新電力の事業停止に巻き込まれた実体験と対処方法

電力会社から「供給終了」の通知を受けた実体験に基づくレポート


 契約していた電力会社が事業撤退、そして送配電事業者から「供給終了」の通知を受けた実体験を詳細にレポートします(家庭向けの記事です)



私の実体験:熊本電力が供給停止に


 私が契約していた熊本電力(熊本市)が突如、電力の供給を終了する事態に巻き込まれました。


2022年3月に事業停止・供給停止に


 2019年2月から利用していた電力会社ですが、2022年3月をもって「電気の供給停止」となりました。


 発端となったのが2022年3月17日15時に着信した一本の電話です。


 電話の相手は送配電事業者である東京電力パワーグリッド(以下、東電PG) オペレーターの話によれば、熊本電力が東電PGとの間で「契約不履行」を起こし、託送供給契約が「消滅した」ため、3月22日以降は熊本電力契約者は電気の契約が「無契約」の状態となるとのことでした。


 託送供給契約とは、新電力(今回は熊本電力)が送配電事業者(東電PG)に対し、託送料金を支払うことで利用者(私)に対して電気を届けますよ、という契約です。通販会社が宅配便会社に送料を支払って商品をお客さんの元に届けてもらうイメージです。


 また、4月22日をもって送電停止となるため速やかに他の小売電気事業者への契約変更手続きをするよう促されました。「無契約」となった3月22日以降は東電PGが熊本電力に代わって電気の供給を続けるが「何かトラブルが生じてもこちら(東電PG)では対処できない」ため、できれば3月22日までに契約切り替えを完了するよう促されました。


私のタイムライン


 出来事を時系列で整理します。


日付 出来事
3月17日 東電PGから契約解除について電話を受けた
3月19日 熊本電力から書面が届く
3月20日 東京電力エナジーパートナーに電話で契約変更手続きを実施
3月21日 (熊本電力との契約が解除、無契約状態に)
3月22日 東京電力エナジーパートナーからの供給に切り替わった
3月24日 東電PGから送電停止について書面が届いた(電話と同内容)
4月22日 (東電PGから通告された「供給停止予定日」)

 電話による通知を受けた時点で「タイムリミット」まで4日と時間が限られている状況でした。


 なお、3月19日に熊本電力から届いた書面の内容は、東電PGから電話で受けた説明の内容と概ね合致したものでした。経営が厳しい状況に陥り、送配電事業者と「支払の猶予の交渉」を進めていたが、数社から「契約を解約する意向の打診」を受けたとの説明がありました。なお、本件について熊本電力側からメールでの案内はありませんでした(3月31日に公式サイトのトップページにリリースを掲載)


東京電力パワーグリッドから届いた供給停止のお知らせ

東京電力パワーグリッドから届いた供給停止のお知らせ

事業停止や供給停止の通知を受けた際の対処方法


 事業停止、倒産、撤退などにより「供給停止」の通知を受けた際の対処方法を紹介します。


速やかに他社への切り替えが必要


 供給停止の通知を受けた場合は、速やかに他の電力会社への切り替え手続きが必要です。手続きを何もせずに放置しておくと、停電する恐れがあります。逆を言えば、期限までに適切な手続きをすれば停電しません


 「期限」は契約していた新電力からの供給終了日と、送配電事業者(東電PGなど)からの供給終了日の2種類がありますが、送配電事業者から通知される「電気の供給停止予定日」が最終的なリミットとなります。絶対にこの日付までに切り替えを完了させてください。


期限までに時間的余裕がある場合(最低1ヶ月以上)


 新電力がソフトランディングで事業撤退を進める場合、新電力からの供給停止(事業終了)予告→送配電からの供給停止という段階を踏むため、時間的余裕がある場合が多いです。


 この場合、割安な新電力会社を探して申込みを行うことも選択肢としては「アリ」です。記事後半で紹介する注意点を考慮しながら、次の契約先を探してください。


 概ね、タイムリミット(送配電からの供給停止日ではなく、契約している新電力からの供給停止日)まで1ヶ月以上ある場合は新電力への切り替えを検討しても大丈夫です。


期限までに時間が無い場合の緊急対処方法


東京電力パワーグリッドから届いた「電気の供給停止予定日」

東京電力パワーグリッドから届いた「電気の供給停止予定日」(画像は一部加工)

