「もっと安い」電力会社はもう現れない
今の最安水準の新電力よりも更に安い料金プランは、今後現れない可能性が大きいと言えます。そう言える理由を分かりやすく解説します。
目次
「もっと安い」新電力はもう登場しないと言える理由
今の「最安水準」より更に安い電力会社はもう登場しない可能性が大きいと言えます。そう言える理由は以下のとおりです。
自由化から5年、役者は出揃った
2016年の電力完全小売自由化から既に5年が経過しています。主要なプレイヤーはもうとっくに出揃っていると言える状況にあります。2021年秋にドコモが電力販売を開始することを発表しましたが、このような有力プレイヤーの登場は今後はあまり期待できません。
2021年現在も新たに経産省に登録を行い事業を開始する新電力が無いわけではありませんが、契約更新の度に契約先を切り替えることも珍しくない法人契約とは異なり、家庭向けは既に契約先もある程度固まりつつあるという状況にあり、新規参入して契約を獲得できる余地も狭まりつつあります。
新電力の事業環境が悪化している
見逃せない要因が、新電力の事業環境の悪化です。主に以下の2点が大きいです。
- 電力不足の頻発による調達コストの上昇
- 容量市場の導入によるコスト増加
2021年1月に電力不足により約1ヶ月にわたり電力の取引価格が異常な高騰を見せました。少なくない新電力が経営に深刻な打撃を受け、破綻あるいは他社に身売りしたところも少なくありません。
日本では夏冬の需要が増える時期の「電力不足」が恒常化する懸念が高まっています。現に2021年夏にも電力不足の懸念を経産省が21年5月時点で指摘していましたし、21年冬シーズンについても特に関東で深刻な電力不足懸念が指摘されています。
それに加え、2024年度からは容量市場という新たな制度が始まります。
容量市場とは、「発電能力」に皆でお金を払うことで電力不足を回避しようという目的で導入された制度です。主に新電力や電力会社(小売)が費用を負担して、発電所にそのお金が分配されます。
容量市場での初の入札が2020年9月に実施され、多くの業界関係者が驚くような価格に決まりました。結果として発電所を持たない新電力各社には新たに大きな負担が発生することとなり、日経エネルギーの調査では75%の新電力が「事業継続が危ぶまれる」とアンケートに答えています。
これまで新電力各社が負担してきたコストは、電力不足に備えるようなコストを織り込んでいなかったとも言えますが、今後はそのようなコストがのしかかってくるため以前のような「安売り」をしづらくなると言えます。
安くしても顧客を獲得できない
電力自由化でシェア上位(家庭向け)の会社の多くが、実はそれほどアグレッシブな価格設定を行っていません。安さで勝負せず、お客さんと対面で営業できるチャネルを活用して、多くの顧客を獲得しています。
電気料金比較サイトでは料金が安くなければ契約獲得は期待できませんが、切り替え全体に占める電気料金比較サイトのシェアはわずか3%程度と、微々たるものです。
売上、利益を伸ばすには「料金の安さ」を追究する必要はなく、有力な代理店を獲得するなど販路にお金を掛けた方が明らかに有利と言えます。新電力にとって、料金を下げていくことにメリットが無いため、これ以上の値下がりは期待できません。
「序列」が若干入れ替わる可能性はある
大手電力各社は、標準メニュー(従量電灯)の料金単価をわずかに変更することがあります。近年は消費税率や託送料金の変更に伴う料金改定がありました。
その際に、新電力各社が追随して料金改定を行うことが多いです。料金の改定幅は会社によって異なる場合があります。改定幅以上に料金単価を変更するケースもあり、その際に新電力間の料金水準の序列が入れ替わるケースがあります。
今後は値上げが相次ぐ可能性も
記事前半でも紹介したように、新電力各社をとりまく環境は厳しいものです。今後は値下げではなく、値上げが相次ぐ可能性の方が明らかに大きいと言えます。
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