卒FIT後の「余剰電力」に期待される役割とは

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卒FITは「終わり」ではない、スタートだ。


 卒FIT(FIT切れ)で大きく下落する売電価格。太陽光発電を設置している人にとってはため息が出る話ですが、社会的に見ると卒FITの余剰電力には大きな役割が期待されています。どんな活用方法があるのか、具体的に紹介します。



再生可能エネルギーの普及に一役買う


 卒FITしたからといって発電量が増えたり減ったりするわけではありませんが、卒FITの余剰電力が増えることで「再エネ」の普及が進むという側面があります。


再エネであって再エネでなかった太陽光発電


 これまで固定価格買取制度(FIT)を利用して売電されていた太陽光発電の電力は、再生可能エネルギーであって再生可能エネルギーではないという複雑な状況がありました。


 ほとんどの人が「太陽光発電なんだから再エネでしょ?」と考えると思いますが、実はその裏には複雑で分かりづらい仕組みがあります。


再エネであって再エネでないFIT電気


「環境価値」という分かりにくい制度


 日本で固定価格買取制度を導入する際に、再エネで作られた電気に対して電気としての価値に加えて「環境価値」という書類上の価値をつくることにしました。


 環境価値というのは、分かりやすく言うと電気が「再エネだよ!」と名乗ることを認めるかどうか判断するための基準です。


 「環境価値」はそれ自体がグリーン電力証書などの形で取引されており、例えば実際には火力発電の電気を使っていても、グリーン電力証書などを購入すれば火力発電の電気であっても「再生可能エネルギー」「CO2排出量ゼロ」を名乗ることが出来る、という仕組みです。


再エネ電気(FIT電気)の環境価値とは


 逆に、固定価格買取制度(FIT)で買い取られた電気自体は再生可能エネルギーで発電されていますが、環境価値を切り離されているため、「再エネ」とか「CO2排出量ゼロ」を名乗ることが認められていません。実際はその辺りがかなり有耶無耶になっているというのが実情ですが・・


 FITで買い取られた電気は、国民全体から集められた再生可能エネルギー発電賦課金によって高値で買い取られているため、その高値で買い取った分の価値を認めよう、という理屈です。環境価値を売却することで、少しでも国民負担を減らすための努力が行われています。


卒FITで再エネ電気を調達しやすくなる


 それに対し、卒FITの電気には電気としての価値に加えて、環境価値も認められています。卒FITの電気を調達することで、「正真正銘の再生可能エネルギー」を名乗ることが可能です。


 例えば、自社で使う電力の100%を再エネで調達する「RE100」という運動に参加する企業が増えていますが、卒FITの電気は再生可能エネルギーとしてみなされるため、RE100に参加する企業も注目しています。


 例えば積水ハウスでは、自社で建てた住宅から卒FITの余剰電力を高値で買い取り、積水ハウスグループの企業で使用することで「RE100」を達成しようとしています。


 これまでも太陽光発電の自家消費や、グリーン電力証書やJ-クレジットなどを購入することでRE100の達成が可能でしたが、選択肢が増えることでより参加しやすくなると期待されています。


RE100の主な参加企業

イオン
丸井グループ
コープさっぽろ

積水ハウス
大和ハウス工業
大東建託
戸田建設
IT Microsoft
Apple
Google
Facebook

BMW
ソニー
リコー
富士通
コニカミノルタ

新電力の経営安定化にも貢献する


 電力自由化を機に500社以上が電力事業に参入していますが、その4割以上が赤字だと言われています。その原因の一つに、新電力が電気の調達を頼っている「卸電力取引所」の取引価格が乱高下することが指摘されています。


 電気は需要量が1日・1年の中で大きく変動します。それに伴い、市場での取引価格も乱高下を繰り返します。


2016年度の電気の市場価格の推移

2016年度の電気の市場価格の推移

 それに対し電気の販売価格(ユーザーが支払う電気代)は変動が無いプランが主流で、家庭向けでは平均27円/kWh程度です。地域や季節によっては取引価格が50円や時には100円を超えることもあり、新電力の赤字の原因となっています。


 今後「市場価格連動」の卒FIT電気買い取りサービスも登場するかもしれませんが、多くの買取サービスは時間帯や季節に関係無く一定額で買い取りを行います。市場価格に翻弄される新電力にとっては、安定的に調達する手段としての活用も期待されます。


 せっかく電力自由化しても、新電力が次々に倒産したりあるいは買収されて寡占や独占が進むことで、電気料金が高くなる恐れもあります。卒FITの余剰電力が中小の新電力の助け舟となることは、日本の社会全体の利益にも繋がります。




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