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Looopでんきの値上げの「全容」を解説します
2022年6月に値上げを実施、更に12月分から市場連動型プランへ移行するLooopでんき。一部地域では大手電力標準プランよりも「割高」となる料金改定の全容を解説します。
- この記事の著者:石井元晴
2014年から当サイトを運営。産経新聞、週刊女性自身、週刊ポスト、女性セブンなど数々のメディアに電力自由化の専門家として取材を受けてきました。400社以上の料金プランに目を通しています。
2022年6月に値上げを実施するLooopでんき
22年4月に発表、6月に実施された料金単価の値上げの概要を解説します。
最大19.7%の大幅な値上げを実施
Looopでんきの主要な料金プランである「おうちプラン」と「ビジネスプラン」が2022年6月から値上げされます。一般家庭向けのプランである「おうちプラン」の料金単価は以下のとおり(基本料金は変わらず「0円」)
エリア |
旧料金単価 |
新料金単価 |
北海道電力エリア |
29.50円/kWh |
32.00円/kWh |
東北電力エリア |
26.40円/kWh |
28.00円/kWh |
東京電力エリア |
26.40円/kWh |
28.80円/kWh |
中部電力エリア |
26.40円/kWh |
28.50円/kWh |
北陸電力エリア |
21.30円/kWh |
25.50円/kWh |
関西電力エリア |
22.40円/kWh |
25.50円/kWh |
中国電力エリア |
24.40円/kWh |
26.50円/kWh |
四国電力エリア |
24.40円/kWh |
26.90円/kWh |
九州電力エリア |
23.40円/kWh |
25.40円/kWh |
沖縄電力エリア |
27.00円/kWh |
28.50円/kWh |
値上げ幅は地域によって異なりますが、5.6(沖縄)〜19.7%(北陸)という値上げ幅です。
なお、以下の料金プランについては2022年6月の値上げの対象外です。
値上げに踏み切る背景・原因
値上げに踏み切る理由として、Looopは「エネルギー資源価格高騰」による「電気のコストが大きく増大」したことを説明しています。
エネルギー価格は新型コロナ禍からの急激な経済活動再開に伴い、2021年下半期から上昇を続けています。更にロシアによるウクライナ侵攻を受け、2月以降一段と高止まりした状況が続いています。
こうしたエネルギー価格高騰と、国内での電力需給逼迫の影響を受けて国内の電力取引価格が2021年秋から異常な高騰を続けています。下表は卸電力取引所の電力取引価格です(東京エリアプライス 単位:円/kWh)
|
11月 |
12月 |
1月 |
2月 |
3月 |
19年度 |
9.03円 |
8.71円 |
8.17円 |
7.59円 |
7.48円 |
20年度 |
5.35円 |
14.35円 |
66.53円 |
8.29円 |
6.70円 |
21年度 |
17.59円 |
18.04円 |
23.95円 |
23.36円 |
30.76円 |
卸電力取引所の取引価格は通常8〜9円程度と言われていますが、2021年秋から「相場」の数倍以上と高止まりが続いています。新電力は必ずしも全ての電力を市場価格で仕入れているわけではありませんが、現在の取引価格の水準では多くの新電力が赤字を免れません。また、市場調達以外の取引価格も高騰していると言われています。
Looopは卸電力取引所からの調達を年々減らしてはいるものの、2021年度計画値で卸電力取引所からの調達が15%、卸電力取引所の取引価格に連動するFIT電気が19%と、合計34%が相場高騰の影響を受けうる電源です。この比率は新電力としては高いと言えるものではありませんが、昨今の相場高騰の影響をある程度受けていると推察されます。
値上げ後の「料金水準」は?
値上げ後の料金水準を、大手電力標準プランと世帯人数別の平均使用量で比較します。
大手電力標準メニューとの料金比較
完全市場連動型プランに移行したため、事前の料金シミュレーションが出来なくなりました。
市場連動型プランへ移行(7月発表、10月適用)
料金単価の引き上げに続いて、燃料費調整単価の計算方法を変更することを発表しました。
何がどう変わる?
