蓄電池を導入すればCO2を削減できるのは事実と言えるのか
蓄電池の販売の現場でよく聞かれる「蓄電池を導入すればCO2排出量を削減出来る」というセールストークには、嘘と事実が混在しています。以下、数字を交えながら分かりやすく解説します。
目次
蓄電池にまつわるセールストーク
まずは蓄電池の販売の現場でよく聞かれるセールストークを紹介します。
蓄電池で自家消費が増えればCO2を削減できる
少なくない販売業者が、蓄電池のセールストークとして「CO2削減効果」を謳っています。
理屈としては、蓄電池を導入することでこれまで余剰電力として売電していた太陽光発電でつくられた電力を「自家消費」することが出来るため、CO2排出量を削減出来るという理屈です。
蓄電池のCO2排出量削減効果の「嘘」と「事実」
このセールストークに隠された嘘と、事実を解き明かしていきます。
「自家消費が増える」ことに意味があるのか
太陽光発電を設置している場合、蓄電池をあわせて導入することで余剰電力の売電が減り、「自家消費」が増えることは言うまでもなく事実です。そして、CO2排出量ゼロで生み出された太陽光発電由来の電力使用が増えることで、自宅のCO2排出量が減ることもまた事実と言えます。
ですがここで一つの問題があります。
余剰電力として売電された太陽光発電の電力は、他の誰かが消費しているという点です。他の誰かが消費しようが、自家消費として自宅で自分で消費しようが、日本の電力システムの中での太陽光発電由来の電力の総量は変わりません。
蓄電池を導入しても社会全体でのCO2排出量に影響は無い、と言えます。もっとも、数字としてCO2排出量の削減を求められる企業などでは、自家消費を増やし自社の排出量の数字を低減することは意味のある行動といえますが、果たして一般家庭では意味がある行動と言えるのか、という点には疑問が残ります。
製造時に発生する大量のCO2
見逃せない点として、蓄電池の製造あるいは廃棄には大量のCO2発生を伴う点です。
ICCT(国際クリーン交通委員会)が電気自動車についてまとめた資料によると、電気自動車用のバッテリー(家庭用蓄電池と原理は同じ)の製造に容量1kWhあたり56〜494KgのCO2が発生するとされています。例えば1kWhあたり200Kgとした場合、7kWhの家庭用蓄電池を製造するにあたって1.4トンのCO2が発生します。
ちなみに、東京電力エナジーパートナーの電力は1kWhあたり455gのCO2を排出してつくられています。蓄電池の製造に伴い発生する1.4トンのCO2は3076kWh分に相当します。一般家庭の10ヶ月分の電力消費量です。
CO2排出量を削減する側面もある
一方で、蓄電池には社会全体のCO2を削減する効果も確かに期待できます。
九州地方では、太陽光発電による発電量が「増えすぎた」ことにより、せっかく発電した電力を捨ててしまう「出力制御」という措置が実施されています。供給が需要を上回り、大規模停電が発生するのを防ぐために行われている対応です。
出力制御は電力需要が減少する春や秋の昼間に頻繁に実施されており、せっかくのCO2フリーの電力が無駄になっています。一方、太陽光発電が発電できない夜間は火力発電による発電が行われているのも事実です。
蓄電池の導入が増えることで、このような出力制御が行われるタイミングで電気を貯め、夜間に放電することで火力発電所の稼働を抑え、結果として社会全体でのCO2排出量の削減を実現出来る可能性もあります。
出力制御は現在は九州でさかんに実施されていますが、将来的には全国で実施される見通しです。
したがって、結論としては蓄電池の導入は「CO2を削減する効果がある」と言えますが、自家消費云々という問題はそれほど重要ではないと言えます。
費用ゼロでCO2排出量は減らせる
蓄電池の導入には高額な費用が発生しますが、費用負担なしに家庭のCO2を削減することも可能です。
昨今、「CO2排出量ゼロ」の電力を供給するプランが続々と登場しており、そうしたプランを契約することで電力会社から購入する電力についても「CO2排出ゼロ」を実現できます。このようなプランを選んでお金を払うことで、再エネ電源が増える効果が期待できます。
ネットで申し込むだけで工事などは不要、費用なども掛かりません。電気代も大手電力の一般的なプランと同等額としているものや、安くなるプランもあります。詳細は以下の記事で。
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