破産する見通しの「あくび電気」

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あくび電気の概要


運営会社 あくびコミュニケーションズ
破産手続き開始
電力調達 不明
供給エリア 沖縄、離島除く全国 契約条件 地域・プランによっては
30A以上

破産手続きを開始した「あくび電気」


 あくび電気を運営する「あくびコミュニケーションズ」は破産手続きの開始を公表しました。


2020年2月に破産手続き開始を公表


 新電力事業やインターネット通信事業を営む「あくびコミュニケーションズ」は、2020年2月28日に東京地裁から破産手続開始の決定を受けました。破産管財人の弁護士より、その旨の公表が同社公式サイト上に掲載されています。


あくびコミュニケーションズは、令和2年2月28日に東京地方裁判所(民事第20部)より破産手続開始決定(東京地方裁判所令和2年(フ)第1351号事件)を受け、同決定により当職が破産管財人に任命されました。これにより、同社の財産の管理及び処分に関する権限は当職に専属することとなると共に、お客様と同社との間の各種サービスの提供に関する契約の解消及び同契約に基づく代金の請求についても、当職の職責に属することとなりましたので、まずもってご連絡申し上げます。

引用元:破産手続開始のお知らせ(あくびコミュニケーションズ)

 これまでに様々な問題を起こしてきた同社は、「倒産」する見通しとなりました。


 また、あくび社の関連先である株式会社カステラについても同じく破産手続開始決定を受けています。グリーンエナジーの名で活動していた会社です。


破産に至るまでのこれまでの経緯


 あくびコミュニケーションズのこれまでの動きをまとめます。


2017年6月 総務省から業務改善命令
(通信回線の勧誘について)
2019年4月 消費者庁から一部業務の業務停止命令
2019年12月 料金の過大徴収などにより
電力・ガス取引監視等委員会から業務改善勧告
2019年12月 東京電力から同社契約者に
託送供給契約の解約予告が送付
2020年2月 総務省から業務改善命令
2020年2月 破産手続開始決定

 記事の後半でも紹介していますが、2019年12月には「まとめ割」と称し、契約者らに電気料金をまとめて前払いさせていました。


契約者が取るべき行動・対処方法


 破産管財人によれば、早ければ3月末頃には電気の供給などのサービスが停止となる恐れがあります。


 現時点で「あくび電気」など同社サービスを契約している人は、直ちに他の電力会社への変更手続きを行う必要があります。


 切り替え先はまた別の新電力でも、あるいは東京電力のような大手電力会社でもかまいません。今すぐ他社に契約を切り替える手続きを行ってください。電力会社の変更は、新たに別の電力会社に申し込みをするだけで完了します(あくび社への解約申し込みは不要)


 新電力への切り替えは時間が掛かる場合もあるため、タイムリミットが迫る現段階では大手電力会社への切り替えがおすすめです。標準的なプランである「従量電灯」に切り替えてください。切り替えに費用などは発生しませんし、契約期間などもありません。


以下、過去情報です

託送供給契約の解約予告とは


 2019年12月中旬頃から大手電力より配布されている通知について、電力自由化の専門家としてこれまでに多数のメディア取材を受けてきた私が解説します。


電力会社から発せられている手紙


 東電など大手電力会社から、あくび電気の契約者に対し「託送供給契約の解約予告」という手紙が配布されています。


 託送供給契約というのは、送電網を使うために必要な契約です。電力自由化では送電網は引き続き地域ごとの独占が続いており、あくび電気のような新電力は大手電力会社の送電網をお金を払って使わせてもらう立場にあります。


 この契約について、大手電力の送配電部門とあくびコミュニケーションズとの間で「契約不履行」が起こったので、これ以上はお客さんに電気を届けられませんよ、と電力会社側が主張しているということです。


契約者は何をすべきか 対処方法は


 今後、あくびコミュニケーションズが契約不履行を解消できなかった場合、大手電力会社が今回の「予告」どおり送電を停止します。つまり、この通知を受け取ったあくび電気契約者の家や事務所が停電するということです。


 取るべき対処方法はたった一つで、それは別の電力会社に乗り換えるということです。


 東電のような大手電力会社でもかまいませんし、東京ガスENEOSでんきのような新電力でもかまわないので、あくび電気から乗り換える必要があります。


 電力会社は以下で比較できます(メディア掲載多数) あくび電気の料金プランも掲載しています。


 なお、AKUBIでんき(プランB)から東電の標準的なプランである「従量電灯B」に切り替えた場合、標準的な世帯で年間数千円程度、電気代が高くなります。


解約&乗り換えの流れ


 他社への乗り換えは簡単で、乗り換えたい電力会社に申し込み手続きをするだけで大丈夫です。5分あれば出来ます。現在契約している電力会社(あくび電気)に対しては、新たに申し込んだ電力会社から解約手続きが飛ぶので、自分であくび電気に対して解約手続きをする必要はありません。


