卒FITを迎えると売電価格はなぜ安くなるのか
固定価格買取制度による買取期間を終えた「卒FIT」の太陽光発電の買取価格が安すぎるという声があります。なぜ安いのか、その背景にある事情を分かりやすく解説します。
目次
卒FITを迎えると安くなる売電価格
まずは売電価格が「安い」と言える現状を解説します。
40円前後が平均9円前後に大幅ダウン
固定価格買取制度が開始した当初、2012年度に導入された太陽光発電システムは1kWhあたり40円を超える金額で10年にわたり余剰電力の買取が行われました。この買取期間が終了したものを「卒FIT」と呼びます。
一方、卒FITを迎えた太陽光発電の買取は大手電力会社だけでなく少なくない新電力会社なども参入していますが、平均的には1kWhあたり8〜10円程度と、固定価格買取制度での買取の4分の1程度の単価となっています。卒FITの買取価格については以下の記事をご参照ください。
売電価格が大幅に安くなってしまう理由
卒FITを迎えると、なぜ買取価格が大幅にダウンしてしまうのか。その背景を解説します。
元々の買取価格が高すぎる
買取価格が大幅に「ダウン」してしまう最大の理由は、元々の固定価格買取制度での買取価格が大幅に高く設定されているためです。
固定価格買取制度は再生可能エネルギーの普及を目的として導入された制度です。再エネの普及を促すため、当初の買取価格は大幅に高く設定され、その後毎年改定され引き下げられています。当初の買取価格は40円以上でしたが、2020年度は21円と半額にまで引き下げられています。
再エネ、特に太陽光発電の導入拡大には大きく貢献した固定価格買取制度ですが、余剰電力の買取の原資は国民から広く集められている再生可能エネルギー発電促進賦課金(通称「再エネ賦課金」)です。
再エネ賦課金は年々価格が引き上がり、2020年度には2.98円/kWhとなっています。一般家庭が支払う電気料金の1割以上を占めており、批判の声も高まりつつあります。
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再エネ賦課金の詳しい解説
平均9円前後が「適正価格」
各社が提示している卒FIT太陽光の買取価格の平均は、記事冒頭でも紹介したように9円/kWh前後です。この水準が、実は一つの適正な買取価格と言えます。
電力自由化で参入した多くの新電力会社が電力の調達を頼っている日本卸電力取引所というマーケットがあります。このマーケットでは発電所を持つ企業(主に大手電力)が売り手、家庭などに電力を販売する新電力などが買い手となり取引が行われています。
ここでの電力の取引価格は概ね1kWhあたり9円前後となっており、卒FIT余剰電力の買取価格はこの取引価格に準じていると言えます。
年度 | 取引価格平均 |
---|---|
2019年度 | 9.76円/kWh |
2018年度 | 9.72円/kWh |
2017年度 | 8.46円/kWh |
2016年度 | 9.78円/kWh |
ただし卒FITの余剰電力には「CO2排出量ゼロ」という「環境価値」があります。この環境価値の部分は取引の方法によっても異なりますが、1.3円/kWhで取引されています(非化石証書取引価格) 電気としての価値と、環境価値を合わせると相場は約10円/kWh程度、ということになるでしょう。
もっとも、買取を行う企業は、様々な事務経費も別途掛かるため10円/kWhで買取を行うと利益を出すことは困難と言えます。10円を超す買取価格を提示している企業もありますが、多くは電気の販売(買電)とセット契約としていたり、あるいは蓄電池などとの抱き合わせ販売を行うことで利益を確保しています。
卒FIT後の余剰電力をお得に使うには
では、売電価格が大幅に下がってしまう中で何をすればいいのか、卒FITを迎える太陽光発電を所有している人に向けて有意義なアドバイスを贈ります。
売電せず自宅で使うのが圧倒的にお得
一般家庭が電力会社から購入する電力の平均価格は約27円/kWhとされています。卒FITの売電価格と比較して約3倍です。
つまり卒FIT後は余剰電力を売電するよりも、自宅で電気を消費した方が圧倒的にお得です。これまでは売電価格が買電価格を大幅に上回っていたため、1kWhでも多く売電した方がお得でしたが、卒FITを迎えると逆転します。
天気予報を見て、余剰電力が発生する時間帯に家事をしたり、充電をするなどの工夫が効果的です。
蓄電池は元を取れない
卒FIT関連ビジネスとして家庭用蓄電池が注目を集めていますが、2020年時点の日本の一般家庭で蓄電池を設置して経済的に「元を取る」ことは基本的に不可能です。
蓄電池を設置することで余剰電力を蓄電池に貯め、太陽光発電が発電できない夜間などに消費することが可能です。しかし、蓄電池の設置費用が現状では非常に高額であるため、設置しても元を取ることは出来ません。蓄電池は価格がどんどん下がっているため、そう遠くない将来には元を取れるようになるでしょう。
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