電力不足による停電、新電力契約者も対象なの?
懸念が高まる電力不足。停電や計画停電は新電力会社と契約している人も対象なのか、停電の仕組みと絡めて分かりやすく解説します。
- この記事の著者:石井元晴
2014年から当サイトを運営。産経新聞、週刊女性自身、週刊ポスト、女性セブンなど数々のメディアに電力自由化の専門家として取材を受けてきました。400社以上の料金プランに目を通しています。
目次
新電力の契約者への影響は
計画停電や突発的な停電は新電力会社と契約しているユーザーにどのような影響を与えるのか、分かりやすく解説します。
停電・計画停電の影響は
結論を述べると、契約先がどの電力会社であろうと、停電・計画停電のリスクは変わらないと言えます。
電力不足によって発生する突発的な停電も計画停電も、基本的には「変電所単位」で電力の供給が遮断されます。従って、自宅エリアを管轄する変電所が停電の対象となった場合、東京電力と契約していようがENEOSでんきと契約していようが、ドコモでんきと契約していようが関係無く電力供給が遮断され、停電します。
特定の電力会社と契約しているユーザーだけ停電せず電気を使える、ということは無いです(マイクログリッドなど極めて特殊な事例を除く)
東京電力パワーグリッド(送配電会社)も以下のように説明しています。
計画停電は、原則、すべてのお客さま※にお願いいたします。
※東京電力グループ以外の小売電気事業者から電力供給を受けている場合も対象となります。引用元: 計画停電について(東京電力パワーグリッド)
変電所が違えば隣同士の家でも停電する/しないという違いが生じる場合がありますが、これは契約している電力会社の違いによって生じるものではありません。
電気を集めて必要な場所へ分配するため電圧を変える「変電所」の単位で設置されていますが、隣同士の家でも、異なる変電所から電気が送られている場合があります。そのため、「UFR」が作動すると、自分の家は電気が使えているのに隣の家は停電している…という状況も生まれる可能性があります。
引用元:2月13日、なぜ東京エリアで停電が起こったのか?〜震源地からはなれたエリアが停電したワケ(資源エネルギー庁)
新電力契約者だけ停電することは無い
どの電力会社と契約していようが、停電のリスクは変わりません。
新電力会社には顧客が使用するのと同じ量の電気を、送電網に供給する義務が課せられています。この義務を果たせない場合、送電網を管理する送配電会社が不足分を調整し、ユーザーに電気を滞りなく届ける仕組みになっています。
新電力が送電網に供給する電気の不足・過剰は実は日常的に多くの新電力が発生させてしまっており、珍しいことではないというのが現実です(それが良いか悪いかは別として)
契約先の新電力が電気の調達・供給を十分に行えない場合でも、電気の供給はしっかりと受けられる仕組みになっているので心配する必要はありません。
ただし変電所単位で地域への電力供給がストップした場合は、例外無く停電するというのは上で説明したとおりです。
経営にダメージを受ける新電力が多数出る恐れ
どの電力会社と契約していても、電力不足による停電の影響は変わりませんが、長期的には良くないことが起こるリスクがあります。
電力不足は調達コストの急騰を招く
電力不足により、新電力にとっての原価が跳ね上がる可能性が極めて高いです。
電力を取引するマーケットでは、電力不足が起こると取引価格が跳ね上がります。新電力の多くは自社で発電所を持たず、電力のマーケットから電気を購入しており、その取引価格が跳ね上がると影響は深刻です。
電力の取引価格は平時は1kWhあたり10円以下です。関東で電力不足の懸念が高まった2022年3月22日の電力取引価格は1日平均で69.42円と、平時の7倍以上でした。
新電力がお客さんに電気を販売する時の価格は1kWhあたり26円なので、69円で購入した電気を販売すると原価割れの大赤字になります(別途、送配電会社に支払う送料にあたる託送料金などの経費も) 電力不足が数週間続くことで、倒産や事業撤退に追い込まれる新電力は今後ますます増えることは避けられません。
新電力が倒産・撤退するとどうなるか
今後ますます増えることが避けられない、新電力の倒産や撤退ですが、契約している新電力が突然倒産しても適切な手続きをすれば停電しません。
新電力が倒産などの事態に陥ると、送電会社から「電気の供給を○月○日に止めます」という通知が届きます。その日付までに他の電力会社へ切り替え手続きを行うことで、停電せずに電気の利用を継続することが出来ます。
実際に私自身が契約していた新電力が電気の供給を停止する事態を経験しましたが、手続きを適切に行うことで停電せず電気を使い続けることが出来ています。
特殊な料金プランは電気代が高騰する恐れも
電力不足が電力の取引価格の高騰を招くことは上で説明した通りです。一部の電力会社の料金メニューは、電力取引価格の高騰を電気代に反映する仕組みを取り入れています。
一般的な料金プランは「燃料の輸入価格」を反映する燃料費調整制度を採用していますが、これとは異なる仕組みで、一部の料金メニューで導入されています。
このような特殊な料金プランを契約している場合、電力不足により電力取引価格が高騰することで支払う電気代が跳ね上がるリスクがあります。電力不足が長期化した場合、電気代が大手電力標準メニューの2倍以上になる場合もあり、注意が必要です。具体的には以下の料金プランが該当します。
電力不足が懸念されている状況では、これらの料金体系は大きなリスクとなります。昨今、電源調達調整費を新たに採用する新電力が増加しているので注意が必要です。
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