環を期待している


 ドイツにはシュタットベルケと呼ばれる地域新電力・自治体電力が1000近く存在し、多くの消費者が利用しています。そうした事例を参考として、「○○版シュタットベルケを目指す」と宣言して設立される自治体新電力もあります(秩父新電力など)


電気の地産地消に貢献する


 電気の「地産地消」を掲げている自治体新電力が多く存在します。


 特に地方では、太陽光発電所など再生可能エネルギーによる発電が急激に増えています。そうした地域で生み出されるエネルギーを、地域で活用していこうという取り組みです。自治体が保有している太陽光発電所や小水力発電所から電気を調達している自治体新電力も多いです。それに伴い、新たに発電所を増設する動きもあります。


 太陽光発電や風力発電といった自然エネルギーの他にも、地元のごみ焼却施設でつくられる電気を調達し、販売している自治体新電力もあります。


地域新電力会社の目的
1.「再生可能エネルギーの地産地消」を目指します。
地域で作られた再生可能エネルギーをそのまま地域で使うことにより、環境に配慮したまちづくりの実現を目指します。

引用元: 地域新電力会社「秩父新電力株式会社」 (秩父市)


問題点もある


 問題点も目立ちつつあります。


経営難に陥っているところもある


 自治体新電力の代表例として知られる「みやまスマートエネルギー」(福岡県みやま市が出資)は、債務超過に陥っています。平成29年度決算でようやく初めての単年度黒字を達成していますが、累積赤字は3400万円にものぼります(産経新聞報道)


 自治体が設立した自治体新電力は、いわゆる「第三セクター」にあたります。かつてスキー場などを運営する第三セクターがバブル崩壊により相次いで経営破綻したことがありますが、同じ轍を踏む自治体新電力が少なからず現れるはずです。


 スキー場のような多額の設備投資を必要とせずに参入できる新電力事業ですが、税金を投入する以上は成功する道筋をある程度つけてから参入すべきです。また、住民に設立目的や意義をよく理解してもらうことが、顧客開拓の面でも重要でしょう。


自治体新電力は経営難のところも


住民訴訟になるケースも


 奈良県生駒市は自身が設立した「いこま市民パワー」と電気の購入について随意契約を結びましたが、その電気代が割高だとして一部住民からの住民訴訟を起こされています。


 自治体新電力は必ずしも価格競争力があるわけではないため、このようなトラブルは今後も起こり得ると言えます(家庭向けのプランは大手電力よりも「ちょい安」のところが多いです)


意義が見いだせない自治体新電力も


 自治体新電力・地域新電力を標榜しながら、全く関係の無い地域に進出している自治体新電力もあります。「外貨」を稼ぐという点では市民にもメリットがある経営戦略ですが、自治体新電力の本質的な目的からは外れていると言えます。


 また、「地産地消」を掲げながらも地元産の電力をわずかしか調達していない例も少なく無く、設立目的と照らして事業内容が適切でないものも見られます。例えば上でも紹介した「いこま市民パワー」は約9割を大阪ガスからの調達に頼っています。


 そもそも自社で供給せずに地域外にある大手新電力の契約を取り次ぐだけの自治体新電力もあり、その存在価値に疑問符が付きます。




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