 通常、新電力への切り替えには1ヶ月以上の時間が掛かります。また、新電力の撤退が相次ぐ現在、一部の新電力では申込みが殺到していることで切り替え手続きに数ヶ月を要する場合もあります。


 時間的余裕が無い場合(送電停止まで1ヶ月を切るケース)は、大手電力に電話で切り替え手続きを行ってください。これが最も確実な方法と言えます。期日までに申込みすればよい、のではなくしっかりと期日までに処理される確実な方法を選んでください。


 大手電力は法律(電気事業法)により、申込みを受けた際にそれを拒むことが出来ないことになっています(特定小売供給約款) 供給する義務があるため、受付けてもらえます。ただし、この義務は利用者が申込みを行った場合に発生するものであるため、大手電力に申込みをしないと停電する恐れがあります。


 電話での手続きの場合、特に引っ越しシーズンや土日はオペレーターに繋がるまでに時間が掛かる場合があるので、余裕をもって対応することをおすすめします。私が東電EPに申し込んだのは引っ越しシーズンにあたる3月の日曜日であっため、電話が繋がるまでに15分掛かりました。


乗り換え先を選ぶ際の注意点


 時間的余裕が無い場合は大手電力(の標準メニュー)への切り替え一択ですが、時間的余裕があり新電力への切り替えを検討される場合は、以下の2点に気をつけてください。


電気代高騰リスクがあるプランに注意


 大手電力を含め、多くの電気料金プランには「燃料の輸入価格」を毎月の料金に反映する燃料費調整制度を導入しています。基本的に、ほとんどの会社が同じ値動きをします。日本全体での燃料輸入価格を元に計算されるので、電気代がいきなり2倍になるようなことは無いです(あったら日本経済が壊れる)


 一方、最近少しずつ導入する新電力が増えているのが「卸電力取引所の電力取引価格」を電気代に反映する料金体系です。このような料金体系を採用している場合、電力取引価格の推移によっては電気代が大手電力標準メニューの1.5倍あるいは2倍以上に「高額化」するリスクがあります。


 電力取引価格は燃料の輸入価格によって高くなることがあるほか、電力需給が逼迫することでも跳ね上がります。昨今、日本では夏・冬の時期の電力需給逼迫が恒常化しており、電力取引価格の高騰は珍しくなくなっています(下表は卸電力取引所の東京エリアプライスの月間平均値)


11月 12月 1月 2月 3月
19年度 9.03円 8.71円 8.17円 7.59円 7.48円
20年度 5.35円 14.35円 66.53円 8.29円 6.70円
21年度 17.59円 18.04円 23.95円 23.36円 30.76円

 当サイトではこのようなリスクのある料金プランについて、シミュレーションのコメント欄などで「料金高騰リスクあり」「料金変動リスクあり」などと注意喚起しているので参考にしてください。


 契約後にこのような変更が加えられる場合もあるので、約款の変更のお知らせは必ず目を通してください。


新電力の撤退・値上げは相次いでいる


 燃料価格高騰と電力需給逼迫により新電力の撤退、値上げが相次いでいます。今後、2023年春にかけて多くの新電力が撤退や倒産、値上げに追い込まれることは避けられません。


 私が情報収集していて感じるのは、「料金が安いところ」から順番に撤退や値上げに追い込まれている印象を受けます。必ずしも料金水準が安くないところでも値上げなどに踏み切っているところもありますが、料金比較で上位に出ていたところが軒並みダメージを受けています。


 再び撤退や倒産といった事態に巻き込まれたくない方には、「最安水準」を外して電力会社を選ぶことをおすすめします。また、大規模な火力発電所を保有している会社は電力取引価格高騰の影響を受けづらいので、都市ガス大手なども撤退や値上げリスクは低いです。「資本力」のある携帯電話キャリアもリスクは低いと言えます。




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