どの電力会社でも安全性は同じと言われているが・・
どの電力と契約しても「安全性」は同じだと言われています。電力自由化に少しでも詳しい人ほど、そのように認識しているように思いますが、実際には安全性が異なると言わざるを得ない部分があります。具体的なエピソードを交えて分かりやすく解説します。
目次
電力供給の安定性は同じ
制度上のルールを紹介します。
制度上しっかりと保護されている
これまでに倒産に追い込まれた新電力は既に何社も存在しています。契約していた新電力が倒産した場合、契約者はどうなるのか。
この点に関しては、心配いりません。倒産などによって電力会社(小売会社)が電力供給を継続出来なくなった場合、送配電網を管理している送配電会社が電力供給を一定期間、肩代わりする仕組みが整っています。
電力会社が倒産しても、電力供給が突然止まることはありません。郵送などで通知される期限内に他社に切り替える手続きを行うことで、電気の使用を継続することが出来ます。この点はどの電力会社と契約しても「同じ」と言えます。
また、災害などによる停電についても、どの電力会社(大手電力含む)と契約していても同じです。特定の電力会社の契約者だけ停電することはありませんし、逆に特定の電力会社の契約者だけ先に復旧することもありません。
供給以外の部分でトラブルになるリスクがある
電力供給の部分に関しては、どの会社を選んでも「同じ」と言えます。ですが「同じ」ではない部分があるのも事実です。
過大請求を繰り返したAKUBIでんきの事例
どの電力会社を選んでも大丈夫、と言えない最も分かりやすいエピソードとして紹介します。
2020年2月に破産手続開始決定を受けた「あくびコミュニケーションズ」は、倒産する直前の2019年12月に電力・ガス取引監視等委員会から業務改善勧告を受けています。6598万円をユーザーから過大に徴収したとされています。
また、同社は通信サービスの利用料金についてユーザーに架空請求を行い、2021年4月には元経営者らが警視庁に逮捕されています。ありもしない料金を勝手にクレジットカードを通じて引き落としたとされています。電気料金の過大徴収についても、同様に架空請求であった可能性が否定できません。
新電力の電気料金のほとんどが、クレジットカードや口座振替での支払いとなっています。AKUBIでんきのように、架空の料金を引き落とす事業者が今後も現れる可能性は否定できません。事業者が倒産した場合、過大に引き落とされた分を全額取り戻すことは難しいです。
顧客対応に難がある新電力も少なくない
私はこれまでに10社を超える新電力と契約し、また数え切れない新電力にメール等で問い合わせを行ってきました。中には顧客対応に「難がある」と言わざるを得ない新電力もありました。
例えばメールでの問い合わせへの返信に1ヶ月以上掛かるとか、そもそも返信が無い。あるいは電話が非常につながりづらいといったことは珍しくありません。
私自身の実体験ですが、引っ越しでガスの契約を解除しようとした際に、契約していたガス会社(料金が安い新規参入の会社)に電話が全く繋がらず、引っ越しの日がどんどん迫っていくというストレスフルな体験をしています。
また、顧客の個人情報を度々流出させて「お詫び」のリリースを出している大手新電力もあります。「大きな」新電力さえも、社内体制がしっかりと整っているとは言えない状況があります。
結論:「新電力にリスクが無い」とは断言できない
以上のとおり、新電力と契約しても「リスクが無い」と断言することは出来ません。私自身、特にAKUBIでんきの一件以来、新電力にリスクが無いと受け取られるような説明を行わないよう心がけていますが、大手電力と比べると新電力はリスクが大きいと言わざるを得ないというのは事実です。
ただし、大手電力でも料金の誤徴収をすることがあります。さすがにAKUBIでんきのような悪質性の高い事案は「起きづらい」と言えますし、誤徴収が判明した場合は速やかに返金されることが期待でき、誰も知らないような新電力と比較すれば「安全性」が格段に高いと言えるでしょう。
上で紹介したようなトラブルに巻き込まれたくない場合は、大手ガス会社や通信会社の電力がおすすめです。料金は「最安水準」からは離れますが、安心感は大きいでしょう。
新電力の経営環境は2021年1月頃から急速に悪化しています。少なくない新電力が経営不振に陥っており、今後誰も想像しなかったようなトラブルを起こして利用者に迷惑を掛ける新電力が相次ぐ恐れがあります。
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