電力自由化のせいで停電が増えたというデマ

災害発生時によく聞かれるデマを否定します


 台風や地震など、災害によって停電が発生するとよく聞かれるのが「電力自由化のせいで停電が増えた」とする主張です。この話は誤解に基づくデマであると断言することが出来るので、この記事で詳しく説明していきます。



災害時になぜ停電が発生するのか


 まずは地震や台風など、災害時になぜ停電が発生してしまうのかを分かりやすく説明します。


電気を届けるルートが寸断されて停電する


電線が切れて停電する


 地震や台風など、災害が発生すると大規模な停電が発生することがあります。その停電の多くは電気を家庭まで届けるルートの寸断によってもたらされています。


 電気を届けるルートというのは、難しい言葉でいうと「送配電網」という言い方をします。郊外に行くと見られる送電線や鉄塔、あるいは町中に立ち並ぶ電柱や電線、変圧器などが含まれます。


 地震や台風などが発生すると、電柱の倒壊や飛来物(屋根が飛ばされたり、家が倒れたり)によって電線や送電ケーブルが切断されます。そのことが災害時の停電の原因となることが多いです。


電力小売自由化の仕組みを整理しよう


 停電の仕組みを理解したら、次は電力自由化の仕組みをおさらいします。世の中にあまり正しく理解されていないと感じる部分を中心にまとめます。


自由化されていない送配電部門


 「電力自由化」という言葉には、実はいくつかの「自由化」が含まれています。


 一番わかり易いのは「小売」の自由化で、一般家庭でも電力会社を選べるようになったのがこれに当てはまります。2019年9月現在、600社が参入して激しく競争しています。東京ガスとか楽天でんきなどが代表的な新電力会社です。


 もうひとつ、「発電」の自由化があります。1995年に自由化され、製鉄会社など多数の企業が参入して発電所を建設し、発電をしています。「新電力会社」の中にも発電をしている会社もあります。


発電も自由化された


 一方、電気を家庭や企業などに届ける「送配電」については、引き続き厳しい規制の下に置かれています。各地域に1社ずつの送配電会社がその管理を任されており、実質的に地域独占が残されたままとなっています。


大手電力会社だけど大手電力会社じゃない


 送配電会社は、これまでは各地域の大手電力会社(関電や中電など)をイコールでした。しかし、2020年に行われる発送電分離によってその形態が大きく変わります。


 日本の電力会社は、発電・送配電・小売の3つの機能を一貫して提供してきましたが、上でも説明したように発電と小売については既に自由化されています。


 ですが送配電は自由化されていないため、新電力会社は大手電力会社の送配電を利用する必要があります。そうすると、大手電力会社の中で自社の小売部門を優遇してしまう恐れがあります。


 それを防ぐために、送配電部門を分社化するなどして「独立」させるのが発送電分離です。会計が小売部門などと別になるのはもちろん、人員や事業も明確に別のものとして区別されます。


 例えば東京電力は送配電を担う「東京電力パワーグリッド株式会社」と小売の「東京電力エナジーパートナー株式会社」に分社化されています。


2016年に分社化された東京電力

2016年に分社化された東京電力(同社資料より)

新電力利用者も支える送配電


 送配電部門は、電線の使用料金である「託送料金」によって支えられています。この金額は経産省が認可して決められており、自由化されていません。競争もありません。


 託送料金は新電力会社はもちろん、大手電力会社の小売部門が家庭や企業などに電気を販売する際にも、全く同額を自社の送配電部門(あるいは送配電会社)に支払うことになります。利用している電力会社によって、送配電網の維持への貢献度合いが違うということはありません


 「災害発生時に新電力が何もしないのはケシカラン」と怒っている人は、この辺りの認識が不十分です。


結論:「自由化で停電が増えた」はデマ


 地震や台風といった災害で起こる停電は、電気を届けるルートの寸断によって発生するものであり、その電気を届けるルートは自由化されておらず、独占事業です。そもそも自由化されていないため、「自由化で停電が増えた」は明らかにデマです。


 ただし、送配電事業は各社とも赤字傾向が続いています。上でも説明したように、送配電の収入は経産省が認可した託送料金です。災害による停電が深刻化していくのであれば、託送料金の見直しなども含めて検討する必要があると言えます。


他にもある電力自由化にまつわる誤解


 災害が発生するとTwitter上などでよく見られる誤解に答えていきます。


新電力が災害復旧で何もしないのはケシカラン


 災害復旧にあたるのは大手電力会社(の送配電部門)の方々や、関電工を始めとする電気工事会社の作業員です。場合によっては他地域からも応援に駆けつける場合もあります。


 それに対し「新電力会社が何もしないのはケシカラン」と腹を立てる人がいるようです。Twitterを見ているとそうした投稿が散見されます。


 そもそも新電力会社は「小売」に特化しているため、切れた電線を繋げるような人員やノウハウを持っていません。それは大手電力会社の小売部門についても同じです。災害時に頑張っているのは大手電力会社の送配電部門であって、その費用を支えているのは新電力契約者も大手電力契約者同じことです。


 道路が寸断された際に、運送会社の人に「ふだん道路使ってるんだから復旧工事をしろ」と言いますか?


送電線


新電力と契約したら復旧が後回しにされる


 こうした誤解は少しずつ減ってきているように感じますが、不安に感じるのは自然なことだと思います。


 ですが安心してください。新電力契約者も、大手電力会社契約者と全く同額の「電線の使用料金」を実質的に負担しているので、差別されることはありません。復旧工事にあたる送配電会社にとっては、契約している会社に関係無く全ての利用者は平等です。


 また、差別的な扱いをすることを経産省が禁止しており、仮に差別的なことが行われれば処分の対象となりえることです。幸い、これまでにそうした話が問題になったことはありません。


 地域によっては20%以上が新電力と契約している時代ですから、そのようなことがあればすぐに問題になりますし、真面目に復旧作業にあたっている送配電会社に対しても失礼ではないでしょうか。


停電


新電力と契約したら停電する


 災害によって電線が切れてしまえば、どの電力会社と契約していようが全く同じように停電します。新電力だけ停電するといったことはありえませんし、逆に新電力と契約しているから停電しないということもありません。




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