卒FITで蓄電池を導入すると「大損」するワケ

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卒FIT対策に蓄電池は「損」


 太陽光発電の固定価格買取が終了した「卒FIT」の世帯に蓄電池の導入を促そうという動きがあります。しかし、経済性を考えると明らかに「損」であることを指摘する声はあまり大きくありません。この記事ではそうした蓄電池の問題点を、経済性の面から指摘します。



卒FITで蓄電池が注目されているが・・


 まずは蓄電池が注目を集めている現状を紹介します。


経産省も選択肢の一つとして示す


 卒FITへの対応策として、経産省(資源エネルギー庁)も蓄電池の導入を選択肢の一つとして示しています。


経産省の「どうする?ソーラー」より

経産省の「どうする?ソーラー」より

 こちらは資源エネルギー庁が公開している「どうする?ソーラー」という卒FIT世帯向けの情報を提供しているサイトの掲載内容です。余剰電力の売電とあわせて、蓄電池や電気自動車の導入を提案しています。


蓄電池で「元を取る」のは困難です


 経産省も提案している蓄電池の導入ですが、現状では「元を取る」のは困難といえる状況があります。


高すぎる導入費用


 家庭向けの平均的な容量の蓄電池の導入にいくら掛かるかご存知でしょうか。補助金を差し引いても数百万円の費用が掛かります。


 また、蓄電池はスマホのバッテリーと同じように寿命があります。リチウムイオンの蓄電池の場合、5〜10年程度が寿命と言われています。充電出来る容量はどんどん低下します。


 100万円で設置したものが10年使えるとして、1年あたり10万円、1ヶ月あたりで8333円の費用が掛かる計算です(これでもかなり安い見積もり)


家庭用蓄電池


卒FITとはいえ採算は取れない


 卒FIT後の余剰電力の買い取り価格は平均で9円/kWh程度。それに対し電気を電力会社から購入する価格は27円程度なので、差額は18円です。売電を減らして蓄電池などを活用して「自家消費」を増やすことで、18円/kWhの経済的メリットがあります。


卒FIT後の余剰電力買取価格と電気代の比較

卒FIT後の余剰電力買取価格と電気代の比較

 では月8333円の設置費用を費やした蓄電池をどう使えば「元が取れる」のかというと、毎月463kWhを売電せずに自家消費に回すことが出来れば、投資を回収できます。


 月463kWhというと、一般的な住宅のソーラーパネルの発電量よりも多いですし、また一般家庭の電気の使用量(戸建てで約400kWh)よりも多いです。したがって、細かな試算をする以前に、元を取ることは物理的に不可能であることが明白です。


卒FIT後の蓄電池導入コストの試算

必要量で比べると一目瞭然

 卒FITする前は自宅で使わずに1kWhでも多く売電した方が「お得」でした。また、卒FIT後の買い取り価格が電力会社から買う電気を比べて半額以下である点をふまえても、蓄電池の経済性は以前と比べて格段に高まってはいますが、それでも採算が取れる水準ではないと言えます。


採算が取れる価格は?


 では、蓄電池の価格がいくらまで下がれば、蓄電池で「元が取れる」のでしょうか。


 三菱総研が2017年に報告した「ソーラーシンギュラリティの影響度等に関する調査」によれば、蓄電池の価格が9万円/kWhを下回れば、卒FITを迎えた太陽光発電を設置している住宅で蓄電池に経済的メリットが発生します。


 現状で日本メーカーの蓄電池は15万円以上(平均は18.8万円との話も)ですが、2020年春に日本国内での発売が予定されているテスラ社のPowerwallも工事費込で11万円/kWh前後という価格なので、まだまだ「採算ライン」には遠いと言えます。


テスラの電気自動車

電気自動車で知られるテスラは蓄電池にも参入

経済性以外のメリットはある


 経済的メリットが無い蓄電池ですが、それ以外のメリットはあります。


停電・災害対策として


 災害などによって発生する大規模停電。今後は日本でも老朽化した火力発電所の廃止が進み、「電力不足」による停電の発生も一部で懸念が高まっています。


 太陽光発電があれば停電時でも昼間であれば電気を使うことが出来ますが、蓄電池を導入することで太陽が出ていない夜間にも電気を使える可能性があります。


環境対策として


 日本の電力会社から購入する電気は、発電時に約500g/kWhのCO2を排出しています。それに対し、自宅の太陽光発電でつくられた電気はCO2排出量がゼロです。蓄電池を設置することで、電力会社から購入する電気の量を減らすことが出来るため、自宅のCO2排出量を減らすことが出来ます。


蓄電池は出力制御の抑制にも貢献する


 また、昨今は太陽光発電が「増えすぎた」ことが問題となっています。メガソーラー発電所でつくられた電気を送電線に流さず捨ててしまう措置が、季節によっては毎週末行われています(「出力制御」)


 自宅に蓄電池を設置する人が増えることで、こうした問題が緩和され、社会全体で太陽光発電を有効活用できるようになります。


これらのメリットにいくら払えますか?


 停電時の活用や、自宅の環境負荷を減らすというメリットに対して「いくら払えるのか」というのをよく考えた上で、蓄電池の導入を検討することをおすすめします。決して元を取ることは出来ず、1ヶ月あたり数千円以上のコストが掛かることを念頭にいれて検討しましょう。


 家庭用蓄電池の一括見積りサイトを紹介しておきます。



 太陽光パネルの場合、同じメーカーの製品でも購入する代理店によって「1.5倍程度の価格差が生じている」と経産省傘下の太陽光発電競争力強化研究会が2016年に公表しています。また、三菱総合研究所の調べによると、蓄電池の販売価格の46%が卸売業者などに払う「流通費」とのことなので、同じ製品でも購入する業者によって価格が大きく異る可能性があります。




どうするのが一番お得なの?


 蓄電池を設置するのが「お得ではない」のであれば、どうすればいいのか。解決策を紹介して終わります。


売電するのがお得です


 卒FITで固定価格買取制度による買い取りが終了した後も、余剰電力を買い取ってくれる業者はあります。平均で9円/kWhととても安いですが、この買い取り価格を考慮しても蓄電池を設置するよりも「お得」なので、大人しく売電した方がお得です。
 出来る努力と言えば、少しでも高く買い取ってくれる業者と契約することでしょうか。


 また、電気を電力会社から購入すると平均27円/kWh程度の費用が掛かります。自宅で発電している時間帯の電気の使用量を増やす(自家消費)ことでも、経済性を高めることが出来ます。具体的な方法は以下の記事で紹介しています。


悪徳業者にご注意



 こうしたセールスは基本的に嘘です。特に1つ目の話は10000パーセント嘘です。
 また、これまで詳しく解説してきたように、蓄電池を導入しても元を取ることは難しいです。くれぐれも悪徳業者に騙されぬようご注意ください。


 買取メニューは以下の記事で地域別に一覧表で比較できます。


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