相次ぐ電気代値上げにマンション管理組合はどう対処すべきか
燃料価格高騰や電気代補助金終了、再エネ賦課金の上昇など様々な理由から値上がりするマンション共用部の電気代。タワーマンション管理組合で副理事長を務め、また一棟所有の小規模マンションを保有する筆者が小規模〜大規模マンション管理組合が取るべき対処方法を解説します。
目次
マンション共用部の電気代を削減する4つの方法
マンション共用部の電気代を削減する方法は4つあります。
節電
書くほどのことでも無いとは思いますが、まずは節電が重要です。管理組合で確認すべき点は以下のとおりです。
- 空調の設定温度・使用方法
- 照明の必要が無い箇所の洗い出し
例えば無人になることが多い箇所の照明や空調を落とす運用に変更することで電気代の削減が可能です。私が副理事長をつとめるタワーマンションのパーティールームでは、利用者が少ないにもかかわらず照明と空調を常時オンとする運用がされていましたが、使用する人が少ないスペースなので使用する人が各自でオンにする運用に変えてはどうかと管理会社に提案しました。年間で1〜2万円の節約になるはずです(50平米程度のスペース)
日当たりが良い場所では晴天時・昼間に照明を消しても照度に問題が無いケースがあります。昼間に照明を消灯しても差し支え無い箇所を洗い出すことをおすすめします。例えば東京では年間の晴天日が約200日あるので、8〜15時に消灯できるとすれば年間1400時間分の照明を削減できます。ただしLED電球は消費電力が小さいため、15球を年間1400時間消灯しても年間約4000円程度の節約に留まります。
電力会社の切り替え
主に低圧契約で電力を使用している中小規模のマンション管理組合におすすめです。
電力会社を切り替えることで、電気料金の単価が下がり電気代を削減することが出来ます。例えば15戸・5階建て・エレベーター付きマンションで試算した場合、年間で1万円前後の削減が可能です(東京電力管内:東京電力標準メニューとの比較)
電灯契約だけでなく、エレベーターなどに使用する動力契約でも電気代の削減が可能です。低圧電灯契約の料金削減については当サイトの電気料金一括シミュレーションを参考にしてください。
なお、タワーマンションを始め大規模マンションで使用されている高圧電力に関しては、大手電力会社の料金メニューが「無難」です。電力会社を切り替えることで安くなる場合もありますが、「安くなる」料金プランは電力取引価格が高騰した際に電気代が大きく高騰するリスクがあるものが多いです(リスクが大きい分、普段は安い) 大手電力の高圧電力でも昨今は電気代高騰リスクがあるものが増えていますが、よりリスクが大きなもの(電力取引価格への連動性が強いもの)ほど平時の料金が安い傾向があるため、リスクが大きいことには留意すべきです。
私はこのようなサイトを運営していますが、自分が副理事長を務めるタワーマンションの高圧電力の切り替えは一切提案していません(ほかの理事がもし提案した場合は反対するつもりだった) 高圧電力の料金削減については以下の記事で紹介している一括見積もりサイトを利用することで料金の比較を行うことが出来ます。
太陽光発電の設置
太陽光発電を設置することで、電気代の削減が可能です。
マンションにお住まいの方は太陽光発電にあまり馴染みが無い方が少なくないと思いますが、わが国では概ね10年前後で初期費用を回収することが出来るとされています。もし条件が揃っている場所を確保出来るのであれば、太陽光発電を設置しないことは「損」と言えます。
太陽光発電は売電価格が年々下落しています。一方で発電した電力はマンション共用部で使うことができ、その分電力会社から購入する電気の量を削減することが出来ます。太陽光発電が発電する昼間に、一定の電力を使用するマンション共用部で採算性が高いです(逆に昼間の使用量が少ない場合は採算性が低い)
昼間に日陰にならない屋根があるマンションでは、ぜひ導入を検討してください。なおタワーマンションのような高層建築物の屋上での設置は難しいと言われています。
太陽光発電設備をめぐっては、同じメーカーの同じ製品でも購入する代理店によって「1.5倍程度の価格差が生じている」と経産省傘下の太陽光発電競争力強化研究会が2016年に公表しています。導入する場合は必ず、一括見積もりサイトなどを利用して相見積もりを行うことをおすすめします。
基本料金削減
低圧契約で電気を使用しているマンションでは、電気の契約容量の引き下げを検討してください。基本料金が安くなることで、中小規模のマンションでも年間数千円の電気代削減が可能です。引き下げ過ぎることでブレーカーが落ちてしまうと住民生活に支障が生じるため、引き下げ過ぎには注意してください。
高圧電力を使用している大規模マンションでは、使用実績に基づいて契約容量が決定されている場合があります。管理組合が契約容量の引き下げを希望しても、変更してもらえない可能性があります。ですが過去の使用実績から契約容量が決まることが多いため、電気の使い方を工夫することで契約容量が引き下がり、基本料金を削減できる場合があります。
具体的には、ピークシフトを心がけてください。ピークシフトとは、電力の需要が多い時間帯を避けて少ない時間帯に電気の使用を移行させる工夫です。年間で最も電気を多く使う時間帯(多くの場合、真冬の17〜20時台)に節電を心がけたり、あるいはこの時間帯に稼働している設備をほかの時間帯に稼働させるようにシフトすることで実現できます。一年中節電する必要は無く、年間の「ピーク」に狙いを定めるだけで十分です。
最終手段は管理費値上げ
ここまで紹介してきた電気代削減方法を実践しても、電気代の削減には限界があります。そこで管理費の値上げを検討する際のポイントを最後にご紹介します。
私の試算では、5階建て・エレベーター付きの小規模マンションで1戸あたりの共用部電気代の負担は月1000円台です。一方、タワーマンションでは1戸あたり5000円以上と高額です(念のため、専有部分の電気代ではなく共用部の電気代を1戸あたりに引き直した月額料金です)
一般的な低層マンションであれば管理組合会計に占める電気代の割合はそれほど大きくはありませんが、タワーマンションでは管理費の3割以上を占めることが珍しくありません。一方で、1戸あたりで共用部電気代がいくら発生しているのか、詳しく把握している区分所有者は稀でしょう。
まずは共用部電気代が1戸あたり月額いくら発生しているのか、区分所有者の皆さんに認識していただくことが管理費値上げを受け入れてもらう上で有効だと思います。
付録 2024年春の電気料金値上げについて
予算案を作る際の参考にしてください。私が副理事長を務めるマンションの管理会社(財閥系不動産子会社)も適切な情報把握を行うことが出来ていないようでした。
要因 | 値上がり幅 |
---|---|
電気代補助金終了 | 3.5円/kWh(低圧) 1.8円/kWh(高圧) |
再エネ賦課金上昇 | 2.09円/kWh |
2023年から実施されていた電気代補助金が2024年5月分をもって終了します。補助金の終了により低圧では3.5円/kWh、高圧では1.8円/kWh電気代の単価が上昇します。電気代補助金は電力会社によって明細書での書き方が異なりますが、「燃料費調整額」から割り引く形で補助金を適用している電力会社が多いので、終了により燃料費調整額が上昇することになります。
また、再エネ賦課金も上昇します。再エネ賦課金単価は毎年5月に改定されており、2024年度の単価は3.49円/kWhとなっています。23年度は1.40円だったので2.09円/kWhの値上がりとなります。24年度の単価は22年度と同程度の水準(23年度が特別安かった)ではありますが、電気代上昇要因となります。私のマンションの管理会社は再エネ賦課金の上昇を把握していないようでした。
これら2つの要因により、2024年春に電気代が1割以上上昇するでしょう。
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