地域によって大きく違う電気料金
全く同じ量の電気を使っても、請求される電気料金の額は地域によって大きく変わってきます。今回はこうした「電気料金の地域格差」の問題を詳しく解説します。
目次
電気料金の「地域格差」の実態
百聞は一見にしかず。
まずは同じ使用量で各地域の電気料金を比較してみましょう。
順位 | 社名 | 月料金 | 最安との差額(月) | 年間の差額 |
---|---|---|---|---|
1位 | 北陸電力 | 7164円 | -円 | -円 |
2位 | 九州電力 | 7708円 | +544円 | +6528円 |
3位 | 沖縄電力 | 7708円 | +544円 | +6528円 |
4位 | 四国電力 | 7821円 | +657円 | +7884円 |
5位 | 中国電力 | 8034円 | +870円 | +10440円 |
6位 | 関西電力 | 8181円 | +1017円 | +12204円 |
7位 | 東北電力 | 8528円 | +1364円 | +16368円 |
8位 | 中部電力 | 8540円 | +1376円 | +16512円 |
9位 | 東京電力 | 8866円 | +1702円 | +20424円 |
10位 | 北海道電力 | 9353円 | +2189円 | +26268円 |
30A契約で300kWhを使用した場合の試算です。
300kWhというと、二人暮らし世帯の平均使用量よりも少し少ない程度の使用量です。
最安の北陸電力と、最高値の北海道電力を比較すると同じ使用量でも年間で26268円もの差になります。
年間2.6万円もの差が生まれる理由は?
では、なぜ電気料金にはこれほど大きな「地域間格差」があるのでしょうか。その理由を紹介していきます。
電源構成の違い
料金差の最大の原因は「電源構成」の違いです。
原子力や石炭火力、水力など様々な発電方法がありますが、それぞれ発電するのに掛かるコストは大きく違います。
例えば、一口に「火力発電」といっても燃やす燃料によって発電コストは大きく変わってきます。
最も安い石炭火力発電は1kWhの電気を作るのに9.5円程度のコストで済みますが、最も高い石油火力発電では22.1円と、2倍以上のコストが掛かります。
全国で最も電気料金が安い北陸電力では、発電コストが安い石炭火力発電(9.5円/kWh)と水力発電(8.2円/kWh〜)で全体の90%(2014年度実績)をまかなっており、それが安い電気を生み出す源泉となっています。
一方、最も電気料金が高い北海道電力はコストが安い石炭+水力の比率が56%(2016年度実績)と低くはないものの、コストが高い石油火力が25%、水力を除く再生可能エネルギーが18%となっているため、高コスト体質となっています。
原発の保有状況
西日本では徐々に原発の再稼働が進んでいるものの、東日本で原子力発電所の停止が続いています。
停止している原発を維持するのにもコストが掛かる上、再稼働するための安全対策に掛かる多額の投資も活発に行われています。こうした費用も電気料金に反映されています。
順位 | 電力会社名 | 値上げ率 | 原発依存度(2010年度) |
---|---|---|---|
1位 | 北海道電力 | 24.24% | 44% |
2位 | 関西電力 | 18.92% | 51% |
3位 | 東北電力 | 8.94% | 26% |
4位 | 東京電力 | 8.46% | 28% |
5位 | 四国電力 | 7.80% | 43% |
6位 | 九州電力 | 6.23% | 39% |
7位 | 中部電力 | 3.77% | 15% |
8位 | 北陸電力 | 0% | 28% |
8位 | 中国電力 | 0% | 3% |
8位 | 沖縄電力 | 0% | 0% |
上の表は、震災後の電気料金の値上げ率と、原発が止まる震災直前の原発依存度を表しています。
2015年、16年に再稼働にこぎ着けた九州電力と四国電力を除けば、原発依存度が高かった会社が値上げ率でも上位にランクインしていることが分かります。
原発に大きく依存していた電力会社は稼働停止を余儀なくされた結果、これまで予備として温存していた高コストな発電所(石油火力など)に頼らざるを得なくなり、結果として電源構成上も高コスト体質になっています。
同じ新電力でも地域によって料金が違う理由は
新電力でも、同じ会社であっても地域によって異なる料金プランを提示しているのが当たり前です。 例えばLooopでんきは基本料金0円は全国一律ですが、従量料金は21円/kWh(北陸エリア)〜29円(北海道エリア)と、8円/kWhもの差があります。月に300kWhの使用量では2400円の差になります。
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北海道の新電力の電気料金を一挙に比較できます北陸の電力会社の料金比較表
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こうした差があるのは、新電力が各地域で調達する電気の「調達コスト」の差と、電気を各家庭に届けるために発生する「託送料金」(送電コスト)の差が大きく関係しています。
調達コストの地域差
地域 | 市場価格(kWhあたり) |
---|---|
北海道 | 10.62円 |
北陸 | 7.72円 |
これは日本卸電力取引所が公表している、2017年4月1日〜7月7日の地域ごとの「スポット市場取引結果」のデータをもとに、その平均値を算出したものです(元データ:取引情報)
日本卸電力取引所は多くの新電力が電気の調達に活用している取引市場ですが、地域によって電気の取引価格には差があります。この期間で比較すると、北海道と北陸の価格差は2.9円/kWhです。
この他、新電力は自家発電設備を持つ企業からも直接電気を買い付けていますが、この価格も地域によって当然差が出てきます。地域の電力会社が高い料金で電気を売っている地域では、こうした直接取引の価格も自然と高くなります。
送電コストの地域差
新電力は電気を各家庭に届けるために、各地域の大手電力会社の送電網を利用しています。この利用には「託送料金」という国から認可を受けた料金を支払う必要がありますが、この料金にも地域差があります。
地域 | 託送料金(kWhあたり) |
---|---|
北海道 | 8.76円 |
北陸 | 7.81円 |
託送料金が最安の北陸地域と、最高値の北海道では0.95円の差があることが分かります(2016年度の価格)
営業戦略による要因
Looopでんきの北陸と北海道の価格差が8円/kWhである内、電気の調達コスト(2.9円)と託送料金(0.95円)で3.85円/kWhと、約半額は説明がつきます(もちろん調達コストは概算ですが)
残りの価格差については、営業戦略上の決定がありそうです。
Looopでんきは各地域で「最安値水準」の料金プランを提示しており、北海道でも北陸でもそれは同じことです。
北海道においては、Looopでんきよりも安い料金を提示している新電力がありません。ですからこれ以上値段を下げる必要が無いため、この価格で決着したのではないか、というのが私の推測です。
さいごに 海外との比較
日本国内の地域間格差をご紹介してきましたが、最後に海外と日本の電気料金を比較してみます。電力中央研究所の資料に分かりやすいグラフがあったので、こちらをご覧ください。
このグラフによれば、日本の電気料金の水準は「高くもなく安くもない」という水準であることが分かります。料金が安いアメリカ(平均)カナダ、韓国などと比べると大幅に高いものの、欧州の各国と比べても高いとは言えないことが分かります。
念のため消費者庁の資料を確認しても、同様の結果です。
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