AGエナジーの概要
運営会社 | AG Energy | 電力調達 | 不明 |
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供給エリア | 沖縄・離島除く全国 | 契約条件 | 特に無し |
目次
AGエナジーの特徴
- 2020年3月に撤退を表明、その後破産へ
- 新電力としてはやや割高な料金水準
AGエナジーは不動産事業などを手掛けるAbsolute Global Assets社の子会社の新電力です。2017年に設立され、2019年11月には約1300世帯相当分の電力を販売した実績がある小規模な新電力です。
2020年3月には経産省から再エネ賦課金の未納が公表、その後「事業終了」を表明、またその直後には破産手続き開始に至りました。これまでの経緯や、契約者が取るべき対処方法を解説します。
撤退を表明、その後「破産」へ
2020年3月に新電力事業の「終了」を表明、その後4月に「破産手続開始」となりました。経緯や契約者の対処方法を紹介します。
新電力事業の「終了」を表明
AGエナジーを運営するAG Energy社は、破産する直前の2020年3月23日に小売電気事業の終了を表明していました。
いつもAGエナジーをご利用頂きありがとうございます。
当社は、2017年8月より電気の供給を開始し、皆様のお役に立つように努めて参りましたが、諸般の事情から事業の継続が難しくなり、この度、小売電気事業を終了することとさせていただきます。
皆様のご期待に応えることができず、大変申し訳ありません。引用元:小売電気事業終了のお知らせ(AGエナジー)
その後、3月26日に東京地裁より破産手続き開始決定を受け、倒産するに至りました。4月1日に経緯が同社公式サイト上にて公開されました。
なぜ撤退に至ったのか
撤退の理由は「諸般の事情」としか明かされていませんが、背景には経営の行き詰まりがあると考えられます。
資源エネルギー庁の統計によれば、AGエナジーは2019年11月に約1300世帯相当の低圧電力を販売していることが分かります。業務用の高圧電力も含めた販売量は、全新電力の中でも340位と、販売実績がある467社の中でも下位に位置しており、2017年8月の参入から3年が経過していることをふまえると顧客獲得に苦戦していたと言えます。月間の売上は1000万円台でしょうか。
また、詳細は記事後半で解説していますが、2020年3月11日には再エネ賦課金を納付していないとして経産省からAG Energyの社名が公表されています。
再エネ賦課金という「支払うべき」費用の支払いが遅れていた点をふまえても、経営が行き詰まっていたことが見て取れます。
契約者は何をすべきか
AG Energy社との契約は3月31日をもって終了しており、そのまま何もしないと停電に至ります。直ちに電力会社を他社に変更する必要があります。
送電が停止するタイムリミットについては、各地域の大手電力会社から届く「供給停止予定日」を確認してください。その期限までに必ず切り替えを完了させてください。
他社に変更するにあたって、「供給地点特定番号」とAGエナジーの「お客様番号」が必要となります。いずれもAGエナジーのマイページに記載されているとのことなので、まずはこちらを参照してください。
大手電力会社の「従量電灯」プランへの切り替えがおすすめ
当サイトとしては、大手電力会社の標準的なプランである「従量電灯」プランへの切り替えを強く推奨します。新電力への切り替えは時間が掛かる場合もあるので、切り替えが早く完了する大手電力の従量電灯プランが「安全」です。
AGエナジーよりも大手電力の従量電灯プランの方が電気代は高くなります(詳しくは記事後半の乗り換えでいくらお得になる?を参照)が、契約にあたって事務手数料などは掛かりませんし、また短期間で他の新電力などに切り替えても違約金なども発生しません。まずは大手電力会社の従量電灯プランへ切り替えてください。
なお、AG Energyの破産管財人から業務を委託されているダイレクトパワーはAGエナジーのこれまでのプランと「同額」のプランをAGエナジー契約者向けに提供していますが、これを特に推奨する理由はありません。
また、ダイレクトパワーの通常の料金プランは市場価格連動型という特殊な料金プランで、電気代がかえって大幅に割高となるリスクがあります。当サイトではこのようなプランの契約は推奨しません。
料金プランとサービスの解説
乗り換えでいくらお得になる?