 申し込みをするにあたって、「供給地点特定番号」という22桁の数字と、あくび電気の「お客様番号」が必要になるので、こちらを用意してください。ウェブのマイページや請求書などに書かれているはずです。


 電力会社を乗り換えず、またあくび電気が契約不履行を解消できなかった場合は、通知された日付をもって停電するので、直ちに手続きをしてください。


「まとめ割」にも注意


 大手電力側から「契約不履行」と言われている一方で、あくび電気は契約者に対し「まとめ割キャンペーン」と称して電気代の一括前払いを要求しているようです。


 複数のユーザーがTwitterにアップロードした画像によれば、25000円、あるいは35000円を12月分の請求とあわせてまとめて支払うと、3月利用分の料金が割引になると謳われています。


 新電力が事業を継続する上で最も重要な託送供給で契約不履行を起こしている会社が、このような手紙を発していることには最大限の注意が必要です。


 また、Twitterにアップロードされた画像によれば「万が一ご不要の場合は下記サポートセンターまでご連絡をお願い致します」とあり、連絡しなかった場合は半ば強制的に引き落としが行われる不安を拭えません。こうした手紙が届いた場合は、必ずあくび電気のサポートセンターに問い合わせることをおすすめします。


困った時の問い合わせ先


 不安を拭えない場合は、「188」にダイヤルすると最寄りの消費生活センター(地方自治体などが運営している団体)につながります。


料金の過大請求に業務改善勧告(2019年12月)


 今年春に消費者庁から業務停止命令、また2019年12月中旬には東電から「託送供給契約の解約予告」を出されたあくび電気ですが、2019年12月25日に電力・ガス取引監視等委員会から業務改善勧告を受けました。


 指摘された問題点は以下のとおり。



 2019年10月頃に7862件の契約者から合計6598万円の電気代を過大に徴収したことは特に大きな問題と言えるでしょう。経産省から公表された数字から計算すると、1件あたりの過大徴収は8392円にのぼります。


以下、同社のサービス内容を解説しています

あくび電気の特徴


 「AKUBIでんき」はインターネット回線などを提供する「あくびコミュニケーションズ」の新電力サービスです。あくびグループはフィットネスジムや介護事業も展開しています。


 電話による勧誘や、訪問販売による勧誘を活発に行っているようですが、そうした営業活動への批判の声も少なくありません。2017年には光回線の勧誘に対し、総務省から行政指導が行われています。また、2019年4月にはAKUBIでんきのサービスに対して消費者庁から半年間の業務停止命令を受けました。詳細は記事の後半で解説します。


 そんな「あくび電気」のサービス内容について、見落としがちな重大なデメリットも含めて詳しく解説します。




料金プランとサービスの解説


乗り換えでいくらお得になる?


 乗り換えで、電気料金がどれくらい安くなるのでしょうか。
 世帯人数別に、平均的な電気使用量のご家庭をシミュレーションしてみました。


シュミレーション条件
お得率と年間節約額
1人
20A / 月170kWh
2人
30A / 月348kWh
3人
40A / 月391kWh
4人
50A / 月437kWh
北海道電力エリア
従量電灯B プランB
20A契約不可 -2.1%
-2728円
-2.3%
-3605円
-2.6%
-4543円
東北電力エリア
従量電灯B プランB
20A契約不可 -1.5%
-1627円
-1.9%
-2386円
-2.1%
-3197円
東京電力エリア
従量電灯B プランB
20A契約不可 -1.7%
-1889円
-2.0%
-2678円
-2.3%
-3523円
中部電力エリア
従量電灯B プランB
20A契約不可 -1.6%
-1809円
-2.0%
-2547円
-2.2%
-3336円
北陸電力エリア
従量電灯B プランB
20A契約不可 -1.1%
-1032円
-1.5%
-1641円
-1.8%
-2292円
関西電力エリア
従量電灯A プランB
+2.8%
+1242円
-1.6%
-1617円
-2.0%
-2375円
-2.4%
-3187円
中国電力エリア
従量電灯A プランB
+2.5%
+1161円
-1.7%
-1843円
-2.1%
-2607円
-2.5%
-3424円
四国電力エリア
従量電灯A プランB
+2.4%
+1158円
-1.7%
-1829円
-2.1%
-2618円
-2.5%
-3463円
九州電力エリア
従量電灯B プランB
20A契約不可 -2.5%
-2523円
-2.7%
-3199円
-2.9%
-3922円

