市場連動型のメリット・リスクは地域によって大きく異なる
昨今、導入する新電力が増えている市場連動型プラン。電力取引価格が高騰すると電気代が高額になるリスクがある料金体系ですが、そのリスク・メリットは地域によって大きな違いがあります。地域ごとに市場連動型プランのメリット・リスクを解説します。
目次
市場連動型プランの「危険度」は地域によって違う
市場連動型プランのメリット・リスクの地域差の原因を解説します。
地域によって大きく異なる電力需給
市場連動型プランの電気料金は地域によって異なる電力の取引価格(エリアプライス)に連動します。
電力取引価格は北海道電力管内、東北電力管内といった形で、北海道から九州まで9つのエリアに別れています(沖縄は例外) この地域ごとの取引価格は、地域によって大きく異なります。
上のグラフは、2022年1年間の地域ごとの電力取引価格の月間平均の推移です。例えば中国・四国はほぼ連動して動いていますが、値動きはバラバラですし水準も異なります。
日本では長らく、大手電力のエリアごとに電力ネットワークが運営されてきたため、エリア間の繋がりが必ずしも強くありません。そのため、エリアによっては発電所が不足して電気が足りない状況であっても、また別のエリアでは余裕があるという状況が生じます。
このことが電力取引価格に大きな地域差を生んでいます。
エリア間で必要な時に、必要な電力を100%融通しあえる状況が実現すればエリア間の価格差はゼロに近づき、9エリアすべてがほぼ同じ値動き・価格水準となるはずです。
市場連動型プラン 地域別危険度
市場連動型プランの地域別の危険度を解説します。メリット(料金水準)は試算時点で最安水準の市場連動型プラン(今後値上げが予定されているものは除く)をもとに評価しています。
危険度の一覧
まずは一覧で紹介します。リスクの大きさだけでなく、大手電力従量電灯プランと比較した「メリット」も含めて解説します(2023年6月時点での評価) 数字は1〜5の5段階評価です。危険度は数字が大きくなればリスクが高い、メリットも数字が大きくなればメリット(大手電力従量電灯と比較した料金削減幅)が大きくなります。
エリア | 危険度 | メリット |
---|---|---|
北海道電力エリア | 5 | 5 |
東北電力エリア | 5 | 4 |
東京電力エリア | 5 | 4 |
中部電力エリア | 3 | 3 |
北陸電力エリア | 3 | 5 |
関西電力エリア | 3 | 1 |
中国電力エリア | 3 | 4 |
四国電力エリア | 3 | 4 |
九州電力エリア | 2 | 1 |
危険度が高いエリアでメリットが高い例もあれば、逆に危険度が低いエリアでメリットも少ない(というかほぼ無い)場合もあります。
メリット(料金水準)については当サイトの電気料金一括シミュレーションを確認してください。発表されている最新月の電源調達調整額を反映しています(HTBエナジー、ハルエネでんき、楽天でんき、グランデータ、サステナブルエナジー、小田急でんき、シン・エナジー、エバーグリーン、ジャパン電力、イデックスでんきは独自単価を毎月更新中)
以下、地域ごとに詳しく解説していきます。
北海道・東北・東京電力エリア
この3エリアでは慢性的に電力需給がタイトで、電力取引価格が暴騰しやすかったり、価格水準が高い傾向があります。市場連動型プラン、とりわけ30分単位で料金単価が変動する料金プランの利用は絶対に避けるべきですし、月間平均を数ヶ月遅れで反映する料金プラン(電源調達調整型)を契約する場合は必ず毎月1度は電力取引価格の推移を確認してください。
リスクが大きい反面、2023年6月現在は一部の市場連動型プラン(電源調達調整型)が大手電力従量電灯よりも大幅に割安になっていますが、この状況が今後も長期間続く保証は全くありません。
例えば2023年夏にも東京電力エリアで節電要請が出されていることからも分かる通り、電力需給の逼迫(=電力取引価格の高騰=電気代高騰)は今後も当面の間頻繁することが予想されるため、基本的には市場連動型プランの契約は推奨しません ※東京エリアは規模が大きいため、東京で逼迫が起こると東北・北海道も引っ張られる傾向がある
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中部電力エリア
電力需給に比較的余裕がある西日本エリアにありますが、西日本エリアの中では電力取引価格が「若干」高い傾向があります。とはいえ関西などと大差は無いです。
暴騰するリスクは高くは無いものの、突発的なイベントによる暴騰のリスクは否定できないため30分単位で電力取引価格が変動する市場連動型プランは推奨できません。また月平均を取る市場連動型プラン(電源調達調整型)についても一定のリスクは残るため、毎月必ず電力取引価格のチェックを欠かさないでください。
中部電力従量電灯と比較して、2023年6月現在は一部の市場連動型プランが割安になっています。
北陸・中国・四国電力エリア
市場連動型プランのリスクとリターンのバランスが最も良いエリアです。
電力需給に余裕がある西日本エリアにあり電力取引価格が低く、そして安定して推移しています。暴騰が起こらないと言っているわけではないのでその点は注意してください。
大手電力従量電灯プランと比較して、一部の市場連動型が大幅に割安になっています(2023年6月現在)
30分単位で電力取引価格が変動する市場連動型プランはやはりリスキーですが、月平均で変動する市場連動型プラン(電源調達調整型)は場合によっては悪くない選択肢と言えるでしょう。最低でも月に一度は電力取引価格をチェックできる方のみ、市場連動型プランの契約検討を考えてもよいと思います。電力取引価格の月平均をもとに電気代を計算するタイプの市場連動型プランのみ検討の価値アリです(2023年6月現在であればHTBエナジー、ハルエネでんきなど)
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関西・九州電力エリア
リスクは低いがリターンも少ない(ほぼ無い)エリアです。
電力取引価格は原発や再生可能エネルギーにより低く、そして安定しています。特に九州では他のエリアに融通しても融通しきれないほど電力需給が時間帯によっては緩くなっており、電力取引価格が安くなっています。
一方、大手電力従量電灯の料金水準が他の地域と比較して大幅に低いです。そのため2023年6月現在、最も安い市場連動型プラン(電源調達調整型)で見ても大手電力従量電灯との料金差はほぼ無く、わざわざリスクを取って市場連動型プランを契約するメリットは基本的には無いと結論付けることが出来ます。大手電力の従量電灯をおすすめします。市場連動型でない新電力や大手電力の料金プランは割高になっているため、おすすめしません。
市場連動型プランの料金比較はこちら
一部の新電力の独自単価も毎月更新しています。市場連動型でないプランと料金を比較してみてください(デフォルトでは市場連動型プランを表示しない設定にしています)
繰り返しになりますが、市場連動型プランは電力取引価格によっては電気代が「高額」になる恐れもあり、試算で安いという結果が表示されたとしてもそれは一時的な現象に過ぎない可能性があります。契約する場合は必ず、最低でも月に一度は電力取引価格を確認してください。30分単位で単価が変動するタイプは高騰が発生した際に逃げる時間が無いため基本的に推奨しません。
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