真夏や真冬より怖い「季節外れ」の天候がもたらす電力不足
電力不足は真夏の最も暑い時期や、真冬の最も寒い時期に起こるというイメージを持っている方が多いと思います。ですが真夏や真冬ではない時期の「季節外れ」の天候によって生じる電力不足が実は深刻です。季節外れの天候がもたらす電力不足を分かりやすく解説します。
実は怖い「季節外れ」の天候がもたらす電力不足
季節外れの天候がもたらす電力不足のリスクを解説します。
電力需要のピークは真夏・真冬
電力需要のピークは、エアコンが最もよく使われる真夏の最も暑い時期と、真冬の最も寒い時期に訪れます。単にエアコンを使う人や時間が増えるだけでなく、例えば室温を同じ28度に設定する場合に外気温が30度のときは「-2度」分のエネルギーで済みますが、外気温が35度の時は「-8度」分のエネルギーを消費するため、エネルギーの消費量が増大します。
気温が1度増減するごとに電力需要がどれだけ増加するかを表す「気温感応度」という指標があります。東京電力管内で夏季に気温が1度上昇すると14-15時の電力需要が150万kW増加するとされています。大型の原子力発電1.5基分の需要が増加することになります。東京電力管内の夏季電力需要はMAXで6000万kW程度なので、150万kWの需要増による影響は小さくないことが分かると思います。
発電所は休み無く稼動できるわけではない
発電所は複雑な機械や配管の集合体です。また燃料を燃やしたり、高温の蒸気を膨大に使用するため安全に稼動するために定期的な点検が必要です。
通常、このような定期点検は電力需要のピーク期を外して実施されます。例えば東京電力管内で最も1日あたりの電力需要が大きい7月は5525万kWの需要があった一方で、最も需要が少なかった4月は3393万kWと39%もの差があります(いずれも2023年度実績) 需要が少ない時期に順番に発電所を停止させても、通常は電力需給に影響はありません。
電力需要が高まる期間、具体的には夏の7〜9月と冬の12〜2月を除く期間は発電所が順次点検で停止しています。
季節外れの天候が電力危機をもたらす
ですが近年、暑さ・寒さが季節外れの時期に訪れることがあります。
時期 | 事象 |
---|---|
2025年6月 | 東京都心で観測史上最も速い真夏日に? |
2024年10月19日 | 東京都心で観測史上最も遅い真夏日を記録(30.1度) |
2022年3月23日 | 東京都心で最低気温0.5度を記録(最高9.9度) |
直近の異常天候としては上記の例があります。
2024年10月19日に関しては電力需要が少ない土曜日と重なったこと、また季節外れの真夏日とはいえ最高気温は30.1度に留まったため、東京電力管内の電力使用率は最大90%と安定した水準でした。
しかし2022年3月のケースでは、直前に福島県沖で最大震度6強の地震が発生し、福島や茨城の火力発電所が損傷を受け停止していたところに真冬並みの寒波が訪れたことで、電力需給が逼迫。政府からも緊急の要請(需給ひっ迫警報)が出される事態となりました。点検で停止していた発電所も緊急で稼働させるなど、かなり事態がひっ迫した状況でした。
緊急再稼働した 発電所 |
千葉火力2号 | 品川火力1号 | 富津火力2号 |
---|---|---|---|
出力 | 36万kW | 38万kW | 97.2万kW |
点検作業予定時期 | 3/18〜21 | 3/19〜21 | 3/20〜4/10 |
2022年3月は地震というイレギュラーがあったにせよ、季節外れの寒波が大規模停電の一歩手前とも言える緊迫した事態を生み出しました(夕方のTBS「Nスタ」もスタジオの照明を落として放送していたと記憶)
このように、季節外れの天候はそれ単体では必ずしも停電危機に直結するわけではないものの、他にもイレギュラーが重なることで危機的な事態を招くことになります。例えば2022年3月のように大きな地震、あるいは異常天候のタイミングに合わせて発電所や送配電網にサイバー攻撃を仕掛けられるリスクなどが想定できます。
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