「納付金を納付しない電気事業者」は何を意味するのか
経産省が時たま公表する「再生可能エネルギー特別措置法に基づき、納付金を納付しない電気事業者を公表します」というプレスリリースは何を意味するのか、一般消費者に向けて分かりやすく解説します。
目次
実際の通知を見てみよう
まずは実際に経産省がプレスリリースとして過去に出した通知を紹介します。
こちらは2020年3月に経産省が公式サイト上で公表したリリースです。「あくび電気」を展開していたあくびコミュニケーションズと、AG Energyが納付金を期限内に納付しなかった旨が記載されています。
これは何を意味するのか
この公表事実が何を意味するのか、分かりやすく解説します。
支払われるべき費用が支払われていない
この「公表」は、支払われるべき費用が期限までに支払われなかったことを意味します。
日本では電力会社から電気を購入すると、1kWhあたり3.36円(2021年度)の再エネ賦課金(再生可能エネルギー発電促進賦課金)を支払う必要があります。これは電気を使う人や企業などが負担するもので、電気料金と一緒に電力会社に支払います。
電力会社は受け取った再エネ賦課金を、「費用負担調整機関」に納付します。この納付を期限までに行うことが出来なかった電力会社が、経産省から上記のリリースのような形で「公表」されることがあります。
そもそも再エネ賦課金とは何か
再エネ賦課金は、再生可能エネルギーの導入を促進するための「固定価格買取制度」を支えている費用です。
固定価格買取制度では、予め決まった金額で決まった期間、市場価格よりも高い金額で再生可能エネルギーによって生み出された電力を買取る仕組みです。市場価格と、発電所の所有者が受け取る売電収入の差額を埋めるために使われているのが、国民全体で負担している再エネ賦課金です。
費用を負担するのは電気を使う人や企業ですが、納付する義務は電力会社側にあります。消費税と同じようなイメージです。
再エネ賦課金については以下の記事で詳しく解説しているので気になる方はあわせてご覧ください。なお、大手電力・新電力問わずどの電力会社と契約しても再エネ賦課金の額は同じです。
「未納」が発生する理由は?
再エネ賦課金を期限内に納付できない理由としては、資金繰りの悪化が主な理由として指摘できます。実際、過去に納付が出来なかったとして社名を公表された電力会社はその後、倒産に至ったものが少なくありません。
納付すべきものが納付されない事実を公表されることは、その電力会社の「評判」を落とすことに直結します。顧客離れにもつながるでしょう。電力会社側としてはどうしても避けなくてはならない事態といえますが、それを避けることが出来ないほど、資金繰りが悪化している場合が少なくありません。
過去には未納を公表された後、支払いを行うことができた新電力もありますが期間を置いて「未納」を再発してしまった新電力もあります。
契約者は何をすべき?対処方法は
自分が契約している電力会社が、「未納」を公表された場合どうすべきか。
結論としては、何かする必要は無いと言えます。既に電気料金と一緒に支払い済みの再エネ賦課金を追加で支払う必要もありません。
倒産のリスクは高いものの、仮に電力会社が倒産に至ったとしても停電することはありません。倒産した場合、郵送などで通知が行われるので一定期間内に他社に切り替え手続きをすれば電気の使用を継続できます。倒産しそうな会社を利用し続けるのが不安な場合は、他社に切り替えてもよいでしょう。
未納を公表された前後の時期に料金の誤請求や過大請求を起こした会社も過去にあります。資金繰りが悪化している電力会社は十分な人員を確保することができず、業務が「崩壊」することでそのような事態が起こるようです。
自分が利用した分の料金を継続して支払う必要があることは言うまでもないことですが、請求額あるいは引き落とされた金額が正しいのかよく確認することをおすすめします。
未納を公表された電力会社の一覧
過去に再エネ賦課金の納付が期限内に行われなかったとして、社名を公表された電力会社を一覧で紹介します。
社名 | 公表時期 |
---|---|
日本ロジテック協同組合 | 2015年5月 2016年3月 |
エックスパワー | 2017年1月 |
福島電力 | 2018年8月 |
エレトス合同会社 | 2019年7月 |
京都新電力 | 2020年1月 |
あくびコミュニケーションズ | 2020年3月 |
AG Energy | 2020年3月 |
熊本電力 | 2021年4月 |
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