契約者がゼロになっても大手電力会社は無くならない

新電力にシェアを奪われ続けているが・・


 電力自由化以来、シェアを新電力に奪われ続けている大手電力会社(旧一般電気事業者) ですが仮に契約者がゼロになったとしても、大手電力会社が消滅する可能性は低いです。その理由を解説します。



電力自由化の制度と現状


 まずは前提条件となる電力自由化の現状と、制度の仕組みを紹介します。


既に15%が新電力に切り替え済み


 2000年に電力自由化がスタートし、段階を踏んで2016年に「全面自由化」が実現しました。16年以前の新電力のシェアは小さかったものの、16年以降は月を追うごとにシェアが高まり、2018年7月時点では15.5%を獲得しています。


新電力のシェア(経資源エネルギー庁産省)

資源エネルギー庁資料より

 裏を返せば、そのぶん大手電力会社(旧一般電気事業者)が売上を失っていることになります。


電線の使用料「託送料金」


 大手電力会社から新電力に顧客が移動すると、その顧客から得られる売上は「ゼロ」になると思いがちです。しかし、実質的には大手電力から顧客が離脱しても、その顧客から継続して(間接的な)売上を得ることが可能です。


電線の使用料金は新電力利用者も実質負担


 電力自由化で参入した新電力では、一部の例外を除いて顧客に電気を届ける際に、大手電力会社が所有する送配電網を利用します。利用にあたっては「託送料金」と呼ばれる電線の使用料金が必要です。


 この託送料金は1kWhあたり9円前後と、一般家庭の電気代の約3〜4割という大きなウェイトを占めています。新電力から大手電力会社に支払われています。


新電力の電気の調達先は・・


 託送料金は国が認可した料金が、電気を1kWh使われるごとに課金されるため分かりやすいですが、それ以外にも大手電力会社が得られる収入があります。


 電力自由化では家庭向けに供給していない会社も含めると、550社が新電力として参入しています(2018年末時点) しかし、その中には発電所を一切持たない新電力も少なくありません。発電所を持っている新電力でも、供給量の大半を自社発電所で賄っているのは数社に限られます。


中国電力の発電所


 そうした発電能力を持たない新電力は、卸電力取引所とよばれる「市場」から電気を調達するか、あるいは発電所を持つ企業と直接契約して電気を調達する必要があります。


 「発電」が自由化されたのは1995年のことですが、今も発電量に占める大手電力会社のシェアは圧倒的です。特に卸電力取引所で取引される電力の大半は、大手電力会社が放出している「余剰電力」だと言われています。


 新電力が顧客に電気を供給するには、大手電力会社の発電所に頼る必要があるというのが現状です。




大手電力会社の決算資料から見えるもの


 続いて、大手電力会社の決算資料から現状を見てみましょう。


売上高の構成


 中部電力の平成30年(2017年)3月期の決算短信の数字を引用します。


発電 電力
ネットワーク
販売
売上高 10976億円 7447億円 26339億円
 構成比 24.5% 16.6% 58.8%
利益  383億円 553億円 381億円
 構成比 29.1% 42.0% 28.9%

 中部電力は2016年からカンパニー制を導入しており、セグメントごとの売上高と利益を公表しています。


 売上では販売カンパニー(電気やガスの小売など)が約60%と大きく、経営の屋台骨とも言えます。しかし利益で見ると4割は電力ネットワーク(送配電網の提供)が占めており、最も大きいです。



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大手電力会社の将来性は?


 では、大手電力会社に将来性はあるのか、ここまでの解説をふまえて考えてみましょう。


会社が消滅することは無い


 今後も新電力のシェアが高まっていくのは間違い無いことですが、とはいえ大手電力会社が消滅することは無いと言えます。


 送配電は日本の電力インフラを支えるため必要不可欠な存在であり続けるため、少なくとも送配電部門(送配電会社)は今後も存続することは間違いないと言えるでしょう。


とはいえ縮小トレンドは避けられない


 とはいえ現状の大手電力会社という括りで見ると、縮小トレンドは避けがたいと言えます。


 売上高の大部分を占める小売部門は、新電力との競争に晒されている以外にも、国内の電力需要の伸び悩みなど厳しい競争環境に置かれています。


電力業界は縮小トレンド


 送配電や発電で得られる売上についても、電力需要に相関して伸び悩むのは必至です。


海外展開や技術開発が今後の鍵


 大手電力会社は国内でも都市ガスなど新規の分野の展開にも力を入れています。例えば関西電力は既にガス事業で売上高の4.8%、利益の2.4%を、あるいは「eo光」や「mineo」のブランドで展開している通信事業は売上高の7.1%を稼いでいます。


 規制によって守られてきた巨大な売上を維持するほどの期待を持つことは難しいものの、これまで培ってきたノウハウや資金力を駆使して海外での発電所運営などへの参入が求められています。


 アジアやアフリカを始め、世界では電力需要が今後急速に拡大していきます。その波に上手く乗ることができるかが、今後の鍵となるでしょう。現状では海外に多数の発電所を保有する丸紅や三井物産など総合商社に大きく水を開けられています。




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