ENEOSでんき「EV・PHEV・FCV向けco2フリー特約T」の注意点など
ENEOSでんきが2021年から提供を開始した「EV・PHEV・FCV向けco2フリー特約T」には注意すべき点もあります。他社の電動車向けプランとも比較しながらメリット・デメリットを解説します。
目次
EV・PHEV・FCV向けco2フリー特約Tとは
まずはこのプランの概要を解説します。
電動車向け再エネ100%メニュー
ENEOSでんきの「EV・PHEV・FCV向けco2フリー特約T」は電気自動車、プラグインハイブリッド車、燃料電池車を保有もしくは新車で購入契約した人を対象とした料金メニューです。
非化石証書を利用することで、CO2排出量ゼロ・再エネ比率を実質100%とした電力を供給します。
電動車補助金対象プラン
本プランは、環境省が2021年から実施している「再エネ電力と電気自動車や燃料電池自動車等を活用したゼロカーボンライフ・ワークスタイル先行導入モデル事業」の対象プランとなっており、電動車(電気自動車、PHV、燃料電池車)の購入や充電設備を設置する際に補助金を受給することが出来ます。
電気自動車の場合は上限80万円、PHVは最大40万円の補助金が支給されます。なお、補助金を受けた場合は最低4年間は、同制度の認定を受けた「再エネ100%」の料金メニューの契約を継続する必要があります。途中でENEOSから他社の認定プランに切り替えることは可能ですが、認定プランでないものに切り替えると補助金の返還義務が発生する場合があるため注意が必要です。
なお、必ずしもこのプランで供給される電力で電動車を充電する必要はありません(そもそも燃料電池車は充電が出来ません) 個人の場合は「住まい」で対象プランを利用すれば、補助金の支給要件を満たすことができます。マンション住まいの方でも問題なく補助金を受けることが出来ます。
このプランのメリット
ENEOSでんき「EV・PHEV・FCV向けco2フリー特約T」のメリットを、他社の再エネ100%プラン(補助金対象プラン)と比較しながら解説します。
他の再エネ100%メニューよりも「安い」
ENEOSでんきの「EV・PHEV・FCV向けco2フリー特約T」は、ENEOSでんきの通常プランと同額です。他社の場合、通常プランにオプションの形で料金に上乗せされたり、あるいは最初から割高に設定された料金メニューが提供されていますが、ENEOSは割増がありません。その分、条件によっては他社より割安な料金で利用が可能です。
大手電力の標準メニューである「従量電灯」との料金比較は以下のとおり(世帯人数ごとの平均的な使用条件での年間比較)
いずれの地域でも、大手電力会社よりも割安になる料金設定です。
他社の補助金対象プランとの料金比較は以下のページの料金シミュレーションで行えます(使用量を入力するだけで料金比較できます)
CO2排出量ゼロ・実質再エネ100%
ENEOSでんきは年度によっても変動しますが、1kWhあたり500g程度のCO2を排出してつくられた電気を供給しています。
CO2排出量 | ENEOSでんき |
---|---|
2019年度 | 494g |
2018年度 | 494g |
2017年度 | 509g |
2016年度 | 459g |
「EV・PHEV・FCV向けco2フリー特約T」で供給される電力は、非化石証書という仕組みを利用することでCO2排出量をゼロ、また再エネ比率を実質100%としています。
この非化石証書という仕組みは理解するのが少々難しいですが、太陽光発電や風力発電といった再エネで作られた電力から、「再エネである」という価値の部分を切り出して売買されているものです。火力発電でつくられた電力にも、非化石証書を付けることでその電力が「CO2排出量ゼロ」「実質再エネ」として扱われます。
「そんなのインチキだ」という第一印象を持つ人も多いと思いますが、価値を切り離された後の「もともとの」再エネ電力は再エネ電力としては扱われなくなります(CO2排出量も火力同等にあるとみなされる) お金を払って非化石証書を購入した電力こそが「再エネ電力」であり、インチキではありません。
