実質再生可能エネルギー100%マンションの致命的な欠点とは
最近少しずつ増えてきている「実質再生可能エネルギー100%」を謳ったマンションには、致命的な欠点があります。問題点を分かりやすく解説します。
目次
再エネ100%マンションの致命的なデメリット
実質再エネ100%マンションの致命的な欠点を解説します。
一括受電をやめるハードルが極めて高い
実質再エネ100%マンションは、一括受電といってマンション全体(専有部・共有部)で同じ電力会社から一括で電気を購入する形態を取っていることが多いです。この一括受電をやめて、電力会社と戸別に契約する形態に切り替えるには高いハードルを乗り越える必要があります。
- 入居者全戸の同意が必要 合意形成が困難
- 設備の入れ替えで1000万円以上の費用が発生する場合も
一括受電をやめるには、管理組合の理事会で方針を決定し、総会で決議を行い、更に全住戸(店舗などのテナントがいる場合はテナントも含む)の同意が必要となります。合意形成が難しいというハードルがあります。
加えて、特に新築時から一括受電を導入しているマンションが一括受電をやめる場合、設備の入れ替えによって1000万円以上の費用が発生する場合があります。1戸あたりの費用は10万円以上になるケースも珍しくありません。
この点は実質再エネ100%マンションではなく一括受電のデメリットですが、再エネ100%マンションは一括受電とセットであることが多いためデメリットと指摘できます。
電気代が高くなる場合がある
実際に実質再エネ100%マンションの電気料金の約款などを確認することが出来ておらず、一括受電マンション(非再エネ)の約款をもとに解説します。
私が部屋を所有している300戸規模のマンションでは一括受電を導入しています。新築時は一括受電ではなく、途中から一括受電を導入したマンションです。
このマンションでは導入にあたって「専有部の電気代は東京電力と同額」「専有部の電気料金を東電より割安にする」と説明が行われましたが、2023年2月現在の専有部の電気料金は東京電力の従量電灯と比べて約25%高くなっています。
このマンションで導入している大手一括受電業者は2022年に規約を変更し、これまで毎月の電気料金に加算される燃料費調整に設けていた「上限」を撤廃しました。東京電力の従量電灯では上限があるのに対し、この大手一括受電業者では上限が無くなったため、燃料価格が高騰している現時点において電気代が約25%高くなっています。
一括受電業者は燃料費調整に上限を設けていないことが多いため、現在の情勢下のように燃料価格の高騰などを原因として一括受電マンション(実質再エネ100%マンション)の電気代が高くなるリスクがあります。
仮に購入時点で大手電力と同額、燃料費調整に上限を設けていたとしても、実際に一括受電大手の中央電力などは後からこの条項を変更し値上げを行っているため、この点は永続的にリスクとして存在し続けることになります。
再エネ100%に魅力を感じる消費者は少ない
私は2014年からこの「新電力比較サイト」を運営し、主に消費者向けに電力会社の比較や電気料金の比較情報を提供してきました。当サイトからこれまでに4万件以上の電力の切り替えが発生しています。
そんな私が強く感じるのが、「再エネ100%」や「エコ」を進んで選ぶ消費者が少ないということです。
私はサイトを運営するにあたって、電力会社ごとに異なるCO2排出量のデータをしっかりと伝えるように心がけています。温暖化対策は重要な問題であり、サイトを見てくださる方にも環境問題を意識してほしいと考えているからです。
これまでに大手電力と電気料金が同額の「実質再エネ100%」プランも紹介したことがありますが、全くといっていいほど申込みがありませんでした。
また、CO2排出量が多い電力会社について「CO2排出量が著しく多く、環境負荷が多い」と記述したこともありますが、電気代が安ければ多くの申込みが集まっていました。
このように、環境問題というものは経済的メリットを目の前にすると霞んで見えてしまうものです。「実質再エネ100%」が中古マンション市場で評価点になる可能性は極めて低いと言えます。
再エネの価値は長期的に下がっていく
再エネの価値は今後、低下していきます。
わが国では2012年にスタートした固定価格買取制度を契機として、太陽光発電を中心とした太陽光発電の普及が急速に拡大しました。日本全体の電源構成に占める再生可能エネルギー(水力を除く)の割合は、2010年度に2%だったものが、2020年度には12%にまで拡大しています。
ヒトは希少なものに価値を感じます。希少性が下がっていくと、そのものの本質が変化していなくとも感じる価値は低下します。
再生可能エネルギーは今後も導入が拡大していくため、その希少性は減少します。また、今後は「脱炭素」の電源として原子力発電の重要性が高まる可能性もあるため、脱炭素電源としての再生可能エネルギーの独占性も低下します。
付加価値ではなく「負債」となりうる
これまで述べてきたように、実質再エネ100%マンションは主に一括受電であるが故の致命的な欠点を背負っています。また、デメリットが顕在化した際に問題を修正することも難しいです。
「実質再エネ100%」は付加価値ではなく、負債となるリスクが小さくないと結論づけることが出来ます。
マンションでの現実的な再エネ利用は
最後に、マンションでの現実的な再エネ導入の具体策を提示します。
「建物丸ごと」というのは各住民のそれぞれの考え方があるため難しい部分がありますが、共有部だけでも実質再エネ100%の電力を導入することは容易に可能です。切り替えには原則、費用も掛かりませんし手続きも簡単です。一括受電のように住民全員の同意も必要ありません。何らかの不利益が生じた場合は、直ちに他の会社に切り替えることが出来ます。
管理組合結成後に理事会で実質再エネ電力の導入を提案することで導入が可能です。
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