乗り換えで、電気料金がどれくらい安くなるのでしょうか。
世帯人数別に、平均的な電気使用量のご家庭をシミュレーションしました。
お得率と年間節約額 | 20A / 月170kWh |
30A / 月348kWh |
40A / 月391kWh |
50A / 月437kWh |
東京電力エリア 従量電灯B |
-0.9% -444円 |
-2.0% -2260円 |
-2.7% -3525円 |
-3.2% -4877円 |
北海道から九州まで対応していますが、いずれの地域でも東京電力エリアと同程度の料金設定となっています。他地域については料金シミュレーションで確認できます。
使用量が少ない場合でも大手電力会社の標準的なプランと比較して割高にはならない料金設定です。料金水準は新電力としては「やや割高」といえるもので、料金削減メリットは小さいと言えます。
なお、ダイレクトパワーがAGエナジー契約者向けに、AGエナジーと同じ料金単価のプランを提供しています。
解約時の違約金は?
2年未満の解約で2千円の違約金が発生します。
事業終了に伴う転出では違約金などは徴収しない旨のアナウンスがされています。
支払い方法は?
クレジットカード払いに対応しています。
AGエナジーの評価
キャッシュレス消費者還元事業の対象
AGエナジーは政府が実施している「キャッシュレス消費者還元事業」の対象となっているので、対応しているクレジットカード・デビットカードで電気代を支払うと5%分のキャッシュバックを受けることが出来ます(2020年6月まで実施)
この5%分は当サイトの試算には含めていません。キャッシュバック分を含めると、新電力としては「お得な」料金プランと言えます。
経産省から公表された情報(2020年3月)
2020年3月に、経産省からAG Energyについて公表された情報があります。
経済産業省は、再生可能エネルギー特別措置法第34条第3項の規定に基づき、費用負担調整機関から、納付金(電気の使用者から支払われた賦課金)を期限までに納付せずに督促を受けた電気事業者が、督促状により指定された期限(令和2年3月10日)までに納付金を納付しない旨の通知を受けたため、同条第4項の規定に基づき、当該電気事業者を公表します。
日本では電気を使うと、1kWhごとに再エネ賦課金を負担する必要があります。利用者が支払い、電力会社(新電力)が納付する形を取っています。
AG Energyは、この再エネ賦課金の納付を行っていないと公表されました。支払うべき費用が支払われていないことを意味します。
これまでにも再エネ賦課金の納付を行なわないとして「公表」された新電力は何社もありますが、その後倒産や撤退に至ったものが少なくありません。AG Energyと共に「未納」を公表されたあくびコミュニケーションズは2020年2月末に破産に向けた手続きを開始しています。
経緯を同社に尋ねたところ「早急に対応しており、今後もお客様への電力供給を変わりなく続けてまいります。」との回答を得られました(2020年3月13日) 資金繰りの問題なのか、それとも事務的なミスによる問題なのかは明らかにされませんでしたが、いずれにせよ新電力として最低限果たすべき義務が果たされていない点で同社の責任は重いと言えます。
なお、契約している新電力が仮に倒産しても、直ちに停電することはありません。一定期間内にほかの電力会社に切り替えることで停電せずに電気の使用を継続できます。
顧客対応は?
再エネ賦課金の滞納について2020年3月にメールで問い合わせたところ、1時間以内に返事が届きました。新電力のメール対応としては非常に早いと評価できます。
倒産する新電力は、倒産する直前に業務崩壊を起こしていることが多く、問い合わせをしても返事が無い、あるいは非常に時間が掛かることが多いですが、AGエナジーについては現在のところそうした事態には陥っていないとみられます。
環境面・エコ
電力の調達方法などは不明です。
環境省が公表したCO2排出係数のデータによると、AGエナジーのCO2排出量は1kWhあたり582g(2018年度実績)と、新電力としてはCO2排出量がやや多いと言えます。