原油が暴落しても石油火力発電を増やせない理由

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原油暴落なら油を燃やせばいい?


 コロナショックによる需要の落ち込みや、産油国の増産により「暴落」したと伝えられる原油価格。それなら油を燃やして発電すればいい、という声も少なくありませんが、日本には石油火力発電を増やせない事情があります。



なぜ石油火力発電を増やせないのか


 日本が石油火力発電を増やせない理由を解説します。


石油火力発電所の新設が禁止されている日本


石油


 まず前提として、日本のエネルギー政策において石油火力発電所の新設が原則として禁止されている事実があります。


 日本では1970年には石油火力発電が電源構成の59.0%を占めた時代もありましたが、その後訪れたオイルショックを契機に「脱石油」を国策として推進してきました。代替エネルギーとして原子力や太陽光、天然ガスの利用が進められています。


 現在、石油火力発電は日本の電源構成の9%(2016年)と、大きくシェアを落としています。また、現在稼働している発電所についても6割が1970年代以前に建設されたものとされており、老朽化が深刻化しています。


WTIマイナス価格でも日本の輸入価格は・・


 史上初の「マイナス価格」をつけたのはWTI原油先物という取引です。しかし、この取引価格は必ずしも日本の原油の輸入価格に反映されるものではありません。


 WTI原油は国際的な指標の一つとして扱われていますが、日本を含むアジアの国々ではドバイ原油などの指標が重視されます。ドバイ原油の取引価格は1月頭の高値から4月末時点で半額程度にまで下落しているものの、マイナス価格にはなっていません。


今後も原油安が定着するかが不透明


 日本がマイナス価格で油を燃やし放題になるわけではないものの、輸入価格が下がるのは間違いありません。ですがもう一つ問題があります。石油火力発電は発電コストが極めて高いという問題です。


 石油火力発電の発電コスト30.6〜43.4円/kWhに対し、昨今急増しているLNG火力は13.7円/kWh(2014年モデル)とされています。石油火力の高コストの要因の一つは燃料代で、1kWhあたり21.7円(2014年モデル)とされています。


経産省資料より

出典:経産省資料

 ですが仮にこの燃料代が半額、いや3分の1に下落したとしても、石油火力発電の発電コストは16.1〜28.9円と、LNG火力と比較してなお割高な水準であり競争力がありません。


 また、今後も将来にわたって現在の取引価格が維持され、安いコストで燃料を輸入し続けられる保証もありません。例えばアメリカでは既にシェールオイルの関連会社の破綻が相次いでおり供給力が低下していく可能性がありますし、また国家財政を原油輸出に頼る産油国が財政破綻して政情不安が生じ、原油価格が跳ね上がるリスクもあります。


CO2排出量がLNG火力と比較して多い


 石油火力発電はLNG火力と比較してCO2排出量が多いとされています。


 電力中央研究所(2009)の推計によると、LNG火力発電のCO2排出量が1kWhあたり375gであるのに対し、石油火力発電は695gと1.9倍もの差があります。


 石炭火力発電の863gと比較すれば石油火力発電は「エコ」ですが、LNG火力と比較すると環境負荷が大きいため、石油火力発電を増やすことには世論から批難が巻き起こる可能性があります。


発電方法 CO2排出量
石油火力発電 695g-co2/kWh
LNG火力発電 375g-co2/kWh
石炭火力発電 863g-co2/kWh



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