全国展開している新電力
電力自由化では200社近い新電力が参入し、家庭に電気を供給しています。しかし、その中でも北海道から沖縄まで「全国展開」している新電力はごくわずかしかありません。その背景にある事情を解説します。
目次
意外と少ない全国展開の新電力
まずは全国展開している新電力を紹介します。
家庭向けで全国対応は1社のみ
家庭向けに電気を供給している新電力は、私が確認している限りで161社あります。しかし、その中でも北海道から沖縄まで「全国展開」しているのは楽天でんきの1社のみです。
楽天でんきは2018年11月から供給を開始したため、電力完全自由化から2年半にわたり「全国展開」の新電力は存在していませんでした。
なお、法人向けには光通信系のハルエネなどが全国展開しています。
ただし離島は除く
全国展開している楽天でんきですが、例外もあります。
それは「離島」です。
楽天でんきを含め、ほぼ全ての新電力は離島(本土から送電線の接続が無い離島)には対応していません。供給エリアとして「離島を除く」という注釈が付いています。
その意味では、真に「全国展開」と言える新電力は存在していないとも言えます。
各地域への新電力の参入状況
地域によって参入している新電力の数に大きな差があります。
地域別の選べるプランの数の比較
まずは各地域で選べる電気料金プランの数を紹介します。 当サイトで2018年11月4日現在掲載している161社、619プランを集計しました(家庭向けのみ)
地域 | プラン数 |
---|---|
北海道電力エリア | 50 |
東北電力エリア | 51 |
東京電力エリア | 159 |
中部電力エリア | 68 |
北陸電力エリア | 29 |
関西電力エリア | 89 |
中国電力エリア | 49 |
四国電力エリア | 38 |
九州電力エリア | 78 |
沖縄電力エリア | 4 |
1社で複数プラン提供している場合もあるため、必ずしも参入している新電力の数を表すものではありません。
最も多い東京電力エリアと、最も少ない沖縄電力エリアでは選べる電気料金プランの数に圧倒的な差があることが分かります。
地域によって大きな差がある理由
参入する新電力の地域差が大きい要因として、主に以下の理由が指摘されています。
電源の調達が難しい地域がある
まず、電源の調達という問題です。
新電力は電気を供給する際に、自ら発電するか、発電所を持つ企業や卸電力取引所から調達するなどして電気を用意する必要があります。しかし、地域によっては電源の調達が難しい場合もあります。
特に沖縄や全国の離島では電源調達のハードルが高く、新規参入の障壁となっています。
逆に、地域の規模のわりに参入企業が多い九州エリアは、太陽光発電の関連会社が新電力として参入している例が目立ちます。九州は太陽光発電の導入がさかんな地域として知られており、新電力が太陽光発電を活用しています。
参入企業の営業網という問題
新電力として参入している企業は、ガス会社や鉄道会社などの親会社がバックに付いていることが多いです。電気の契約を獲得する際にも、親会社が持つ既存の顧客基盤を活用することが多いです。
新電力のシェアを見ると、既存の顧客基盤を活用して電気の契約を獲得している会社が上位をほぼ独占しています。
携帯電話会社などを除けば、全国あまねく営業網を持っている企業は限られます。顧客基盤が無ければ参入しても契約獲得が難しいため、全国展開するメリットがある新電力は自ずと限られてしまいます。
地域によって切り替え率に差がある
更に、地域によって新電力への切り替えの進捗も大きく異なります。
2018年2月末時点のデータで、東京電力管内では13.3%の家庭が新電力に切り替えているのに対し、中国地方では2.7%、沖縄ではほぼゼロという状況です(全国では9.5%)
切り替え率の地域差については「参入企業の多寡」が要因の一つとして指摘されているため、「ニワトリが先か卵が先か」という話になってしまいますが、電力自由化への注目度が低い地域に参入しても営業活動のハードルが高い点は無視できないでしょう。
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