市場連動型プランにはルールが必要 今すぐ規制強化を。

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市場連動型プランは無法地帯と化している


 電力取引価格の高騰を受けて導入する新電力会社が昨今急増している市場連動型プラン。ルール整備が追いついておらず、無法地帯と化しています。ルール整備の必要性を解説します。



急増する市場連動型プラン


 まずは市場連動型プランの現状を解説します。


導入が急拡大する市場連動型プラン


電源調達調整費の加算イメージ

電源調達調整費の加算イメージ

 昨今、市場連動型プランを提供、あるいはこれまで市場連動型でなかった料金メニューを市場連動型に移行させる新電力が急増しています。


 市場連動型に移行する際の説明として、各社は「電力取引市場における電力取引価格の高騰による調達コストの増大」と説明している例が多いです。


 新電力各社は自社で発電所を保有しておらず、卸電力取引所や発電所を保有している企業と契約を結んで電力を調達しています。ですが昨今、エネルギー価格の高騰や電力需給の逼迫により調達コストが高止まりしており、新電力の経営を圧迫しています。


 その高騰しているコストを自社で抱えきれなくなったため、市場連動型に移行しコストやリスクを顧客に転嫁する新電力が増えているというわけです。


消費者被害が拡大する恐れがある


 新電力各社が「電力取引市場における電力取引価格の高騰による調達コストの増大」ことを市場連動型に移行する理由として説明していることからも自明のとおり、市場連動型プランに移行することで消費者が支払う電気代が増大する恐れがあります。


電力取引価格の価格水準のイメージ

電力取引価格の価格水準のイメージ

 市場連動型プランは電力取引価格の推移によっては電気代が「高額」になる恐れがあります。実際、2022年に市場連動型に移行したある新電力の場合、2022年度中は時期によっては電気代が大手電力従量電灯プランの1.8倍に高騰していました。契約者たちから批判の声が上がり、その声がインフルエンサーにも届いたことでSNSが大炎上する事態となりました。市場連動型プランの料金高騰は2021年1月にも発生しており、この時も大問題となりました。


 料金体系と電力取引価格によって大手電力従量電灯の2倍以上の電気代が発生する場合もあり、市場連動型プランを提供する新電力が増えることで消費者被害が急拡大していくことが懸念されます。


今必要なのは「ルール」


 市場連動型プランをめぐっては、ルール整備が十分ではないと指摘できます。


現在のルールでは明らかに不十分


 電力会社の行動指針として経済産業省が「電力の小売営業に関する指針」(通称:小売営業ガイドライン)を定めています。


 小売営業ガイドラインにも、市場連動型プランについて以下の定めがあります。


小売電気事業者等が、市場連動型料金メニューを内容とする小売供給契約の締結等 をしようとするときは、需要家に対し、当該小売供給に係る料金が高騰を含め大きく 変動する可能性があることを、市場価格が大きく変動した過去の事例を用いる等して、 わかりやすく説明することが望ましい。

引用元:電力の小売営業に関する指針(経済産業省)

 分かりやすく要約すると、



 ということです。


 「高騰するリスク」については多くの新電力が一応は説明しているものの、過去の高騰時の取引価格を元にした電気代の具体例を示しているところはほぼありません。私の記憶では東京電力エナジーパートナーの法人向けの高圧電力の値上げのリリースで見たくらいで、新電力の家庭向けプランでそのような説明を適切に行っている例を見た記憶がありません。


電力取引価格

電力取引価格

必要なルールの具体例


 今後必要なルールを提案します。


具体例を示した高騰リスクの説明


 既にガイドラインで定められている過去の高騰事例をもとにした例示を確実に、分かりやすく行わせるようルールが必要です。


 例えば電力取引価格が過去最高に暴騰した2021年1月や、エネルギー価格高騰を受けて高騰が続いた2022年下半期の電力取引価格をもとに電気代を計算し、平時とくらべていくら割高になるのか、あるいは大手電力従量電灯プラン(政府の認可が必要な料金プラン)と比較していくら割高になるのか、を明示することを義務付けるべきです。



 「電力取引価格によっては電気代が高騰する恐れもあります」と説明されただけでは、電力にくわしくない多くの消費者は、実際にどのようなリスクがあるのか想像することは困難です。具体例を示した説明は必要です。


 「望ましい」とした現状のルールでは明らかに不十分で、義務付けるべきです。


「安い」という勧誘の禁止


 市場連動型プランは電力取引価格によっては電気代が割安に推移することもあります。


 私は2020年に自宅で3ヶ月、市場連動型プランを利用しました。この時は新型コロナの世界的な感染拡大によりエネルギー価格が安く、また国内の電力需要も落ち着いていたことで電力取引価格が低く推移していました。


 結果として、市場連動型でない料金プランの中で当サイトで掲載している数百社中「最安」の料金プランと比べても、市場連動型プランは更に1ヶ月で約2千円割安でした。


 また、2023年5月は春先の低い電力取引価格の影響を受けて、一部の市場連動型プランがそうでない料金プランよりも割安になる現象が起きています。当サイトの電気料金シミュレーションでも、いくつかの市場連動型プランがいくつかの条件で「最安」となっています。


 ですが市場連動型プランは電力取引価格の高騰がひとたび生じれば、電気代が大幅に高騰するリスクがあるものです。電力取引価格は株価や為替相場と同じように、将来を予想することは出来ません。したがって、市場連動型プランについて「市場連動型でない他社プランより安い」と説明を行うことは「株価が上がります」と説明して何かしらの銘柄を推奨するようなものです。


 株式であれば絶対値上がりする銘柄など無いということは多くの個人投資家が理解出来ていることだと思いますし、そもそも絶対値上がりするという勧誘を行うことは法令によって禁止されています。ですが電力の場合、「他社より安い」と言われれば多くの消費者はそれを信じてしまう現状があります。なので市場連動型プランについて「安い」と勧誘することを禁止するべきです。


途中移行する場合の文章による説明・同意必須


 これまで市場連動型でなかった料金プランが、市場連動型プランに移行する例が相次いでいます。中小の新電力だけでなく、誰もが知る大手企業でも市場連動型に移行する動きが加速しています。


 市場連動型に移行するにあたって、メールによる送信だけでなく文章による説明と、契約者の同意を義務付けるべきです。


 2022年に市場連動型に移行し、電気代が高騰したある新電力では、市場連動型に移行していることを「知らなかった」という契約者が目立ちます。メールなどで届いた通知を見落とした恐れがあります。


 このようなトラブルを未然に防ぐため、文章による通知と同意の締結を義務付けるべきです。同意が得られなかった契約者に対しては市場連動型への移行を適用できないとするべきです。新電力側にも事情があるので、同意を得られなかった契約者に対して新電力側から解約通知を行うことはこれまで通り認められるべきです。


 市場連動型への移行に限らず、料金単価の引き上げでも「知らずに」値上げが適用されている契約者があとをたちません。重要な約款の改定には契約者への確実な説明と、同意の締結を義務付けるべきです。




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