高圧・特別高圧から撤退するナンワエナジー
2022年4月、九州の新電力ナンワエナジーが高圧・特別高圧事業を停止することを発表しました。契約者は何をすべきか、また撤退に追い込まれた背景を解説します。
- 一般家庭向け(低圧)の撤退に関しては以下の記事
- ナンワエナジーが供給終了へ。契約者の対処方法
家庭向けの低圧電力も終了へ
目次
新電力の相次ぐ撤退・値上げ
新電力の撤退・値上げが相次いでいます。
ナンワエナジーが撤退に追い込まれた背景
新電力各社は高圧電力・特別高圧の電気代の大幅な値上げや、解約あるいは新電力事業からの「撤退」の動きを加速させています。
このような動きの背景にあるのが、2021年秋から続く電力取引価格の大幅な高騰です。以下の表は、電力取引価格の指標となる卸電力取引所の東京エリアプライス(東京電力管内向けの電力の取引価格)の月間平均値です(単位:円/kWh)
11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 | |
---|---|---|---|---|---|
19年度 | 9.03円 | 8.71円 | 8.17円 | 7.59円 | 7.48円 |
20年度 | 5.35円 | 14.35円 | 66.53円 | 8.29円 | 6.70円 |
21年度 | 17.59円 | 18.04円 | 23.95円 | 23.36円 | 30.76円 |
卸電力取引所における電力取引価格は平均で8〜9円程度と言われています。ですが2021年秋から平均的な水準の2倍以上という水準での取引が続いています。
電力取引価格高騰の原因としては2021年下半期から続く燃料輸入価格の高騰、電力需給の逼迫などが指摘されています。
新電力は通常、9円程度で仕入れた電力を2円程度の託送料金(高圧の場合)を送配電事業者に支払い、電力を顧客に届けます。現在の電力取引価格の水準は、販売価格を大幅に上回る水準です。多くの新電力が値上げあるいは事業からの撤退を進めています。
ナンワエナジーは販売電力量で全国57位(2021年11月)と、九州の新電力の中でも有数の規模を誇っていました。ですがナンワエナジーは自社で大規模な火力発電所を保有しておらず、今回の電力取引価格高騰の影響を大きく受けたものとみられます。
新規契約受付を中止している例も
電力取引価格高騰を受けて、新規契約の受付けを停止している電力会社も増えています。この動きは新電力だけでなく、東京電力エナジーパートナーや中部電力ミライズ、関西電力や北陸電力といった大手電力本体(の小売部門)にも波及しています。
新電力が新規受注を絞る、あるいは既存の契約について解約を申し出たことで大手電力への申込みが急増。確保していた電力量を上回り、また新規での追加調達も電力取引価格高騰のため難しく、結果として大手電力の小売部門でさえも新規受注を絞らざるをえない状況が生じています。
九州電力についても、2022年4月時点で一部の法人向けプランの新規申込み受付けを停止しているとの報道があります。
ナンワエナジー契約者が取るべき対処方法
現在、ナンワエナジーを契約している方が取るべき対処方法を紹介します。
まずは他社への切り替えを検討
まず第一に行うべきことは、他社への契約切り替えの検討です。以下のような高圧・特別高圧向けの一括見積もりサイトを利用して切り替え先を検討してください。
サイト名 | 対応種別 | 対応地域 |
---|---|---|
エネチェンジ | 高圧・特別高圧 | 全国 |
見積もりには費用などは掛かりません。
切り替え先が見つからない場合
現在、多くの新電力・大手電力が高圧電力の新規受付を停止している状況です。見積もりサイトを利用しても切り替え先が見つからない場合は、まず電力を利用する地域の大手電力小売部門に新規契約は可能か、可能である場合は見積もりを依頼してください。
万が一それさえも断られた場合は、料金は大手電力の通常の契約より約2割割高となりますが、各地域の送配電事業者が提供している「最終保障供給約款」への申込みを検討してください。最終保障供給は、どの小売電気事業者とも契約交渉が成立しない場合に、最終手段として提供されているものです。料金は割高となりますが、電気を使えなくなる事態は免れることが出来ます。