駆けつけサービスが無料付帯
通常のENEOSでんきと同様に、電気のトラブルの際に無料で応急処置を行う「駆けつけサービス」を利用することが出来ます。
電気がつかない、コンセントが焦げ臭いといったトラブルに無料で応急処置を行うものです。年3回までという制限がありますが、電球交換にも対応します(電球代等は実費) 電球交換まで対応している駆けつけサービスは珍しいです。
また、これはENEOSでんきではなくENEOSカードの特典ですが、このカードには無料のロードサービスが付帯しています。レッカー移動10Km無料、路上修理30分無料です。キーとじ込みや落輪からの救出など電動車でも起こりうるトラブルにも対応できます。
「ENEOSカードS」の場合、年1回以上使えば年会費無料なので電動車ユーザーもENEOSカードを持っておくと何かの時に役立つかもしれません。ロードサービスを受けるには、カードを携帯しておく必要があります。
デメリットと注意点
他社の補助金対象プランと比較して注意すべき点もあります。
「負荷調整」に協力する必要がある
公式サイトや約款にも記載されていますが、この特約を利用するにあたって「負荷調整」に協力する必要があります。
当社からの事前の依頼により、お客さまが使用される負荷を調整することができること。なお、当社からの負荷の調整依頼は、当社所定のウェブサイトへの掲載、電子メールによるお客さまへの通知等の電磁的方法またはその他当社が適当と判断した方法により、あらかじめその実施時期を定めて、お客さまにお知らせいたします。
引用元:EV・PHEV・FCV向けCO2フリー特約I契約約款(ENEOSでんき)
分かりやすくいうと「節電要請に応じてね」という話です。
電力の需要は季節や時間帯によって大きく変動しますが、一方で発電量には上限があり需給が逼迫することがあります。そうしたタイミングで事前にメールなどで節電要請が出される可能性が考えられます。要請が出た場合は、少なくとも電動車の充電は控えるべきでしょう。需給が逼迫しやすいのは以下のタイミングです。
- 真冬の夕方〜夜9時頃
- 真夏で晴天でない日の昼間〜夕方
また、電気が「余る」こともあります。深夜、あるいは九州などでは太陽光発電の発電量が多い昼間が当てはまります。そうしたタイミングで電気を多く使うように「要請」が出る可能性も考えられます。
少なくとも、ENEOSでんき側から一方的に電力の供給が絞られるようなことは無く、電力の使用に支障が出ることはありません。もちろん需給が逼迫したからといって停電することも無いと言えます。
2年契約の場合、解約違約金が発生する
縛りの無い契約の場合、解約違約金などはありません。2年契約とした場合は、2年毎に訪れる「解約月」以外に解約すると1100円の解約違約金が発生します。
2年契約の方が電気代が0.2円/kWh安いため、通算5500kWh以上使えば解約違約金が発生しても2年契約の方がお得です。一般家庭(月300kWh程度)では19ヶ月分の使用量に相当します。
オール電化の場合は割高
大手電力の「従量電灯」と比較すると割安になる料金設定ですが、大手電力のオール電化プランと比較するとENEOSでんきは割高です。
東京電力エナジーパートナーのオール電化プランと比較すると以下のような結果になります(10kVA契約 昼300kWh/深夜180kWh使用)
社名・プラン名 | 月額料金 |
---|---|
東京電力 電化上手 |
11903円(その他季節) |
東京電力 スマートライフ |
13800円 |
ENEOSでんき 2年契約 |
14215円 |
オール電化プラン、特に現在新規契約が出来ないオール電化プラン(現行のものより割安)を契約中の場合は、慎重に判断することをおすすめします。
申込方法
「EV・PHEV・FCV向けco2フリー特約T」はENEOSでんきの特約プランなので、まずはENEOSでんきの通常のプランを契約後、申し込みを行うことで適用されます。
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