日本の慢性的な電力不足はいつ解消されるのか

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慢性化しつつある日本の電力不足はいつ解消する?


 2011年以降、慢性化しつつある日本の電力不足。いつまでこの状況が続くのか、今後起こるイベントをもとに予想します。



夏と冬の風物詩となっている電力不足


 約10年にわたり、我が国では特に冬の時期の電力不足が度々問題となっています。


近年の電力不足(2011年〜)


 2011年以降、日本では特に冬の時期の電力不足懸念が度々高まっています。


 2011〜2012年は数値目標を設けた節電要請が、13〜15年は数値目標を定めない形で節電要請が出されていました。


 また、2021年1月には厳しい寒波の到来と、LNG(液化天然ガス)の輸入が新型コロナの影響等で十分に輸入出来ない事態が発生し、約1ヶ月にわたり電力不足が発生。また2022年3月には福島県沖で発生した地震の影響により火力発電所が停止したことで電力不足が発生。3月22日の夕方以降、一部地域で「停電が発生する恐れ」があると発表され、市民生活にも影響が出る事態となりました。


2022年冬の電力不足懸念が深刻


 これまでにも電力不足は毎年のように発生していますが、2022年冬シーズン(2023年1・2月など)は特に深刻な電力不足が発生することが想定されています。


2022年度の電力需給見通しと対策について

出典:2022年度の電力需給見通しと対策について
(資源エネルギー庁)

 上の表は資源エネルギー庁の資料にある各年度の冬の需要ピーク時の電力の「予備率」の見通しです。予備率とは需要のピークに対してどれだけ余裕をもって供給出来るのかを示す指標で、最低でも3%は必要とされています。


 2022年冬季(具体的には2023年2月)は東京電力管内で予備率が-0.5%、つまり「電気が足りない」想定です。東京電力管内は需要の規模が他のエリアと比べて格段に大きいため、他のエリアから融通を受けても電力が足りない可能性があります。


電力不足の原因は


 電力不足が深刻化している原因を解説します。


火力発電所の休止・廃止


大井火力発電所と品川火力発電所

品川火力発電所と廃止が決まった大井火力発電所

 火力発電所の廃止や休止が増加しています。経産省の資料によれば、2016年度からの5年間で毎年度200〜400万kWの火力発電所が廃止されています。大型の原子力発電所2〜4基分が毎年廃止されていることになります。


 廃止されているのは1970年代以前に運転を開始した石油火力発電所である場合が多いです。脱炭素化の動きや、発電コストが高く稼働率が低いことなどを理由として廃止が相次いでいます。


原子力発電所の稼働停止


 福島第一原発事故以降、原子力発電所の安全性を強化することなどを目的として、一時国内すべての原子力発電所が稼働を停止しました。2010年度の電源構成に占める原子力発電の割合は28.6%(電事連)ですが、4分の1以上を占めていた発電方法が一時完全に「使えなくなった」ため電力の需給が逼迫しました。


 徐々に再稼働する原子力発電所も増えつつありますし、岸田首相は原子力発電所の再稼働を「しっかり進める」方針を2022年5月に示していますが、安全確認のための審査や安全対策に必要な工事には年単位で時間が掛かるため、「すぐに」再稼働が実現する可能性は低いです。


原子力発電所

美浜原発

時事的イベントが影響するケースも


 2021年1月の電力不足は新型コロナの影響でLNGの輸入に支障が発生したことにより、LNG火力発電所が十分に発電出来なかったことが原因の一つとして指摘されています。


 また、2022年3月の東日本で起きた電力不足は、最大震度6強の地震により岩手・宮城・福島・茨城・神奈川の多数の火力発電所が損傷したことにより発生しました。


電力不足はいつ解消されるのか


 では、電力不足はいつ解消に向かうのか。今後の見通しを紹介します。


2024年以降に一旦緩和に向かう可能性


 2024年前後に複数の火力発電所の運転開始、また原子力発電所の再稼働が予定されています。主な計画は以下のとおり。


発電所 稼働時期 発電容量
五井火力発電所(千葉) 2024年度〜 234万kW
女川原子力発電所2号機(宮城) 2024年11月 82万kW
島根原子力発電所2号機(島根) 2024年12月 82.5万kW

 原発の再稼働と、火力発電所の新規運転開始の主な計画をまとめました。


 原子力発電所に加え、最新鋭で高効率の大型火力発電所が順次運転を開始することで、2024年には一旦、現在の深刻な状況を脱することが出来るのではないか、と予想しています。


 世界的な資源価格高騰、また資源国であるロシアによるウクライナ侵攻を受け、日本国政府は原子力発電所の再稼働を進めていく方針を示しています。島根・女川以外の原子力発電所についても、今後数年かけて再稼働に向けた動きが活発化するでしょう。


電力供給の過渡期にある日本


 電力業界はかつてない変化の波に飲み込まれています。



 これらの大きな波が一度に襲っている状況が、現在の電力不足を作り出していると言えるでしょう。


 再エネは固定価格買取制度により太陽光発電の導入が一挙に進みましたが、一方で昼間の電力供給が過剰になる問題が生じており、せっかく導入が進んだ太陽光発電の電力を有効活用出来ていない状況があります。電気の使い方を見直す、電気自動車や蓄電システムによる蓄電による有効活用が今後進んでいくことに期待したいです(すぐには実現しないとは思いますが)




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