メーターを替えることで電気代が安くなる?
電力自由化で参入した新電力やその代理店の中には、スマートメーターへの交換により電気代が安くなるという誤った営業トークを展開しているものが少なくありません。ですがそれは事実ではありません。事実ではないと断言できる理由を分かりやすく解説します。
目次
メーター交換で電気代を安くなるという勧誘が横行
冒頭でも紹介したように、新電力やその代理店の中には電力計(電気メーター)を従来のアナログ式から次世代型のスマートメーターに交換することでコスト削減できることで、安い電気料金を提供出来るといった営業トークを展開しているところがあります。
私は日頃から新電力の公式サイトを幅広くチェックしていますが、中には公式サイトにそのような文言を載せているところもありますし、あるいは主に代理店による訪問営業の場でそのような話が展開されているとの話も耳にします。
更に悪質なケースでは、新電力やその代理店が大手電力会社を騙って「メーター交換で電気代が安くなる」と勧誘しているケースも存在しています。
ですが、スマートメーターに交換することで電気代を安くできるという事実はありません。そう断言出来る理由を解説します。
電気代が安くならないと言える理由
スマートメーターに替えても電気代を安くなるわけではないと言える理由は以下のとおりです。
メーターのコストは託送料金に含まれる
まず前提条件を分かりやすく説明します。
電力自由化で参入した新電力や、あるいは東電などの大手電力会社の小売部門(消費者が毎月電気代を支払っている相手)は、いずれも送配電会社と呼ばれる会社がもつネットワークを通じて、電気を家庭や商店などに届けています。まちなかで見かける電線や、山間部などで見られる高圧の送電線を管理しているのが送配電会社です。
電気のメーターの設置費用や、あるいは使用量をチェックするための諸々のコストは、いずれもこの「託送料金」に含まれるものです。
託送料金はどの電力会社でも一律負担
新電力や大手電力会社の小売部門は、送配電会社に「託送料金」というお金を支払うことでお客さんに電気を届けることが出来ます。この託送料金は経済産業省が認可をして、地域ごと一律の金額が設定されています(基本料金と、1kWhあたりの単価が発生する)
どの新電力、あるいは大手電力会社でも、同額の託送料金を負担しています。また、設置されたメーターがスマートメーターであろうが従来型のアナログメーターであろうが、発生する費用は変わりません。
結論:個別の電力会社のコスト削減効果は無し
スマートメーターへの交換は、電力会社(小売会社)間のコスト差を生み出すものではないため、メーター交換によりコストを削減することで電気代を安くできるという話は明らかに誤りであることが分かります。
また、日本国内では2024年度末を目処に全てのメーターをスマートメーターに変更するべく順次作業が進められています。最も早い東京電力エリアでは2020年度末までに全ての家庭での切り替えを目標としています。
日本全体の電気代が安くなる可能性はある
個別の電力会社・新電力にとってコスト削減、電気代を安くする効果は無いものの、スマートメーターが普及することで日本全体の電気代が安くなる可能性はあります。
コスト削減を目的として全国で普及が進む
2024年度までにスマートメーターへの切り替えを進めている理由の一つに、「コスト削減」があります。
スマートメーターは1台あたり9600円(中部電力資料 平成30年時点)と、4600円の従来型メーターの約2倍の価格です。機能が充実している分、初期費用は高額と言えます(費用は送配電会社が負担、消費者は原則として無料)
初期費用は掛かりますが、長い目で見てコスト削減効果を得ることが出来ます。最もわかりやすいのは使用量を確認する「検針」に掛かるコストです。
従来型のアナログメーターでは、電気の使用量を現地に赴いて、目視で確認する必要があります。目視で確認した使用量に基づき、電気代が計算され消費者に請求されます。
一方、スマートメーターは通信機能をそなえており、現地で使用量を確認する必要が原則としてありません。検針員を巡回させて一つ一つメーターを確認する必要が無くなるため、コストを削減出来ます。中部電力では年間50億円のコスト削減を見込んでいます。
検針に掛かるコストが下がることで、託送料金がわずからながら下がる可能性があると言えます。言い換えれば日本全体の電気代がわずかに安くなる効果が期待できます(繰り返しになりますが、個別の電力会社間の差を生み出すものではありません)
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