そもそも「新電力」とは何なのか。
電力自由化で誕生した「新電力」 この言葉が一体何を意味するのか、制度上の位置づけをもとにその仕組みを分かりやすく解説します。
目次
新電力とは?
まずは言葉としての定義から紹介します。
経済産業省の定義
電力事業を所管する経済産業省のサイトでは、新電力の言葉の定義として以下のような説明がされています。
新規参入の小売電気事業者(2016年(平成28年)3月末までの一般電気事業者以外の小売電気事業者)を指しています。
引用元:よくあるご質問と回答集(経産省 電力・ガス取引監視等委員会)
電気を売るには「小売電気事業者」として経産省に登録申請する必要がありますが、この登録を受けている会社の中で「一般電気事業者」を除く会社のことを新電力と言う、という説明がなされています。
ちなみに、一般電気事業者とは東電や関電などの従来からあった大手電力会社のことです。現在は制度が変わっているため「旧一般電気事業者」と呼ばれています。
言葉の使われ方の傾向
「新電力」(「PPS」とも)という言葉の定義は上で説明した通りですが、メディアなどでの慣用的な使われ方はもう少し別のニュアンスを含んだ言葉として使われることが少なくないです。
日本では2000年から段階的に法律が改正され、「電力自由化」が進んできました。
当初は特別高圧と呼ばれる、大規模な工場やビルなどに供給する電気のみの自由化でしたが、2004年にはもう少し規模の小さな工場などに供給される高圧電力が自由化されました。
そして2016年に、一般家庭を含む「低圧」の電気の供給も自由化されたわけですが、そうした背景があるため「新電力」という言葉には、工場などに電気を供給する会社というニュアンスを含む場合がある、ということを私は感じます。
もっとも、2016年の完全自由化から時間が経つにつれて、今後は一般家庭に電気を供給する会社についても、「新電力」という言葉の定義に包摂される機会が増えていくでしょう。
新電力の仕組み
続いて、新電力の仕組みを解説します。
どんな会社が参入しているのか
小売電気事業者は2018年9月時点で507社。中には一般家庭には供給せず企業のみを相手にしている会社や、そもそもまだ電気を供給するに至っていない会社もありますが、これだけ多くの「電力会社」が存在します。
その内訳は様々ですが、ガス会社(プロパンガスを含む)や携帯電話を含む通信会社が目立ちます。また、変わりどころとしては鉄道会社や旅行代理店を設立母体とするもの、自治体が出資しているものなど、多業種が入り乱れているという状況です。
中には新電力の運営をサポートするサービスに後押しされながら、社員数名で運営している「新電力」もあります。
供給する電気の調達方法
新電力の全てが自社の発電所を持っているわけではありません。むしろ、発電所を全く持たない会社の方が多いです。
供給する電気については、自社の発電所から調達する他に、自家発電を持つ会社(製鉄会社や大規模工場など)と直接契約したり、卸電力取引所というマーケットから調達するなどしています。
電気をどのように届けるのか
新電力は契約先まで電気を届ける「総配電網」(電線など)を持っていません。
総配電網については、全て「一般送配電会社」と呼ばれる各地域に1社ずつある総配電網を独占している会社にお金を払って使わせてもらう仕組みになっています。
「一般送配電会社」については、現在は東電や関電などの大手電力会社とほぼ同義ですが、2020年に「発送電分離」という制度改正が行われると、仕組みがガラリと変わります。
これまで大手電力会社(一般電気事業者)は発電・送配電・小売の3つの部門を抱えていましたが、この制度改正により発電や小売の会社が送配電をすることが出来なくなります。送配電部門が別の会社として独立することになります。
よくある勘違い・誤解
最後に、よくある誤解や勘違いを紹介します。
再エネ業者との混同
「固定価格買取制度」を利用して再生可能エネルギー(主に太陽光発電)で電気を作っている会社のことを「新電力」と呼んでいる事例をSNSなどで時たま目にします。
一部の新電力が自社で太陽光発電所など再エネの発電を行っている例はありますが、本来の言葉の定義として両者は別のものです。
再エネ事業者の中でも規模の大きいものは「発電事業者」として経産省に登録する必要がありますが、これは新電力に課せられている「小売電気事業者」の登録とは異なるものです。
したがって、両者は別々のものです。
新電力には供給責任が無い
新電力への批判として、SNSでよく聞かれる話です。
電気は貯めておくことが難しく、また需要と供給を常に一致させていないと周波数の変動や最悪の場合「停電」を引き起こします。
新電力に対しては「同時同量」といって、新電力の契約者が使う量(需要)と新電力が送電網に流す量(供給)を30分単位で一致される義務を課しています。供給の方が多かった場合は送配電会社が無料で電気を引き受け、不足していた場合はペナルティが発生します。
「供給責任」という言葉の定義が難しいところですが、一定の義務と責任を負わされているというわけです。
現状では最終的な責任を旧一般電気事業者が負っていますが、2020年の発送電分離後は一般送配電事業者がその責任を一手に負うことになります。
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