市場連動調整単価で値上げするJCOM電力 契約者の対処方法は?

JCOM電力が市場連動調整調整で大幅値上げへ


 ジェイコム電力は新たに「市場連動調整単価」を導入することで電気代を大幅に値上げします。値上げの影響と、契約者が取るべき対処方法を解説します。



市場連動調整単価を導入するJCOM電力


 JCOM電力は料金を改定し、市場連動調整単価を導入します。市場連動調整単価とは何か、解説します。


市場連動調整単価とは何?


 市場連動調整単価は、卸電力取引所における電力の取引価格を毎月の電気代に転嫁する仕組みです。


 これまでJCOM電力が採用していた「燃料費調整制度」では、財務省が発表している燃料の輸入価格によって毎月の電気代が変動しています。それに対し市場連動調整単価は、卸電力取引所での電気の取引価格に連動します。


燃料費調整 市場連動調整単価
参照する値 財務省貿易統計の
原油・LNG・石炭輸入価格
と為替レート
卸電力取引所の
電力取引価格など
変動幅 市場連動より
小さい
かなり大きい
※会社によって異なる
採用している
電力会社
多くの会社
大手電力・新電力
少数の会社

昨今導入する新電力が増えている


 市場連動調整単価を導入している電力会社は少数と言えますが、増加傾向にあります。


 新電力会社は自社で発電所を持っておらず、卸電力取引所などから電気を購入していることが多いです。ですが昨今、電力不足や燃料価格の高騰により電力の取引価格が高騰していることで、経営にダメージを負っています。


 電力の取引価格は通常8〜10円/kWh程度と言われていますが、2021年1月には電力不足の発生により66円まで高騰、また2022年以降は燃料価格の高騰により20円以上で推移しています(東京エリアの月間平均取引価格) 


 通常の燃料費調整制度では、電力の取引価格が高騰してもそのコストをお客さんに負担してもらうことが出来ません。そこで市場連動調整単価を導入することで、お客さんにコストを負担してもらおうとする電力会社が増えているのです。


市場連動調整単価の注意点


 市場連動調整単価には注意点もあります。


電力取引価格によっては電気代が高くなる


 市場連動調整単価が導入されることで、電気代が高くなるリスクが大きいです。


 実際、JCOM側でも市場連動調整単価導入により電気代が上昇する見通しを示しています(以下は東京電力エリアの影響幅)


使用量 市場連動調整単価
導入による値上げ幅
100kWh 月1100円
150kWh 月1650円
200kWh 月2200円
250kWh 月2750円
300kWh 月3300円
350kWh 月3850円
400kWh 月4400円

 JCOMの値上げ発表のリリースでは政府支援による値引きを表に併記していますが、政府による電気代支援は大手電力従量電灯を含め大多数の電力会社で適用されているため、この部分は料金比較する際は無視して大丈夫です。


 JCOM電力は大手電力従量電灯と比べて既に2割ほど高くなっている(東京電力従量電灯Bと30A契約、月300kWh、2023年3月分燃料費調整単価で比較)わけですが、更に毎月数千円高くなると大手電力従量電灯の1.5倍程度の電気代になってしまいます(大手電力値上げ前の料金との比較)


実は既に電気代が高騰しているJCOM電力


 JCOM電力の電気料金は、実は市場連動調整単価を導入する前から高騰し、大手電力の標準メニューである「従量電灯」よりも高くなっています。


 その原因が燃料費調整額です。大手電力の従量電灯では、燃料費調整に「上限」が設定されているのに対し、JCOM電力を含め多くの新電力の燃料費調整には上限がありません。


燃料費調整単価
2023年4月分
電気代の差
月300kWh
上限あり 上限無し
北海道電力エリア 3.66円/kWh 8.57円/kWh 4.91円/kWh 1473円
東北電力エリア 3.47円/kWh 11.80円/kWh 8.33円/kWh 2499円
東京電力エリア 5.13円/kWh 10.25円/kWh 5.12円/kWh 1536円
中部電力エリア 5.36円/kWh 9.93円/kWh 4.57円/kWh 1371円
北陸電力エリア 1.77円/kWh 9.34円/kWh 7.57円/kWh 2271円
関西電力エリア 2.24円/kWh 9.67円/kWh 7.43円/kWh 2229円
中国電力エリア 3.19円/kWh 13.77円/kWh 10.58円/kWh 3174円
四国電力エリア 2.55円/kWh 10.76円/kWh 8.21円/kWh 2463円
九州電力エリア 1.94円/kWh 7.56円/kWh 5.62円/kWh 1686円
沖縄電力エリア 3.98円/kWh 17.32円/kWh 13.34円/kWh 4002円

 2022年から続く燃料価格高騰により、全国すべての地域で大手電力の燃料費調整が上限に達しています。2023年3・4月分の燃料費調整単価で試算すると、燃料費調整に上限が無い全ての料金プラン(JCOM電力を含む)が、大手電力の従量電灯よりも電気代トータルで見て割高になっています。


 JCOM電力では2022年11月から燃料費調整の上限を撤廃しており、それ以降の電気代は割高になっています(オール電化プランは大手電力もJCOM電力も燃料費調整に上限が無いためJCOMの方が割安だった)


 大手電力各社は2023年4〜7月にかけて値上げを予定しており、そのタイミングでJCOM電力が再び安くなる可能性もゼロではありませんでしたが、今回の市場連動調整単価導入によってその可能性は低くなってしまいました。


 また、関西・中部・九州電力の3エリアでは、2023年3月時点で大手電力の従量電灯の値上げが予定されておらず、今後も当面のあいだJCOM電力が大幅に割高な状態が続く可能性が大きいです。


JCOM電力契約者が取るべき対処方法


 現在JCOM電力の電気を契約している人へのアドバイスです。


大手電力の従量電灯への切り替え推奨


 まず、市場連動調整単価を導入する以前から既にJCOM電力の電気料金は大手電力の従量電灯よりも高騰しています。また、市場連動調整単価の導入によって今後の電力取引価格の推移によっては電気代が一段と上昇するリスクがあります。以上の理由から、大手電力従量電灯への切り替えを推奨します。


 大手電力従量電灯も一部地域では2023年4〜7月頃に値上げが予定されていますが、従量電灯は解約違約金や初期費用がありません。今後大手電力従量電灯よりも安い料金プランが登場した場合は再び切り替えを検討することが容易に出来ます。


 2023年3月時点において、燃料費調整に上限が無い全ての料金プランが、大多数の一般家庭において大手電力従量電灯よりも割高になっています。注意してください。上限が無い料金プランは一般家庭の平均的な使用量で1ヶ月あたり数千円割高になっていますし、ジェイコム電力は市場連動調整単価の導入によって更に電気代が高くなる恐れがあります。


 なお、一部の電気料金比較サイトやSNS等で「安い」と紹介されているオクトパスエナジーテラセルでんき出光でんきなどはいずれも燃料費調整に上限が無いため、大手電力従量電灯よりも電気代が高くなっているのでくれぐれも注意してください。




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