的外れな報道が目立つオリックス電力の「身売り」問題
2017年8月に発表された、オリックス電力の関西電力への「身売り」に関する一連の報道は、事実とは異なる的外れな内容のものが目立ちます。正しい知識をひろめるために、何が「間違っている」のかを指摘したいと思います。
目次
マスコミの報道を見てみよう
まずは実際の報道を見てみましょう。
オリックス子会社でマンション向けの電力販売を手がけるオリックス電力(東京・港)を関西電力が買収することになった。大手電力による新興勢力の買収は初とみられる。2016年春に小売りの全面自由化が始まった電力市場だが、顧客が電力会社を切り替える動きは鈍い。大手の独占構造を崩す新興勢力が育たない誤算が生じている。
オリックス電力はマンションの入居者が個別に大手電力と契約するよりも安くなることを売りに、首都圏を中心に約8万件の顧客を抱える。収益自体は「黒字を出していた」(関係者)が、自由化で価格競争が激化。将来の事業拡大が描けなくなった。売却先の選定で入札額が175億円と最も高かった関電への売却を9月上旬にも正式に決める方針だ。引用元:オリックス系、関電に身売り 自由化誤算、新電力伸びず 価格の違い打ち出しにくく(日本経済新聞 2017年8月26日)
要約すると、
・自由化したけど新電力が苦戦している
・そのせいでオリックス電力が身売りされた
といったことが書かれています。
何が間違っているのか
では、この記事の何が「間違っている」のか指摘します。
オリックス電力は一括受電の会社 新電力ではない
オリックス電力は一般家庭向けに電力供給を行っているいわゆる「新電力」ではなく、大型マンションなど建物単位で電力供給を引き受ける「一括受電」のサービスを提供している会社です。
一括受電でも結局はマンションに住んでいる一般家庭にも電気を供給するわけですが、世帯ごとにオリックス電力と契約することはできません。その点で東京ガスやLooopでんきのような「新電力」とは事業内容が異なります(オリックス電力は経産省登録の「登録小売電気事業者」ではありません)
家庭での電力供給が自由化されて1年半、全国で電力の契約を切り替えた世帯数は5%程度と、「伸び悩んでいる」のは事実ですが、そもそもその「5%」にオリックス電力を始めとする一括受電業者への切り替えは含まれていません。
オリックスの行き詰まりは「自由化」の『成果』
ではなぜ、オリックス電力は身売りされたのか。
それは家庭向けの電力自由化の「成果」と言えます。
「マンション高圧一括受電のメリットとデメリット」に詳しく書いていますが、2016年4月に家庭の電力が自由化されて以来、一括受電を新たに導入するメリットはほぼ無くなっています。
そのため、マンション一括受電の新規契約獲得は特に既築物件で苦戦を強いられているという状況があります(まだ統計などの数字には出てきていませんが)
こうした事業環境があるため、今回オリックス電力は関西電力への身売りという結論に至った、と考えるのが妥当です。
新電力への切り替えは低調であるものの、一括受電という業態の将来性が電力自由化により失われたというわけです(新築物件への導入は依然として順調ですが) これは電力自由化の成果と言うべきではないでしょうか。
本体の新電力事業は継続
ちなみに、別の報道では触れられていますが、オリックス本体での新電力事業(主に企業を対象としたもの)はこのまま継続されるとのことです。
なおオリックスグループは、マンション向けの電力一括購入サービス以外の、電力小売り事業など電力関連事業については、引き続き重点分野として事業・新規投資を継続していくとしている。
引用元:関西電力、オリックス電力のマンション高圧一括受電サービス事業を買収(環境ビジネスオンライン)
一括受電分野の将来性は限られるものの、新電力事業は将来性があるとの経営判断があったのではないでしょうか。オリックス自身も、一括受電事業と新電力事業を分けて考えていることが伺えます。
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