新電力は電気をどこから調達しているの?
新電力会社の電気はどこからやってくるのか。そうした疑問を持つ人は少なくありません。政府の調査データを交えながら、新電力の「調達先」を分かりやすく解説します。
目次
自社発電所を持たない新電力会社が多い事実
電力自由化では600社を超える新電力会社が参入していますが、実はその多くは自社発電所を全く持っていません。自社発電所を保有している一部の新電力についても、供給している電力の多くを自社発電所でまかないきれているところは皆無と言ってもよいでしょう。
では、そんな新電力会社はどこから電気を仕入れているのか。その秘密を詳しく解説していきます。
新電力会社の主な調達先
新電力会社の電気の調達先を紹介します。
卸電力取引所(市場調達)
電気は「日本卸電力取引所」という市場(マーケット)で日々売買されています。株式や外国為替などをイメージすると分かりやすいでしょう。
卸電力取引所では、発電所を持つ企業が売り手となって市場に電気を売り出し、新電力や大手電力会社などが買い手となって取引が成立しています。1日を30分単位に区切った枠で価格が決まり、例えば16:00〜16:30を1kWhあたり10円といった形で取引が行われています。
なお、卸電力取引所で売りに出た電力の87%が大手電力会社からのものでした(2018年1〜3月)
取引される電力の量は、電力自由化の進展と相まって年々増加を続けていますが、タイミングによっては取引価格が暴騰することもあり、新電力会社の経営の悩みの種となっています。多くの新電力は仕入れ価格変動リスクを自社で負っていますが、市場価格連動型料金プランといって、市場価格に連動する料金プランを提供している新電力もあります(価格変動リスクは顧客が負う)
発電所を持つ会社と直接契約
発電所を持つ企業と直接契約して、電気を仕入れている新電力会社もあります。
日本では大手電力会社の他にも、石油会社や製鉄会社、製紙会社などが発電所を保有しています。そうした発電所と一対一で契約をして電気を仕入れます。
仕入先まで公表している新電力会社は稀ですが、電気の調達先を尋ねると「火力発電所を持つ企業と直接契約しています」などと答えてくれる新電力会社もあります(エルピオでんきなどがそうだった)
また、Looopでんきや東急でんきのように大手電力会社と資本提携する新電力会社も増えていますが、そうした企業は大手電力会社から電力の一部を調達しているとみられます。提携の目的としても、電力の調達の安定化を公言しているところがあります。
卸電力取引所からの調達と比べて、仕入れ価格を安定させやすいなどのメリットがあります。
自社発電所で発電
自社で発電所を保有している新電力会社もあります。
例えば東京ガスは東京湾周辺にLNG火力発電所を多数保有しており、供給する電力の8割程度をまかなっています。ガス会社はガスを燃料とする発電所、ENEOSのような石油会社は石油を燃料とする火力発電所を保有しています。
また、太陽光や風力発電など再生可能エネルギーの発電所を自社で開発し、そこで発電した電力を供給しているところも多いです。ただし、再生可能エネルギーは発電量が少ないため供給する電力の多くをまかなえるわけではありません。
バランシンググループ
利用する新電力会社が年々増えている調達方法です。複数の新電力会社が加入して、グループで電気の調達を行います。
特に規模が小さな新電力の場合、需要の変動率が大きくなりがちなので、調達する量を需要にあわせるのが難しいという問題があります。複数の新電力が集まることで、例えば顧客基盤が異なれば需要の変動がなだらかになるメリットや、調達をする際の交渉力が高まるなどのメリットがあります。
バランシンググループ自体は卸電力取引所や、発電所を持つ企業と契約して電気を調達しています。
大手電力会社から供給(常時バックアップ)
専門用語では「常時バックアップ」と言います。新電力の需要の一定量を、大手電力から調達できる仕組みです。
新電力会社は発電所を持っていないことや、卸電力取引所の取引量が充分でないことから設けられている制度です。環境が整えば、将来的には無くなる可能性があります。
インバランス
新電力会社は自社顧客の「需要」と、「供給」(調達する量)を合わせる義務を負っています。その義務を果たせなかった時には、送電網を管理する会社が代わって需要と供給を一致させますが、それをインバランスと言います。
例えば1000kWhの需要があったのに800kWhしか調達・供給しなかった場合は、差の200kWhがインバランスとなります。
インバランスが発生すると、後で料金を精算する必要があります。その際の価格は日本卸電力取引所の取引価格に連動して変動します。ペナルティ的な要素があるので、市場価格よりも割高になります。
逆に需要よりも多く調達した場合は、割安な価格で買い取りが行われます。需要を正しく予測できない新電力はインバランスを多く発生することになり、経営を圧迫します。
調達方法で多いのはどれ?
電力・ガス取引等監視委員会の資料(平成30年6月19日)によると、新電力の電力調達先としては卸電力取引所からの調達が36.9%、常時バックアップによる調達が14.7%となっています。残りは自社発電所や相対取引などです。
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