楽天でんきの値上げの影響を解説。大手電力より高くなる。

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楽天でんきの「料金改定」を解説


 2022年6月そして12月にも実施される楽天でんきの「料金改定」 その影響はどれほどのものか、分かりやすく具体的な数字を示しながら解説します。



2022年6月実施の料金改定の中身


 料金改定の中身を解説します。


料金単価が最大14%値上げ


エリア 旧料金単価 新料金単価
北海道電力エリア 30.00円/kWh 34.20円/kWh
東北電力エリア 26.50円/kWh 28.80円/kWh
東京電力エリア 26.50円/kWh 29.45円/kWh
中部電力エリア 26.50円/kWh 29.30円/kWh
北陸電力エリア 22.00円/kWh 24.80円/kWh
関西電力エリア 22.50円/kWh 25.50円/kWh
中国電力エリア 24.50円/kWh 26.60円/kWh
四国電力エリア 24.50円/kWh 26.90円/kWh
九州電力エリア 23.50円/kWh 26.37円/kWh
沖縄電力エリア 27.00円/kWh 28.20円/kWh

 一般家庭向けの「プランS」の電力量料金単価です。基本料金の部分は変わらず0円のままですが、料金単価が4.4〜14.0%値上げされるため、電気代はその分値上がりします。


 楽天でんきは3月初旬から新規申込み受付けを「一時停止」としていましたが、既存顧客に対してもサービス内容の変更が必要であると判断したようです。


燃料費調整制度の変更も


 電気料金部分の値上げに加え、燃料費調整制度部分にも変更が加えられます。


 燃料費調整制度とは、LNG・原油・石炭の輸入価格の変動を電気代に変動する仕組みです。燃料の輸入価格に応じて毎月変動する仕組みで、楽天でんきを始め多くの新電力、そして大手電力が導入しています。


 楽天でんきではこれまで大手電力の標準メニュー(従量電灯)と同様に、燃料費調整に「上限」を設けていました。ですが今回の料金改定によりその上限を撤廃します。


 平時であればこの「変更」は、ユーザーが支払う電気代に全く影響しません。ですが2022年3月現在、燃料価格が高騰しているため北陸電力、関西電力、中国電力、四国電力、沖縄電力では燃料費調整が上限に達しています。


東京電力EPの燃料費調整単価とドバイ原油の価格推移

東京電力EPの燃料費調整単価とドバイ原油の価格推移

 燃料調整費の上限が撤退されたからといって、「市場連動型プラン」のように電気代が2倍3倍になることはありません(大規模な核戦争でも起こらない限りは) また、燃料価格は3月前半に一旦の天井をつけており、さらなる上昇余地も乏しいとみられます。燃料費調整は燃料の市場取引価格から数ヶ月遅れて推移するため、夏頃まで上昇した後に下落に転じると考えられます。1〜2年のスパンで見れば、料金単価の値上げ幅の方が、燃料費調整上限超過分よりも大きくなるはずです。


 なお、多くの新電力そして大手電力の自由化向けプランには同様に燃料費調整の上限がありません。この点は楽天でんき特有のデメリットではないと言えます。


値上げに踏み切った背景


 楽天でんきが値上げに踏み切った理由は、同社のプレスリリースにある通り電力取引価格が長期間にわたり高騰していることがあります。


11月 12月 1月 2月 3月
19年度 9.03円 8.71円 8.17円 7.59円 7.48円
20年度 5.35円 14.35円 66.53円 8.29円 6.70円
21年度 17.59円 18.04円 23.95円 23.36円 30.76円

 これは卸電力取引所の東京エリアプライス(東京電力管内向けの電気の取引価格)の月平均です。取引価格の「平均」は1kWhあたり8〜9円程度とされていますが、2021年1月に異常な高騰が発生、また2021年11月以降も高止まりしていることが分かります。


