無電柱化のメリット・デメリット
昨今、社会的問題として注目を集める電線地中化(無電柱化) 改めてそのメリットとデメリット両面から詳しく解説していきます。
目次
無電柱化のメリット
まずは無電柱化のメリットを紹介します。
景観が良くなる
美しい景色をたった一本で「台無し」にできるのが電線です。例えば観光地で写真を撮る際に、「電線が無ければいいのに・・」と思った経験がある人も少なくないでしょう。
ヨーロッパの都市では厳しい景観条例があるところも少なくなく、それが「無電柱化」を後押ししたと言われています。例えばロンドンやパリでは無電柱化率が100%を達成しています(東京23区は7%)
特に東京23区の住宅密集地では、電線(電話線なども含む)が束のように空を覆っているところも少なくありません。無電柱化が進むことで空が広くなり、景観が良くなる効果が期待できます。
停電が減る
景観についてはマスメディアでも度々報じられている上、実生活の中でも想像が付きやすい話だと思います。ですが無電柱化には「停電が減る」という大きなメリットもあります。
空中を通る電線(架空線といいます)は、常に様々なリスクに接しており、それが時として停電を引き起こすことがあります。
2016年度の統計で見ると、架空線の電線で起きた支障の原因としては36%が自然災害、28%が「他物接触」(樹木や鳥獣などの接触)となっています。
地中化された電線は鳥や樹木と接触して停電するリスクが極めて低いですし、台風で電柱が電柱が倒れる心配も無用です。大雪で電線が切れてしまうこともありません。
地中化することでそうした事故を大幅に減らすことが出来ます。
地震に強い
地上と比べて、地下・地中は揺れによる影響が少ないです。そのため地下鉄や地下街は「地震に強い」と言われています。
無電柱化についても、電線を地中に埋めることで地震への強さが生まれます。
NTTのまとめによると、阪神淡路大震災の際に架空線の2.4%でトラブルが発生したのに対し、地中線はわずか0.03%と80分の1という圧倒的に低い事故率に留まっています。ちなみに、被害が発生した地中線の86%が液状化による影響です(神戸市資料より)
地震が発生すると地上で家屋が倒壊したり、電柱が倒れることで電線の切断が起こります。例えば阪神淡路大震災では合計8100本、東日本大震災では56000本の電柱(通信用も含む)が倒壊しています(国交省資料より)
被害発生率 国交省資料より | |||
---|---|---|---|
地中線 | 架空線 | ||
阪神淡路 | 通信 | 0.03% | 2.4% |
電力 | 4.7% | 10.3% | |
東日本大震災 | 通信 | 地震動エリア 0% 液状化エリア 0.1% 津波エリア 0.3% |
地震動エリア 0% 液状化エリア 0.9% 津波エリア 7.9% |
電力 | データ無し | データ無し |
地中化することでそうした被害を防ぐことが出来る上、電柱の倒壊による道路の通行支障を防ぐことができます。
防犯上の利点
都市部では空き巣が電柱を利用し「侵入」するケースがあります。
電柱が無くなることで、侵入時の足場となるものが減り防犯効果も期待できます。
バリアフリー化が進む
電柱が無くなるため、そのぶん歩道が広くなります。
平均的な電柱の太さは直径30cm程度なので、電柱が無くなるだけで道路が片側30cm以上広くなり、通行しやすくなります。
また、電線類を地中に埋設する際に歩道部分をきれいに工事し直すのが一般的です。これまで凸凹があって歩きづらかった歩道も、無電柱化工事によりきれいに舗装、もしくはレンガ敷になることが多いです。
交通事故を減らす
狭い道路では、電柱を避けるために車道に出た歩行者と自動車が接触する事故も少なくありません。電柱が無くなることで歩行者が歩道をスムーズに通行出来るため、そうした交錯が減り事故を減らす効果が期待できます。
また、自動車など乗り物を運転する人にとってもメリットがあります。
一般道での自動車事故を見ると、全体では死亡率が0.7%なのに対し、電柱への衝突事故での死亡率は7%と10倍です。重症事故率についても全体が7%に対し、電柱衝突は27%と4倍近いです。
電柱衝突事故は減少傾向にあるものの、2016年には1071件発生しています。電柱が無ければ、電柱に衝突する事故は無くなります。
無電柱化のデメリット
良いことづくめにも見える無電柱化ですが、デメリットもあります。
建設コストが高い
問題点として有名なのが、建設コストの高さです。
国交省のまとめによると、無電柱化のコストは1Kmあたり3億5000万円。更に別途必要な変圧器の設置コストなども含めると、1Kmあたり5.3億円にもなります。電柱を立てる場合と比べ、10〜20倍のコストが掛かると言われています。
現在日本では「電線共同溝」という工事方式が主流で、この方式では3.5億円/Kmというコストですが、ロンドンやパリで採用されている「直接埋設」という方式(線を地中にそのまま埋める)では0.8億円/Kmで済むとされています。
直接埋設方式は国内でも京都市などで実証実験(通信ケーブルの埋設)が行われていますが、日本の法規制などの影響で電線共同溝方式よりもむしろコストが5%高くなった、と報告されておりコスト低減への道のりは険しいです。
工期が長い
電線を地中に埋めるには、様々な関係者の同意が必要となります。道路管理者である行政、電柱を利用する電力会社や通信会社やケーブルテレビ会社など、また沿道の家屋の所有者の同意も必要です(引き込み線の変更工事が必要となるため)
住民説明会などを実施しても、住民の同意が得られないケースもあります(費用負担は発生しないにもかかわらず)
更に工事期間についても、道路の通行規制や既存の埋設物(上下水道やガスなど)などの問題から長くなりがちです。
歩道にスペースを取る
無電柱化で「電柱」が無くなるものの、全ての設備を地下化できるわけではありません。
例えば架空線の場合は電柱の上に設置される「変圧器」ですが、日本で無電柱化が行われる際にこれが歩道の上に移動してくる場合が多いです。大きさは縦1m 横0.5mで高さは1〜1.5mという「大きな箱」です。
設置には歩道上に一定のスペースが必要になります。スペースが無い場所では、街路灯と一体にして空中に設置するケースもありますが、いずれにせよ一定のスペースが必要となります。
国土交通省関東地方整備局HPより
浸水リスクがある
浸水しても感電することはまずありませんが、浸水により停電する場合があります。
地上機器(上で紹介した変圧器など)は浸水すると故障するため、空中にある場合よりも地上にある(つまり無電柱化された状態)方が浸水による悪影響を受けやすいということになります。
ただし、「メリット」のところでも紹介したように、東日本大震災の津波エリアでさえ被害率は0.3%と低い(架空線では7.9%:いずれも通信線)ので、必ずしも浸水リスクが高いと言い切ることは出来ません。
カーブミラーや標識の設置に困る
都市部を中心に、電柱にカーブミラーや標識、あるいは街灯やPHSのアンテナ(基地局)、防犯カメラなどが設置されているケースがあります。無電柱化されれば、そうした設備を別の場所に移動する必要があります。
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