セキュリティソフトで仮想通貨マイニングが可能に
日本でもユーザーが多い(私も愛用している)ノートンに、仮想通貨イーサリアムをマイニングする機能が追加されます。この機能のメリット・デメリットを、主に電気代の観点から詳しく解説します。
目次
セキュリティソフトにマイニング機能が追加される
まずはノートンに追加される予定のマイニング機能を解説します。
誰でも簡単にマイニングできるNorton Crypto
2021年6月にノートンの新機能として発表されたNorton Cryptoという機能を使うことで、ノートンのセキュリティソフトをインストールしたPCでイーサリアムのマイニングを行うことが出来ます。
機能を一度有効にしておけば、あとはパソコンがアイドル状態(何もせず電源をつけたまま放置した状態)になるとノートンがパソコンのリソースを活用して自動でマイニングを行います。
通常、仮想通貨のマイニングは私も過去に挑戦した経験がありますが専用のソフトをインストールする必要があり、その際にセキュリティソフトをオフにするなど様々な面倒で難しい設定を行う必要があります。Norton Cryptoでは、そのような面倒な設定などが必要無く、しかも一度設定すれば簡単にマイニングが出来る点がメリットと言えるでしょう。
マイニングによって得られた仮想通貨は、ノートンが運営する専用のクラウドウォレットに移動して保管することが出来ます。今後、イーサリアム以外の仮想通貨にも拡大を計画していると同社プレスリリースで明らかにされています。
なお、2021年6月中旬現在、本機能はまだ日本のユーザー向けには正式に提供されていないようです(私もまだ試すことが出来ていない) 6月始めのプレスリリースでは数週間以内に全世界のユーザーに適用すると公表されています。
一般的なPCでは電気代で「損」になるリスクが高い
パソコンが資産を自動で生み出してくれる夢のような新機能と言えますが、一方で注意すべき点もあります。
得られる仮想通貨と電気代の「収支」は
仮想通貨のマイニングは、パソコンの処理能力を多く消費するため通常のアイドル状態と比べて消費電力を増やします。得られる仮想通貨と、発生する電気代を天秤に掛ける必要があると言えます。
丸一日稼働 | マイニング収入 | 電気代 | 収支 |
---|---|---|---|
AMD Ryzen 5 3600 | 55.12円 | 41.67円 | 13.45円黒字 |
Intel Core i3-10300 | 12.40円 | 41.67円 | 29.27円赤字 |
Intel Core i5-8500 | 21.98円 | 41.67円 | 19.69円赤字 |
nicehash.comから引用した、各CPUに丸一日マイニングをさせた時に得られる収入と、電気代(1kWhあたり27円)の一覧です。家庭向けに普及しているCPUを抜粋しました(いずれも2021年6月12日時点の取引価格等に基づく試算)
Ryzen 5 3600でのマイニングは電気代を差し引いても「黒字」となりますが、家庭用PCでよく使われている平均的なCore iシリーズの2種類では電気代で「赤字」となる試算です。
したがって、一般家庭の一般的なPCでマイニングをした場合、電気代で「赤字」となる可能性が大きいと言えます。ウォレットにはどんどん仮想通貨が貯まっていくため一見すると儲かっているように見えますが、実は電気代が高くなって損しているという恐ろしい事態が発生します。
収支を黒字に出来る条件とは
一般家庭のマイニングでも、黒字になるケースがあるのは上で示したとおりです。では黒字になりやすい条件とはどのようなものか、以下で具体的に示します。
グラフィックボード搭載のPCでマイニングする
仮想通貨のマイニングは、GPUで行うと効率が良いとされています。一般家庭の一般的なPCでは、GPUはCPUに内蔵されており、性能があまり高くないためマイニングを行うと「非効率」となります。
上表で唯一収支が「黒字」となったRyzen 5 3600は、CPU内蔵のGPUとしては比較的高性能であるため、マイニングに適していると言えます。
より本格的にマイニングを行うのであれば、ゲーミングPCが搭載しているような高性能なグラフィックボードを搭載したPCで行うと効率的です。例えばゲーミングPCでよく使われるAMD RX 6700 XT 12GBでは、1日あたり211.27円(27円/kWh)の収益が出ると試算されており、Ryzen 5 3600と比較して桁違いに効率的です。
マイニングを行うのであれば、一般的なPCではなく「ゲーミングPC」として販売されているものを選ぶことをおすすめします。
画面は必ずオフに
マイニング中にモニターを確認する必要は無いといえます。そもそもNorton CryptoはPCがアイドル状態の時にマイニングを行うため、ユーザーが離席している場合が多いでしょう。
パソコン用の液晶モニターでは、私が過去に実機で計測した際には24.1インチのモニターで24時間あたり約5.2円(27円/kWh)の電気代が発生しました。マイニングによって得られる収益と比較して小さくないものです。
Windowsの場合、電源オプションの設定で画面を自動にオフにする設定が可能(オフになるまでの所要時間の変更も可能)なので、そのような設定を活用することで手間なく効率的にマイニングを実行できます。
電気代が安い電力会社に切り替える
電力自由化によって参入した新電力会社は、大手電力と比べて割安な料金プランを提供しています。一般家庭の一般的な使用量の場合、10%程度安くなるプランも少なくなく、そのような割安な電力を使用することで採算性を高めることが可能です。
オール電化住宅の場合は、割安な深夜時間帯を活用することで割安な料金単価でのマイニングが可能です。
なお、上表で挙げた一般家庭で使われている一般的なPCのCPUでは、日本国内で最も割安とされている電気料金プランを使用しても収支は黒字にはならないです。最も重要なのはマイニングを行うPCであり、電力会社の変更は収益性を高める補助策と言えます。
卒FIT太陽光との組み合わせも
固定価格買取制度での買取期間が終了した太陽光発電を卒FIT太陽光と言います。
卒FIT太陽光の余剰電力の買電価格は、10円/kWh以下が一般的です。この10円という水準は、家庭向けの平均的な電気料金の水準27円よりも遥かに安いと言えます。
余剰電力が発生しそうな晴天時の昼間にパソコンをつけっぱなしにしておけば、安い電力を使ってマイニングをすることが可能となり、収益性が格段に高まります。
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