10分で満タン?電気自動車の超急速充電は普及するのか

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10分で1000Km?超急速充電は普及するのか


 10分充電するだけで1000Km走行できる「超急速充電」の実用化が期待されています。この超急速充電について、電気料金の面から「普及しないのではないか」との疑問を持ったの簡単に試算をしたいと思います。



10分で1000Km分充電できる超急速充電が開発中


 トヨタ自動車などが10分程度の充電で1000Km走行できる超急速充電の開発に取り組んでいます。


全固体電池が搭載されるのは、5月に新設したEV事業の専任組織「BEVファクトリー」が手がける次世代EVだ。10分以下でフル充電でき、航続距離が従来型のEVの約2倍にあたる1000キロ程度を目指している。

引用元:「全固体電池」トヨタが27年にも実用化へ…10分以下でフル充電、航続距離1000キロ程度 (読売新聞)

 現在普及している中で最も出力が大きな充電器でも、500Km走行するために必要な電力を充電するために30分以上の時間を必要とします。10分で1000Km、5分で500Kmであればガソリン車の給油に掛かる時間と遜色ない時間に短縮されることになります。


電気自動車


超急速充電器の普及は実現するのか


 超急速充電のニュースを見た私は、電気料金の面から疑問を持ちました。以下、超急速充電の普及が可能なのか、検討したいと思います。


充電器1基で電気の基本料金が月180万円に


 私がこの記事を読んで最初に引っかかったのが、「電気の基本料金」です。


 短時間でより大容量の充電を行うには、大きな出力を必要とします。電気料金は家庭向けでも法人向けでも、容量を大きくすると基本料金が高くなります。


 電気自動車の電費を1kWhあたり7Kmとした場合、1000Km走行するのに必要な電力量は142kWhです。142kWhを10分間で出力するには、単純計算で852kW、余裕を見て約1000kWの容量が必要となります。


 東京電力エナジーパートナーの高圧電力の場合、電気の基本料金は1kWあたり1814.37円です。契約容量が1000kWとした場合、基本料金だけで181万円掛かることになります。


 充電器一台で毎月180万円のコストが発生したとして、ビジネスとしてペイするのかという疑問が生じました。


テスラスーパーチャージャー


充電サービス提供の「原価」はいくら?


 充電サービスを提供するには、電力を供給する必要があります。東京電力エナジーパートナーの高圧電力の場合、単価は1kWhあたり22.68円です(再エネ賦課金、燃料費調整単価など含まない)


 1000Km走行するために必要な電力量は142kWhなので、電力量料金として発生するコストは3220円となります。


 基本料金部分をどう計算するかにもよりますが、1日の利用台数に応じた1台あたりの単価は以下のようになります。


1日利用台数 1台あたり基本料金
1日100台 600円
1日50台 1200円

 充電器を1日100台(1時間平均4台)するケースはなかなか想定しづらいので1日50台想定の方が妥当だと思いますが、この場合の基本料金の按分は1台あたり1200円となります。


 基本料金相当分と電力料金分を合わせたランニングコストの「原価」は合計で4420円となります。


日産リーフ


初期費用はどうか


 10分で1000Km分充電できる充電器はまだ実用化されていないため費用の見積もりが難しいところですが、現在販売されている中で最も高出力(250kW)タイプで1000万円以上のコストが掛かると言われています。電気の引き込みや変圧器の設置など様々な条件により変動しますが、10分/1000Kmの充電器の設置費用が1000万円を切ることは無く、2000万円掛かってもおかしくはないと言えます。


 仮に初期費用を1500万円、耐用年数を5年、1日の利用台数を50台とした場合の初期費用の按分は1台あたり167円となります。


ガソリン車との比較


 ここまで紹介したきたコストを合算した上で、ガソリン車と比較しましょう。充電器は1日50台が利用するケースを想定します。


内訳 金額(1台あたり按分)
設置費用 167円
電気基本料金 1200円
電力量料金
(1000Km分充電時)
3220円
合計 4587円

 上記のコストで1000Km走行できると仮定した場合、1Kmあたりのコストは4.6円となります。


 プリウスの平均燃費は約22Km/L、ガソリン代はリッター170円とした場合の1Kmあたりのコストは7.72円です。


ガソリンスタンド


自宅充電との比較


 自宅に普通充電器を設置して充電するケースとコストを比較します。自宅充電のコストの内訳は以下のとおり。



 自家用車の年間平均走行距離が約1万Kmとされているので、年間1万Km走行する前提で計算すると初期費用が約10万円(耐用年数を仮に20年とする)、ランニングコストで年間65191円に。合計のコストは年間70191円となり、1Kmあたりの走行コストは7.02円となります。


 超急速充電の方が粗い計算では「安価」という結果になりました。


トヨタの小型EVモビリティ


結論


 建物のコストや人件費、企業の利潤などが乗ったガソリン代と、粗い原価だけの充電コストを比べることは「何の意味も無いこと」ですが、私がこの記事を書くにあたって感じた「商売として成立しない」という懸念は必ずしも正しいものではないと言える可能性があります。


 例えば高速道路のサービスエリアのような場所では、このような超急速充電がビジネスとして成立する可能性は否定できないと言えます。一方でガソリンスタンドのように街中に普及していくかという点に関しては、補助金や設置費用、電気自動車の普及ペースに左右されると思います。


 もっとも、急速充電を繰り返すことで電池の劣化が早まると言われており、電池の寿命の観点から問題点が指摘される可能性もあると思います。




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