新電力会社の電気料金はなぜ安いのか
新電力会社の電気代はなぜ大手電力会社と比べて安いのか、その理由を実際の数字や具体例を示しながら詳しく解説します。
目次
利益を圧縮している
新電力会社の電気料金が安い理由として、利益を削っていると言える部分があります。大手電力会社の料金プランと比較しながら、そう言える理由を説明します。
大手電力会社の収益構造を見てみよう
大手電力会社は「3段階制料金プラン」といって、電気の使用量が増えるごとに電気料金の単価が高くなる料金体系を取っています。これはオイルショックを機に、省エネを促すために導入された仕組みです。
3段階制料金プランでは、1段階目の料金単価は非常に安く抑えられています。1段階目の料金単価の水準では、大手電力会社も新電力会社も利益を出すのが難しいです。
使用量 | 東京電力 料金単価 |
東京ガス 料金単価 |
---|---|---|
1〜120kWh | 19.88円/kWh | 19.49円/kWh |
121〜300 | 26.48円/kWh | 24.89円/kWh |
301〜 | 30.57円/kWh | 26.99円/kWh |
日本の新電力会社は卸電力取引所というところで電気を調達しているところが多いですが、ここでの取引価格は平均9円/kWh前後です。また、家庭まで電気を送電するための費用である「託送料金」もやはり9円程度掛かります。これら2つの主な原価だけで、1段階目の料金単価とほぼ同額となります。
一方、2段階目・3段階目の料金単価はそれらの原価よりも大幅に高く設定されており、特に3段階目の料金単価は大手電力会社が多くの利益を上げる源泉となっています。
新電力会社の料金プランの特徴
では、新電力会社の料金プランはというと、大手電力会社と同様に3段階制料金プランを採用しているところを見ると分かりやすいですが、2・3段階目の料金単価を大手電力と比べて割安に設定しているところが多いです。
他方、1段階目の料金単価は大手電力と同等あるいは2・3段階目よりも割引率を小さくしているところが多いです。つまり、儲かるお客さんに割り引いてサービスを提供しているというわけです。
逆に、儲からないお客さんの代表格である「一人暮らし世帯」では、大手電力会社よりも割高になる料金プランを提示している新電力会社も少なくありません。
使用量 | 東京電力 料金単価 |
Looopでんき 料金単価 |
---|---|---|
1〜120kWh | 19.88円/kWh | 26.40円/kWh |
121〜300 | 26.48円/kWh | 26.40円/kWh |
301〜 | 30.57円/kWh | 26.40円/kWh |
経費を削減している
新電力会社は、大手電力会社よりもコストを削減して運営しているところが多いです。
社員数名という新電力会社もある
新電力会社の中には、社員数名で新電力事業を運営しているところも珍しくありません。顧客数が1万件を超えるとみられる某新電力会社も、社員わずか20名ほどで運営しているという話を聞きます。
少ない人員で対応出来るように、コールセンター業務を外注したりITシステムを活用することで効率化を図っています。
また、大手電力会社には「高給取り」というイメージがあると思いますが、大手10社は概ね平均年収が700万円を超えています。例えば東京電力は802万円(44.9歳)に対し、最大の競争相手である東京ガスは636万円(43.6歳)というデータもあります。
人件費の水準が低い上に、少ない人員で運営されていることで人件費の総額が少ないのが新電力の特徴と言えます。
支払方法を限定することでコスト削減
大手電力会社ではクレジットカード払い、口座振替、コンビニ払いなど様々な決済方法を用意しています。それに対し新電力会社では、クレジットカード払いのみというところも少なくありません。また、コンビニ払いに関してはそもそも対応していないか、対応していても1回数百円の手数料を取るところがほとんどです。
例えばコンビニ払いの場合、払込票を郵送する切手代だけでも80円以上掛かります。また、電力会社からコンビニに支払う決済手数料も1件あたり50円以上掛かるといわれており、発送に掛かる人件費なども含めると数百円のコストが掛かります。新電力はそのコストを無くすことで経費削減を図っています。
検針票を発行しない
ほとんどの新電力会社は、紙の検針票を発行せず、ウェブのユーザーページから請求額などを確認する仕組みを導入しています。紙の検針票や請求書の発行には100円程度の手数料を取るところが多いです(ガス会社は電気の検針票を発行するところが多い)
ちなみに、請求書の発送代行サービスは1通150円以上が相場です。電気代は世帯あたり平均で月1万円なので、検針票を発行しないだけで1.5%分のコスト削減になります。
なお、大手電力会社でも自由化向けのプランでは検針票の発行が有料・ウェブから確認するようになっているところが多いです。
大手電力会社と変わらないコストも
電気を家庭まで届けるための費用である「託送料金」は、新電力会社・大手電力会社に限らずどの会社でも全く同額の費用が掛かります。
新電力会社は送電網にタダ乗りしているという話が稀に聞かれますが、大手電力会社とコストは全く同じです(大手電力の場合、社内で費用を精算している) そのおかげで停電のリスクはどの会社と契約しても同じですし、災害時の復旧でも差別されることはありません。
他サービスとの相乗効果を狙っている
電力自由化で多くの顧客を獲得しているのは、ガス会社や通信会社などです。それらの企業は、既存サービスと電力との相乗効果を狙って参入しているところが多いです。
既存サービスとセット契約してもらうことで、既存サービスの解約率が下がるなどの効果があると言われています。特に通信会社などはそうした効果を狙って電力に参入しているとみられます。
また、楽天のように生活基盤のあらゆるものを「楽天経済圏」として手掛けることで、顧客基盤を強化しようとしている企業もあります。そうした企業は、必ずしも電気で利益を上げる必要が無いとも言えます。
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