シン・エナジーが電源調達調整費を導入 注意点をまとめます
シン・エナジーが2023年2月、料金を改定し電源調達調整費の導入を発表しました。契約者が注意すべき点をまとめます。
目次
電源調達調整費を導入するシン・エナジー
シン・エナジーは料金を改定し、電源調達調整費を導入します。電源調達調整費とは何か、解説します。
電源調達調整費とは何?
電源調達調整費は、卸電力取引所における電力の取引価格を毎月の電気代に転嫁する仕組みです。
これまでシン・エナジーが採用していた「燃料費調整制度」では、財務省が発表している燃料の輸入価格によって毎月の電気代が変動しています。それに対し電源調達調整費は、卸電力取引所での電気の取引価格に連動します。
燃料費調整 | 電源調達調整費 | |
---|---|---|
参照する値 | 財務省貿易統計の 原油・LNG・石炭輸入価格 と為替レート |
卸電力取引所の 電力取引価格など |
変動幅 | 調達調整費より 小さい |
かなり大きい ※会社によって異なる |
採用している 電力会社 |
多くの会社 大手電力・新電力 |
少数の会社 |
昨今導入する新電力が増えている
電源調達調整費を導入している電力会社は少数と言えますが、増加傾向にあります。
新電力会社は自社で発電所を持っておらず、卸電力取引所などから電気を購入していることが多いです。ですが昨今、電力不足や燃料価格の高騰により電力の取引価格が高騰していることで、経営にダメージを負っています。
電力の取引価格は通常8〜10円/kWh程度と言われていますが、2021年1月には電力不足の発生により66円まで高騰、また2022年以降は燃料価格の高騰により20円以上で推移しています(東京エリアの月間平均取引価格)
通常の燃料費調整制度では、電力の取引価格が高騰してもそのコストをお客さんに負担してもらうことが出来ません。そこで電源調達調整費を導入することで、お客さんにコストを負担してもらおうとする電力会社が増えているのです。
電源調達調整費の注意点
電源調達調整費には注意点もあります。
電力取引価格によっては電気代が高くなる
電源調達調整費が導入されることで、電気代が高くなるリスクが大きいです。以下の図をご覧ください。
上図はシン・エナジーとは別の、電源調達調整費を導入している新電力での電源調達調整費の発生イメージです。
過去数年分の電力取引価格で見ると、電源調達調整費によって電気代が安くなった時期よりも、高くなった時期の方が長く、そして値幅も高くなっている時期の方が格段に大きいことが分かります。
シン・エナジーの電源調達調整費は、上図の新電力よりも電源調達調整費が発生する基準値が高いものの、基本的にはメリットよりもデメリットが大きくなることに変わりありません。
料金体系の変更により電気代が安くなる可能性もゼロではありませんが、実質的には値上げになるリスクの方が大きいと言えます。
類似の市場連動型プランとしては、しろくま電力には電力取引価格高騰にそなえて毎月「積み立て」を行う仕組みがあり、高騰が起きた際の電気代高騰を一定程度抑制することが出来ます。その分、平時の電気代はシン・エナジーと比較してやや高い傾向がありますが、リスクを考えるとこのような仕組みがあることが「最低限望ましい」と思います(しろくま電力についても推奨しているわけではありません)
シン・エナジー契約者が取るべき対処方法
現在シン・エナジーの電気を契約している人へのアドバイスです。
大手電力の従量電灯への切り替え推奨
まず、電源調達調整費を導入する以前から既にシン・エナジーの電気料金は大手電力の従量電灯よりも高騰しています。また、電源調達調整費の導入によって今後の電力取引価格の推移によっては電気代が一段と上昇するリスクがあります。以上の理由から、大手電力従量電灯への切り替えを推奨します。
大手電力従量電灯も一部地域では2023年4〜7月頃に値上げが予定されていますが、従量電灯は解約違約金や初期費用がありません。今後大手電力従量電灯よりも安い料金プランが登場した場合は再び切り替えを検討することが容易に出来ます。2023年2月時点において、燃料費調整に上限が無い全ての料金プランが、大多数の一般家庭において大手電力従量電灯よりも割高になっています。注意してください。上限が無い料金プランは一般家庭の平均的な使用量で1ヶ月あたり数千円割高になっています。
なお、一部の電気料金比較サイトやSNS等で「安い」と紹介されているオクトパスエナジーやテラセルでんき、出光でんきなどはいずれも燃料費調整に上限が無いため、大手電力従量電灯よりも電気代が高くなっているのでくれぐれも注意してください。