 「プランB」の場合、いずれの地域でも新電力会社の中では高めの料金水準と言えます。


 なお、「プランA」というプランがありますが、こちらは多くの条件で大手電力会社の標準プラン(従量電灯)よりも割高になる料金設定です。電気料金自体はやや安いですが、電気代とは別に月250円+税の「Web明細使用料」なる手数料が掛かるため、これを含めると割高になるケースが多いです。プランAは料金シミュレーションに掲載しているので、試算はこちらをご確認ください。


 「Web明細使用料」は重要事項説明書に小さく書かれているだけなので見落としやすいですが、契約者全員負担する必要があるとの回答をあくび電気から得ています。当サイトの試算では、プランA・Bともにこの手数料分を含めて計算しています。


 公式サイトには3人家族で「月450円安くなる」というグラフが掲載されていますが、試算の前提となる使用量が600kWhと異常に大きいので現実的ではありません。政府統計(「家計調査」)から推定できる3人世帯の平均使用量は391kWhです。また、契約者全員負担する必要があるWeb明細使用料が加算されていない点も「どうなの」と思います。


解約時の違約金は?


 2年契約で、更新月以外の解約で6千円の違約金が発生します。


 解約月は契約から24ヶ月目で、その時に解約しなければ自動で契約が更新され、再び解約月まで待たなければ違約金が発生します。全国の新電力の中でもワーストクラスの不親切な発生条件です。


支払い方法は?


 カード払いに加え、口座振替に対応しています。


あくび電気の評価


契約時に手数料が掛かる


 AKUBIでんきを契約する際に、事務手数料として3千円、契約手数料として800円(いずれも税別)の手数料が発生します。合計3800円です。


 こうした契約手数料が発生する新電力はとても珍しいですし、契約事務手数料を取っている新電力の中でもあくび電気の手数料の額は「高額」と言える水準です。


毎月掛かるWeb明細使用料に注意


 「Web明細使用料」なる手数料が、電気代とは別に毎月250円+税発生します。


 公式サイトの料金プランの掲載画面では一切触れられていませんが、PDFで掲載されている重要事項説明書に小さく記載されていました。あくび電気に直接問い合わせたところ、契約者全員が必ず負担する必要があるとのことなので、目立つところに記載すべきだと思います。


環境面・エコ


 電源構成を公表していませんが、環境省が公表したCO2排出係数のデータによると、あくび電気の値は1kWhあたり662g(2017年度)となっています。新電力としては非常に悪い値で、環境負荷が大きいと評価します。


怪しいサイトに注意


 あくび電気の情報を中心にまとめたサイトが複数存在しています。私が見つけただけでも4つありました。いずれのサイトも事実と異なる「試算結果」をアピールしているので注意してください。


 また、この4つのサイトは全くデザインが異なりますが、以下の2点から同一人物が運営していることが疑われます。



怪しいサイトのソースコード

怪しいサイトのソースコード

 いずれのサイトも広告が一切貼られておらず、あくび電気の情報を中心に発信している点も共通しています。


消費者庁から業務停止命令


 2019年4月にAKUBIでんきに対し、消費者庁から業務停止命令と役員3人に対し業務禁止命令が下りました。


 消費者庁の資料によれば、あくび電気は電力会社(資料には無いが九州電力や北陸電力等の大手電力会社)の契約者に対し、自社が大手電力会社であると誤認させるような勧誘を行っていました。


北陸電力の注意喚起

北陸電力も注意喚起をしていた 2019年4月19日公表

 また、「毎月の電気代が5%安くなる」という勧誘をしていましたが、この記事の中盤でも紹介しているとおりAKUBIでんきの料金は大手電力会社の料金と変わらないか、割高になる場合もある点も問題視されました。いずれも特定商取引法違反となります。


 2019年6月18日時点で「あくび電気」公式サイト上に今回の行政処分に関する記述が無い点にも不信感を持たざるを得ません(企業サイトのトップページにのみ記載)


「green energy」などの代理店が存在


 あくび電気については、同社の代理店として株式会社カステラの「グリーンエナジー(green energy)」などの代理店が存在し、訪問販売などを行っているようです。


 代理店を介した契約についても、実際に電気を供給するのは「あくび電気」となります。契約内容をよく確認することをおすすめします。




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