 2022年2月・3月の取引価格の水準では、多くの新電力が赤字となるレベルです。


 楽天でんきを始め新電力は卸電力取引所のほか、発電所を持ってる企業と契約して電気を購入する「相対契約」という方法でも電気を調達していますが、この相対契約の取引価格も平時の数倍以上で推移していると新電力関係者から聞いています。


 こうした電力取引価格の高騰の原因としては、まず燃料の輸入価格高騰と、国内の電力需給の逼迫という2つの要因があります。


 新型コロナ禍からの急激な経済回復による需要増加、エネルギー産出国での生産トラブルや輸出規制、そしてロシアによるウクライナ侵攻による供給懸念が燃料価格高騰を招いています(ウクライナ侵攻前から高騰は始まっていました)




大手電力標準メニューより割高に


 楽天でんきの料金改定により、楽天でんき「プランS」の電気代は多くの家庭で大手電力の標準メニューである従量電灯A・Bよりも高くなります。世帯人数別の平均使用量で大手電力従量電灯と料金を比較します。


シュミレーション条件
1人
20A / 月170kWh
2人
30A / 月348kWh
3人
40A / 月391kWh
4人
50A / 月437kWh
北海道電力エリア
プランS
20A契約不可 +27713円 +25433円 +23332円
東北電力エリア
プランS
20A契約不可 +33865円 +32200円 +30936円
東京電力エリア
プランS
20A契約不可 +30777円 +29231円 +27840円
中部電力エリア
プランS
20A契約不可 +41121円 +41670円 +42525円
北陸電力エリア
プランS
20A契約不可 +33438円 +33832円 +34508円
関西電力エリア
プランS
+20585円 +35039円 +37407円 +39941円
中国電力エリア
プランS
+25199円 +43665円 +47326円 +51244円
四国電力エリア
プランS
+15284円 +23427円 +24072円 +24761円
九州電力エリア
プランS
20A契約不可 +45603円 +46518円 +47763円
沖縄電力エリア
プランS
+2947円 -442円 -2008円 -3682円

 ※12月分から導入される市場価格調整、並びに燃料費調整を含めていない試算です(事前予想が出来ないため)


 全ての条件で大手電力従量電灯よりも割高となる結果です。


 契約容量が大きい場合など、従量電灯よりも安くなるケースもありますが多くの一般家庭で楽天でんきは今後「割高」になると結論付けることが出来ます。


 旧料金単価での料金シミュレーションは以下の記事に掲載しています。


2023年12月実施の値上げ 市場価格調整とは


 2022年12月に実施される再値上げを解説します。


市場価格調整とは


 楽天でんきは2022年9月20日、約款を改訂し2022年12月利用分から「市場価格調整」を導入することを発表しました。


 市場価格調整は、日本卸電力取引所での電力取引価格の変動を電気料金に転嫁する仕組みです。他の新電力では「電源調達調整費」という名称で導入されている場合があります。


電気代が高額になる恐れ


 2021年秋頃から日本卸電力取引所での電力取引価格は高騰を続けています。通常、月間平均の取引価格は1kWhあたり8円程度ですが、月によっては20円を超えることもあります。


11月 12月 1月 2月 3月
19年度 9.03円 8.71円 8.17円 7.59円 7.48円
20年度 5.35円 14.35円 66.53円 8.29円 6.70円
21年度 17.59円 18.04円 23.95円 23.36円 30.76円

 電力取引価格の高騰は主に1.燃料価格の高騰、2.電力需給の逼迫によって起こります。世界的なインフレ圧力の高まり、またロシアによるウクライナ侵攻を受けて2022年春頃から燃料価格(石油、天然ガス、石炭)の価格が高止まりを続けており、それが要因の一つとなっています。


 また、日本国内とくに東日本エリア(北海道・東北・東京電力管内)では発電所が不足しており、電力の需要が伸びる時期に電気が足りなくなることで電力取引価格の暴騰が発生しています。