変更点を整理します。
|
変更前 |
変更後 |
計算根拠 |
財務省「貿易統計」による 燃料輸入価格 |
日本卸電力取引所 電力取引価格 |
備考 |
大手電力と同じ計算式 |
いわゆる市場連動型 |
従来は財務省貿易統計の数字をもとに、燃料輸入価格の変動を毎月の電気料金に反映する燃料費調整制度を採用していました。計算方法は大手電力と同じでした。
今後は燃料輸入価格ではなく、卸電力取引所での電力取引価格に連動する燃料費調整単価に変更されます。当サイトではこのような料金体系のプランを「一部市場連動型プラン」と分類しています。
変更の適用は2022年10月分の請求からで、長期契約が前提となる「再エネどんどん割」や「未来発電」には適用されません。
影響は?
Looopが公表した情報をもとに、影響を具体的に示します。
|
単価(東京) |
料金の差額 月300kWh |
従来方式 |
新方式 |
差額 |
8月分 |
5.10円/kWh |
7.14円/kWh |
2.04円/kWh |
612円 |
9月分 |
6.50円/kWh |
13.49円/kWh |
6.99円/kWh |
2097円 |
2022年7/1〜26の電力取引価格をもとに算出された新たな燃料費調整単価は7.14円/kWhと、従来の計算方法(大手電力と同じ)で算出された単価5.10円と比べて2.04円の値上がりとなります。月300kWhの電気を使う一般家庭では612円の値上がりとなります。
また、9月分で計算すると新旧の計算方式で2097円の値上がりとなります。
なお、新たな計算方法によって算出された10月分の燃料費調整単価は19.00円(東京エリア)とされており、10月分の負担増は更に大きなものとなるリスクがあります。
契約者へのアドバイス
アドバイスをまとめます。
2022年夏、そして2023年1・2月(冬)に電力不足が懸念されています。電力不足が発生すると電力取引価格が暴騰するため、新たな計算方法によって算出される燃料費調整単価も高額になる恐れがあります。2021年1月には1ヶ月にわたり電力需給が逼迫し、平均取引価格が66円と通常の7倍以上の水準となりました。
また、足元では燃料価格の高騰により電力取引価格の高止まりが続いており、電力需要が落ち込む時期でさえも取引価格が高値圏で推移しており、これも「新たな計算方法」による燃料費調整単価を押し上げる要因となります。
東京エリアプライス (円/kWh 税抜き) |
1月 |
2月 |
3月 |
4月 |
5月 |
6月 |
2020年 |
8.17円 |
7.59円 |
7.48円 |
6.85円 |
5.75円 |
5.57円 |
2021年 |
66.53円 |
8.29円 |
6.70円 |
7.05円 |
6.98円 |
7.02円 |
2022年 |
23.95円 |
23.36円 |
30.76円 |
21.65円 |
19.50円 |
25.27円 |
月数日しか利用しない別荘など、特殊な使用状況を除いて大手電力標準メニューよりも大幅に割高となるリスクが低くないため、新たな計算方法が適用されるまでに大手電力標準メニューなど他社への切り替えを行うことを推奨します。
九州エリアに関しては原発の再稼働と再エネの導入拡大により、他のエリアと比べて電力取引価格が安値圏で推移しており、Looopが示した計算事例でも新たな計算方法の導入により「値下がりする」とされています。とはいえ今後の電力取引価格の見通しは楽観出来るものではないため、一定のリスクがある点には注意が必要です。九州エリアにお住まいの方に対して契約継続を推奨するものではありません。
当サイトでは卸電力取引所の取引価格を反映する料金体系を採用している料金プランについて「料金高騰リスクあり」と記載しています。
12月からスマートタイムONEに自動移行
Looopでんきの主な料金プランの契約者は、2022年12月以降に順次「スマートタイムONE」という料金プランに移行することが2022年9月28日発表されました。
スマートタイムONEは料金単価自体が市場連動型となっており、電力取引価格の推移によっては電気代が高額になる恐れがある料金体系です。2022年現在の電力取引価格の水準では、多くの契約者の電気代が大手電力従量電灯よりも割高になる恐れがあります。
スマートタイムONEについては以下の記事で詳しく解説しています。
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