ENEOSでんきの2023年11月料金改定を専門家解説
2023年11月に料金改定を実施し、一部地域では「値上げ」となるENEOSでんき。この料金改定を電力自由化の専門家としてこれまでに多数のメディア取材(産経新聞、日経トレンディ、週刊女性ほか)を受けてきた私が地域別に対処方法を指南します。
目次
2023年11月に値上げするENEOSでんき
料金改定を解説します。
料金改定の背景・原因
2022年2月に起き、現在も続くロシアによるウクライナ侵攻や円安を原因として、日本が輸入しているエネルギーの価格が1年近くにわたり高止まりを続けていました。その影響で東京電力や関西電力などの大手電力10社のうち7社が主要な料金プランの料金改定を実施しています。
ENEOSでんきを始め、多くの新電力は大手電力の標準メニューに倣った料金体系を採用しています。電気料金の比較をしやすくするためです。ベンチマークとしている大手電力の料金プランが改定となったため、ENEOSでんきを始め多くの新電力も2023年6月から秋に掛けて料金改定を実施しています。
それに加え、新電力各社にとっては電力取引価格の高止まりなどによりコストの高止まりが続いています。そのような収支の悪化も影響しているものと思われます。
料金改定の影響 いくら高くなる?
地域によっては料金改定により値上がりとなる地域と、値下がりとなる地域が混在します。以下、地域ごとの状況をまとめます(影響額は30A・月400kWhのケース)
エリア | 影響額(月) |
---|---|
北海道電力エリア | 1182円値上がり |
東北電力エリア | 236円値下がり |
東京電力エリア | 362円値上がり |
北陸電力エリア | 1256円値上がり |
中国電力エリア | 762円値下がり |
四国電力エリア | 48円値下がり |
北海道、東京、北陸の3エリアでは値上がりとなる一方、中国・四国の2地域では値下がりとなります。
ENEOSでんき契約者は何をするべきか
ENEOSでんき契約者は何をすべきか、地域ごとに解説します。
東京電力エリア
料金改定(値上げ)後の料金で見ても、ENEOSでんきは東京電力の標準メニューより割安ですし、他の新電力と比較しても悪くない料金水準です。そのまま利用を継続しても損にはなりません。東京電力管内の新電力の中で最もシェアが大きい東京ガスと比較しても、ENEOSでんきの方が安いです(東京ガスも同時期に料金改定を実施予定、料金改定後の料金で比較)
更に電気代を安くしたいのであれば、ENEOSでんきVプランよりもCDエナジーダイレクトの「ベーシックでんきプラン」が安いので、こちらをおすすめします。4人以上世帯の平均使用量(月437kWh)では「ファミリーでんきプラン」が安いです。CDエナジーは大阪ガスと中部電力が共同で設立し、首都圏で営業している会社です。初期費用や解約違約金などもありません。
東京電力 スタンダードS |
CDエナジー ベーシック |
ENEOS Vプラン | |
---|---|---|---|
基本料金(10A/円) | 295.24円 | 276.90円 | 295.24円 |
〜120kWh | 30.00円/kWh | 29.90円 | 30.00円 |
121〜300kWh | 36.60円/kWh | 35.59円 | 35.05円 |
300kWh〜 | 40.69円/kWh | 36.50円 | 37.10円 |
ポイント還元 | 約0.5% | 約1% | 約0.5% |

関西・九州電力エリア
関西・九州エリアは今回2023年11月の料金改定の対象外ですが、注意が必要です。
この2エリアではENEOSでんきは関西電力・九州電力の従量電灯と比較して割高になっています。2022年秋から割高な状況が続いています。今後も当面の間、その状況が続く恐れがあるため、関西電力の従量電灯A・B、九州電力の従量電灯B・Cへの切り替えを強く推奨します。
ENEOSでんきでは2022年11月に、これまで設けていた燃料費調整額の「上限」を廃止しました。一方、大手電力従量電灯の燃料費調整額は計算方法こそ同じですが、上限が設けられています。2022年以降、関西電力・九州電力の燃料費調整額は上限に張り付いたまま推移しているため、燃料費調整額に上限が無い多くの新電力は、この2エリアでは割高となっています。他の新電力も基本的にダメです。
ENEOSでんきの料金プランは当サイトの電気料金一括シミュレーションに掲載しているので、こちらで「いくら高くなっているのか」確認できます(ENEOSでんきは2023年8月現在、新規契約受付停止中)
その他地域はENEOSでんき継続でOK
北海道・東北・中部・北陸・中国・四国の6エリアでは、ENEOSでんきの継続を推奨します。値上げとなる地域でも大手電力標準メニューより割安ですし、他の新電力と比較しても「悪くない」料金水準なのでENEOSでんきを継続しても損にはなりません。
世帯人数別の平均使用条件で大手電力標準メニューと料金を比較します。
<年間節約額 | 20A / 月170kWh |
30A / 月348kWh |
40A / 月391kWh |
50A / 月437kWh |
北海道電力エリア 北海道Bプラン |
-1584円 | -6356円 | -7954円 | -9622円 |
東北電力エリア 東北Bプラン |
-1006円 | -3597円 | -4678円 | -5834円 |
東京電力エリア Vプラン |
-1286円 | -6170円 | -8136円 | -10238円 |
中部電力エリア 中部Bプラン |
-1031円 | -3772円 | -4994円 | -6299円 |
北陸電力エリア 北陸Bプラン |
-920円 | -3044円 | -3942円 | -4901円 |
中国電力エリア 中国Aプラン |
-1011円 | -3605円 | -4652円 | -5772円 |
四国電力エリア 四国Aプラン |
-753円 | -3414円 | -4633円 | -5938円 |
ENEOSでんきの改定後の料金プランは当サイトの電気料金一括シミュレーションに掲載しているので、こちらで他社と比較できます(ENEOSでんきは2023年8月現在、新規契約受付停止中)
市場連動型プランにご注意
2023年夏現在、市場連動型プランという料金体系の新電力が割安になっています(ENEOSでんきは市場連動型プランではない) 地域によっては大手電力標準メニューより20%以上安くなっているケースもあります。
市場連動型プランは「電力取引価格」に電気代が連動する料金プランです。電力取引価格はしばしば暴騰することがあり、暴騰が起こると市場連動型プランの電気代は高額になります。実際、電力取引価格が高騰していた2022年の水準で見ると、主要な市場連動型プランは大手電力標準メニューの1.5〜2倍という高額な料金になっていました。
例えて言うなら、市場連動型プランは自動車保険(任意保険)に入っていないようなものです。事故を起こさなければ保険料分「トク」をしますが、一度事故が起こると途端に負担が大きくなります。近年、事故が頻繁しているので一時的に割安になっている市場連動型プランを誤って契約しないよう注意してください。当サイトの料金シミュレーションでは、初期設定では市場連動型プランを表示しない設定としています。