高圧電力から撤退するネクシィーズ電力
店舗向けサービス「ネクシィーズ・ゼロ」などを展開するネクシィーズグループが「ネクシィーズ電力 高圧」のサービス終了を発表しました。契約者が取るべき対応や、撤退に至った背景を解説します。
目次
高圧電力から撤退するネクシィーズ電力
まずは撤退に至った背景にある事情を解説します。
撤退に至った背景
新電力各社は高圧電力・特別高圧の電気代の大幅な値上げや、解約あるいは新電力事業からの「撤退」の動きを加速させています。
このような動きの背景にあるのが、2021年秋から続く電力取引価格の大幅な高騰です。以下の表は、電力取引価格の指標となる卸電力取引所の東京エリアプライス(東京電力管内向けの電力の取引価格)の月間平均値です(単位:円/kWh)
11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 | |
---|---|---|---|---|---|
19年度 | 9.03円 | 8.71円 | 8.17円 | 7.59円 | 7.48円 |
20年度 | 5.35円 | 14.35円 | 66.53円 | 8.29円 | 6.70円 |
21年度 | 17.59円 | 18.04円 | 23.95円 | 23.36円 | 30.76円 |
卸電力取引所における電力取引価格は平均で8〜9円程度と言われています。ですが2021年秋から平均的な水準の2倍以上という水準での取引が続いています。
電力取引価格高騰の原因としては2021年下半期から続く燃料輸入価格の高騰、電力需給の逼迫などが指摘されています。
新電力は通常、9円程度で仕入れた電力を2円程度の託送料金(高圧の場合)を送配電事業者に支払い、電力を顧客に届けます。現在の電力取引価格の水準は、販売価格を大幅に上回る水準です。多くの新電力が値上げあるいは事業からの撤退を進めています。
大規模な火力発電所を保有している新電力は、このような電力取引価格高騰の影響を受けづらいですが、ネクシィーズは十分な発電所を保有していないため取引価格高騰の影響を大きく受けているものとみられます。
新規契約受付を中止している例も
電力取引価格高騰を受けて、新規契約の受付けを停止している電力会社も増えています。この動きは新電力だけでなく、東京電力エナジーパートナーや中部電力ミライズ、関西電力や北陸電力といった大手電力本体(の小売部門)にも波及しています。
新電力が新規受注を絞る、あるいは既存の契約について解約を申し出たことで大手電力への申込みが急増。確保していた電力量を上回り、また新規での追加調達も電力取引価格高騰のため難しく、結果として大手電力の小売部門でさえも新規受注を絞らざるをえない状況が生じています。
ネクシィーズ電力契約者の対処方法は
ネクシィーズ電力を契約している方が取るべき対処方法をまとめます。
まずは他社への切り替えを検討
まず第一に行うべきことは、他社への契約切り替えの検討です。以下のような高圧・特別高圧向けの一括見積もりサイトを利用して切り替え先を検討してください。
サイト名 | 対応種別 | 対応地域 |
---|---|---|
エネチェンジ | 高圧・特別高圧 | 全国 |
見積もりには費用などは掛かりません。
切り替え先が見つからない場合
現在、多くの新電力・大手電力が高圧電力の新規受付を停止している状況です。見積もりサイトを利用しても切り替え先が見つからない場合は、まず電力を利用する地域の大手電力小売部門に新規契約は可能か、可能である場合は見積もりを依頼してください。
万が一それさえも断られた場合は、料金は大手電力の通常の契約より約2割割高となりますが、各地域の送配電事業者が提供している「最終保障供給約款」への申込みを検討してください。最終保障供給は、どの小売電気事業者とも契約交渉が成立しない場合に、最終手段として提供されているものです。料金は割高となりますが、電気を使えなくなる事態は免れることが出来ます。
低圧の契約者も要注意 電気代高騰リスクがある
ネクシィーズ電力は低圧の電力販売は継続していますが、低圧の契約者に関しても注意が必要な点があります。
ネクシィーズ電力(低圧)には、「調達調整額」という料金項目があります。これは卸電力取引所の取引価格が高騰した際に、高騰によって生じたコストを利用者に転嫁する仕組みです。
ネクシィーズ電力の調達調整額の具体的な計算方法が分からないため詳細な評価は避けますが、他社で同様の仕組みを取り入れているところでは、卸電力取引所の取引価格高騰により電気代が大手電力の2倍以上と高額になるものもあり、注意が必要です。
多くの新電力・大手電力の料金プランには、このような卸電力取引所の取引価格高騰を反映する項目は無く、ネクシィーズ電力の料金体系は「特殊」であり、また先の述べた通りリスクがあると指摘できます。
当サイトでは、このような料金高騰リスクがある料金プランについて、電気料金比較シミュレーションなどで注意喚起を行っています。