 楽天でんきは6月実施の値上げの時点で、既に多くの一般家庭で大手電力従量電灯プラン(標準プラン)よりも割高となっていましたが、市場価格調整を導入することで電気代が一段と高くなる恐れがあります。


 楽天でんき側も、2022年9月分をもとにした試算として東京電力管内では電気代が1ヶ月で4106円も高くなる見通しを示しています(月300kWhの場合)




2023年4月の値上げ(3度目)


 楽天でんきは2023年4月から3度目となる値上げを実施することを2023年2月20日に発表しました。この3度目の値上げについて解説します。


料金改定の概要


 2023年4月に実施される料金改定をまとめます。



 料金単価が大幅に引き上げられる一方、「市場価格調整」を計算する際に参照する電力取引価格に上限を設けます。上限は30円/kWhなので、2022年中の月間平均値の最高値水準に合わせて設定したものとみられます。


 料金単価の引き上げ分を計算すると、東京電力管内の一般家庭(月300kWh)の場合、月の電気代が3630円、年間では43560円上昇することになります。


楽天でんきの値上げの軌跡 料金単価の推移


 楽天でんきの2022年以降の料金単価の推移を見てみましょう。


時期 料金単価 備考
〜2022年5月 26.50円/kWh 燃料費調整に上限あり
〜2022年11月 29.45円/kWh 燃料費調整に上限無し
〜2023年3月 29.45円/kWh 市場価格調整
2023年4月〜 41.55円/kWh 市場価格調整

楽天でんきの料金単価の推移


契約者が取るべき対応は


 現在楽天でんきを契約している人はどうするべきか。取るべき対応策を提案します。


他社への切り替えを


 既に1度目の値上げの時点で大手電力標準プランと比べて大幅に電気代が高くなっているため楽天でんきの利用を継続するメリットは特に無いと言えます。値上げは3度目ですが、既に一度目の値上げの時点で高くなっています。


 大多数の一般家庭において、楽天でんきは大手電力の標準メニューと比べて割高です。


乗り換え先は必ず「燃料費調整に上限がある」料金プランを


 現在、燃料価格の高騰が続いています。


 多くの電力会社・新電力では、燃料の輸入価格の変動を電気代に反映する「燃料費調整」を導入しています。燃料費調整の計算方法は多くの電力会社が同じ計算式を採用していますが、電力会社によっては燃料価格に「上限」を設けている場合があります。


 2023年2月現在、全国すべての地域がこの上限に達しているため、燃料費調整に上限が無い料金プランは電気代が高騰しています。


燃料費調整単価
2023年4月分
電気代の差
月300kWh
上限あり 上限無し
北海道電力エリア 3.66円/kWh 8.57円/kWh 4.91円/kWh 1473円
東北電力エリア 3.47円/kWh 11.80円/kWh 8.33円/kWh 2499円
東京電力エリア 5.13円/kWh 10.25円/kWh 5.12円/kWh 1536円
中部電力エリア 5.36円/kWh 9.93円/kWh 4.57円/kWh 1371円
北陸電力エリア 1.77円/kWh 9.34円/kWh 7.57円/kWh 2271円
関西電力エリア 2.24円/kWh 9.67円/kWh 7.43円/kWh 2229円
中国電力エリア 3.19円/kWh 13.77円/kWh 10.58円/kWh 3174円
四国電力エリア 2.55円/kWh 10.76円/kWh 8.21円/kWh 2463円
九州電力エリア 1.94円/kWh 7.56円/kWh 5.62円/kWh 1686円
沖縄電力エリア 3.98円/kWh 17.32円/kWh 13.34円/kWh 4002円

 電気代本体部分で「安い」料金プランであっても、燃料費調整まで見ると大幅に割高になってしまいます。一部の電気料金比較サイトなどでは、この部分を正しく反映出来ていないため注意してください。


 燃料費調整に上限がある料金プランは以下のとおりです。





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