「市場連動型」でも危険性は大きく異る
最近導入する新電力が急増している市場連動型の料金体系。一口に市場連動型といっても、実はその危険性には大きな差があります。タイプごとにリスクを分類して紹介します。
目次
基本的にリスクが大きい市場連動型プラン
まず前提として、市場連動型の電気料金プランはそうでないものと比べて、電気代が割高になるリスクが大きいと言えます。
市場連動型プランのリスクが大きい理由
そもそもの前提として、市場連動型に移行する新電力は料金体系を変更する理由として「電力取引価格の高騰」と説明しています。自社で負担しきれなくなったコストやリスクを顧客に転嫁するために市場連動型プランに移行しているわけで、契約者のリスクやコストが増大するのは当然と言えます。
また、新電力各社は電力取引価格の変動を低減するために電力先物などの手法を使うことが出来ますが、一般の消費者はそのような手段を使うことが出来ません。電力先物などを使える新電力各社ですら手を焼いている電力取引価格の変動に対して、消費者は丸腰で立ち向かわねばならないというわけです。
更に、電力取引価格の「平均的な」水準からの「下げしろ」と「上げしろ」(伸びしろ)を比較すると、メリットよりもリスクの方が大きいことが一目瞭然です。
電力取引価格の月間平均はこれまで、1kWhあたり10円以下、8〜10円とされてきました。一方、過去に取引価格が安かった月は5円程度、高かった月は66円です。平均的な水準を10円とした場合、安かった月は平均からせいぜい5円安であるのに対し、高かった月は平均的な水準から60円以上高騰しています。
市場連動型プランは電力取引価格によっては電気代が安くなる場合もありますが、節約メリットがコツコツと積み上がったとしても、ひとたび電力取引価格の暴騰が発生すれば一瞬にして積み上げた節約メリットを上回るデメリットが生まれます。
市場連動型プランでもリスクの大きさに差がある
一口に市場連動型プランといっても、その仕組みには大きな違いがあります。共通点は「日本卸電力取引所での電力取引価格の変動が何らかのかたちで電気代に転嫁される」点だけで、転嫁の仕方は会社や料金プランによって大きく異なります。
転嫁の仕方が異なれば、電気代への影響も大きく異なります。以下、タイプ別に市場連動型プランのリスクを解説します。
市場連動型プラン危険度マップ
タイプ別に市場連動型プランのリスクを分類します。
【タイプ別】市場連動型プランの危険度
市場連動の仕組み | リスク | 具体的な料金プラン名 |
---|---|---|
30分単位で料金単価が変動 取引価格変動に完全連動 |
5 | Looopでんき、リミックスでんき、アストでんきなど |
30分単位で料金単価が変動 取引価格変動に一定程度連動 |
4 | ソフトバンクでんき(一部地域) |
取引価格の月間平均に連動 | 3 | auでんき(一部プラン)、 楽天でんき、 グランデータ、 ハルエネでんき、 Japan電力、 HTBエナジー、 みんな電力、 アースインフィニティ、 イデックスでんき、 小田急でんき、 ニチガスでんき ほか |
リスクが最も大きいのは、固定の料金単価をもたず電力取引価格を100%反映する市場連動型プランです。30分単位で料金単価が変動します。Looopでんきやリミックスでんきが提供しています。以前からの契約者の方は自動で移行している場合があるので、契約内容をよく確認してください。
次点でリスクが大きいのが、30分単位で料金単価が変動する料金プランで、電力取引価格の変動を100%転嫁しないものです。例えば取引価格の変動を30%転嫁するなど、取引価格の変動を一定割合で電気代に転嫁するものです。ソフトバンクでんきがこのような料金体系への移行を発表しています。
最後に、取引価格の「月間平均」をもとに電気代を計算する料金プランが市場連動型プランの中では低リスクです。電源調達調整費などの名称を採用している場合が多いです。各地域の電力取引価格の月間平均の、更に3ヶ月平均をもとに電気代を計算するものが多いです。取引価格変動を100%反映しないものもあります。電気代の高額請求でSNSが炎上したグランデータもこのタイプに該当するので、このタイプでも電力取引価格の推移によっては電気代が高額になる場合があります。
30分単位で料金単価が変動するプランのリスク
30分単位で料金単価が変動する市場連動型プランは、市場連動型プランの中でもリスクやデメリットが大きいと言えます。
電力取引価格は電力の需要と供給によって変動します。なので、傾向として「みんなが電気を使う時間帯」に取引価格が高くなる傾向があります。一日の中でも取引価格は大きく変動しますが、帰宅してエアコンや炊事で電気を使う17〜20時が一日の中で最も高い傾向があります。
一般的な生活リズムで生活をしている方にとっては、電気を多く使う時間帯に料金単価が高くなることがデメリットと言えます。
蓄電池を設置している場合、安い時間帯に充電して高い時間帯は蓄電池に貯めた電気を使うことが出来ますが、そもそも蓄電池の設置費用が高額なので現在の蓄電池の価格水準では元を取るのは極めて困難です。将来的に、蓄電池の価格が「ストレージパリティ」と呼ばれる水準を下回ると、初めて市場連動型と蓄電池の組み合わせが効果を発揮します。
解約違約金が発生するものは更に注意
市場連動型プランで、解約違約金や解約事務手数料が発生するものは更に注意が必要です。
上で紹介した新電力の多くは解約違約金や解約事務手数料が無く、短期間で解約しても費用は発生しません。ですが市場連動型プランを採用している新電力の中には、「解約月」以外の解約で1万円近い解約金を取るところもあります。
電力取引価格の高騰が発生したタイミングで他社に切り替えようとしても、このような解約金があることで更に損失が膨らみますし、解約を躊躇う原因となり結果として損失が膨らむ恐れがあります。
解約違約金がある市場連動型プランは絶対に契約してはいけません。
市場連動型プランも安く使える局面はある
最後に、市場連動型プランのメリットを解説します。
私は2020年7〜10月に完全市場連動型(30分単位で単価が変動、取引価格を100%反映)の自然電力(サービス終了済み)を自宅で利用しました。結果として、市場連動型でない「最安」のプランと比較して、更に月1000円前後安く使うことができました。
社名・プラン名 | 電気代(賦課金除く) 60A契約/388kWh 2020年7月 |
---|---|
東京電力EP 従量電灯B |
10452円 |
ピタでん 使った分だけ ※固定単価のプランで当時最安 |
8870円 |
自然電力 SE30(市場連動型) |
7802円 |
この時は新型コロナの感染拡大が世界中で進み、資源価格が安く、加えて国内の経済活動も停滞し電力需要が落ち込んだことで電力取引価格が安く推移していたタイミングです。
電力取引価格が低く推移することで市場連動型プランの電気代も下がります。ですがこれまで解説してきたように、ひとたび高騰が起これば積み上げてきたメリットは一瞬で崩れてしまいます。
市場連動型プランの活用方法として、月間平均の3ヶ月平均を取る新電力では、例えば1〜3月分の取引価格を6月の電気代に転嫁します。タイムラグがあるので電力取引価格の推移を見て、安いときに契約して高くなったら他社に切り替えるという使い方がおすすめです。解約違約金等が無いことを必ず確認してください。
地域によってもリスク・メリットに差が
市場連動型プランのリスク・メリットの大きさとバランスは、地域によっても大きく異なります。地域差については以下の記事で詳しく解説しているのでこちらをご確認ください。
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