シノケンでんきのメリット・デメリットを専門家解説
シノケンでんきのメリット・デメリットを、これまでに多数のメディア取材(産経新聞、日経トレンディ、週刊女性自身等)を受けてきた電気料金の専門家が分かりやすく解説します。料金体系に注意すべき点があります。
目次
シノケンでんきとは(概要・特徴)
シノケンでんきの特徴や概要を解説します。
シノケン管理物件向けの電力供給サービス
不動産の販売、管理などを手掛けるシノケングループの子会社、エスケーエナジーが手掛けている電気の供給サービスです。主にシノケンが販売した、あるいは管理している賃貸物件の入居者に向けて提供されています。
一部のシノケン管理物件では、入居時にシノケンでんきの利用を指定される場合があります。
電力取引価格に連動する料金体系(市場連動型)
シノケンでんきは「電力取引価格」に連動して電気代が変動する、市場連動型プランという料金体系を採用しています。
東京電力や関西電力といった大手電力会社の家庭向けの料金プランでは、毎月の燃料輸入価格(財務省の貿易統計による)を元に電気代が変動します。シノケンでんきでは燃料輸入価格ではなく、電力取引価格に連動するため値動きが異なります(シノケンでんきは燃料輸入価格による変動も併せて採用している)
この市場連動型プランには注意すべき点があります。以下、市場連動型プランであることによって生じる注意点やリスクを中心に解説します。
シノケンでんきのメリット
まずはシノケンでんきのメリットを、他の大手電力会社や新電力会社の料金プランと比較しながら解説します。
ファミリー世帯でお得になりやすい料金体系
シノケンでんきの料金体系は、1契約ごとに定額の基本料金に、使用量に関係なく定額の電力量料金が加算される仕組みです(別途、毎月変動する電源調達調整費などが加算)
一般的な大手電力、主要な新電力会社の料金プランは、電気の契約容量が大きくなるごとに高くなる基本料金に、電気の使用量が増えるごとに料金単価が高くなる電力量料金が加算される料金体系です。こうした違いがあるため、シノケンでんきの電気代は電気の契約容量が大きく、そして電気を多く使うファミリー世帯で他社よりも割安になりやすい料金体系と言えます。
シノケンでんきのデメリット
シノケンでんきのデメリットや注意点をまとめます。
料金体系が複雑・特殊
冒頭でも解説したとおり、シノケンでんきは市場連動型プランという特殊な料金体系を採用しています。東京電力や関西電力といった大手電力各社の標準的な家庭向け料金メニューとは異なる動き方で、電気代が変動します。
また、シノケンでんきは市場連動型プランの中でも料金体系が複雑です。シノケンでんきの調整単価の計算式は以下のとおりです(「加算」の場合)
電源調達調整単価の計算式 |
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(電力取引価格月間平均×消費税率×電源調達調整適用係数-追加調整基準単価)×調達単価係数×適用期間補正係数 |
「適用期間補正係数」は月ごと、エリアごとに変わる係数です。市場連動型プランを採用する新電力が最近増えていますが、私もあまり見慣れない項目です。電源調達調整適用係数は今のところ「1」となっており、現在のところ計算上無いものと扱うことが出来ますが今後変更される場合もあるため「1」以外の数字になった場合、計算が更に複雑化します。この項目自体は他社でも見られるものですが、初めてご覧になる方にはチンプンカンプンだと思います。
電力取引価格が高騰すると電気代が高額になる
これまで解説してきたように、シノケンでんきの電気代は「電力取引価格」が高騰すると高額になる恐れがあります。実際の数字を見てみましょう。
ケース | 電力取引価格(関東) 税抜/月間平均 |
調整単価 | 調整額合計 月300kWhの場合 |
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シノケンでんき 2023年8月 |
12.95円/kWh | 7.91円/kWh | 2373円 |
シノケンでんき 2022年8月 |
31.35円/kWh | 37.29円/kWh | 11187円 |
東京電力EP従量電灯B 2022年8月 |
5.13円/kWh | 1539円 |
シノケンでんきの電気料金本体部分(基本料金+電力量料金)は一般家庭の平均的な使用量(月300kWh)で9130円です。電力取引価格が高騰していた22年8月の実績では電源調達調整費によって電気代が2倍以上になっていたことがわかります(注:シノケンでんきは2023年5月に料金改定を実施したため、実際の当月の料金とは異なる)
同時期は燃料輸入価格も高騰していたため、東電を始めとする一般的な料金体系の料金プランも電気代が上昇していました。ですが東京電力エナジーパートナーの従量電灯B(関東で最もベーシックな料金プラン)の同月の燃料費調整単価は5.13円/kWhですから、一般家庭での燃料費調整額は1539円です。電気料金本体部分でシノケンでんきが多少割安になっても、電源調達調整費まで含めたシノケンでんきの電気代は、東電の2倍近くなった可能性があることが分かります。
このように、シノケンでんきに限らず市場連動型プランは電力取引価格が高騰した際に電気代が高額になる恐れがある点には注意が必要です。大手電力標準メニューの1.5〜2倍程度になることは想定しておくべきです。
以上の理由から、当サイトではシノケンでんきに限らず市場連動型プランの利用を推奨していません。シノケンでんきはシノケンの一部物件で利用が指定されているようですが、このようなリスクがある料金体系の料金プランの利用を指定するべきではないと思います。
市場連動型プランのリスクについては以下の記事でも詳しく解説しています。