自然電力の概要
運営会社 | 自然電力 | 電力調達 | 再エネ36% 卸電力取引所51% ほか |
供給エリア | 離島、沖縄を除く全国 | 契約条件 | 特に無し |
目次
自然電力の特徴
・再エネ比率が「実質」高いプランを提供
・市場価格に連動する珍しい料金体系
・東京ガスが出資
・料金比較サイト「上位」だが、そこには落とし穴も。
福岡県に本社を置く自然電力が提供しています。
自然電力は2011年6月に、社長の磯野謙氏(リクルート出身)が東日本大震災をきっかけとして設立したエネルギーベンチャー企業で、再生可能エネルギーの発電所の運営などを手がけています。ドイツの大手エネルギー会社MVV Energy傘下で再エネの開発を手がけるjuwi社と合弁会社を設立するなど、再エネの開発に力を入れています。
また、2017年には東京ガスから出資を受け、太陽光発電の共同開発を進めています。
特徴的な料金プランを導入しているので、契約する際の注意点も交えながら解説していきます。

料金プランとサービスの解説
自然電力の電気の料金プランやサービス内容を詳しく解説します。
3プランの比較
いずれも「市場価格連動型」の料金プランとなっています。市場での取引価格に、プランごとに異なる上乗せ価格が乗せられた金額が請求されます。
各プランの特徴は続いて詳しく解説します。
SE100プラン
まずは「SE100」プランを紹介します。
再生可能エネルギーで「100%」をまかなうプランです。単なるFIT電気ではなく、非化石証書を使用した正真正銘の再生可能エネルギーで、CO2排出量もゼロとなっています。
固定額の基本料金に加え、市場価格連動型の従量料金単価が課金されます。市場価格(卸電力取引所の取引価格)に連動して30分毎に変動するという仕組みです。市場価格が上がればその分電気料金が高くなりますし、下がれば電気代も安くなります。
SE30プラン
続いて、「SE30」プランを解説します。
再生可能エネルギーを30%とし、料金との両立を図ったプランです。料金体系や仕組みはSE100と同じで、市場価格連動型のプランです。SE100と比べて従量料金の単価が1円/kWh安いです。
エネチェンジや価格.comなどの電気料金比較でお得額「上位」と表示されるようですが、以下で詳しく説明する市場価格連動型プランの注意点をよく理解した上で申し込むことを強くおすすめします。場合によっては大手電力会社よりも割高になる可能性もゼロではありません。

SE Debutプラン
2019年12月から受け付けを開始した新プランです。
SE100・SE30と同様に市場価格連動型の料金プランですが、再エネ比率を3%と低く抑える代わりに、電気代を安く設定しているのが特徴です。SE30と比較して1kWhあたり0.4円安いです。
市場価格連動の注意点
「市場価格連動」の家庭向け料金プランは自然電力を含め数社しかない、非常に特殊なプランです。海外では普及している例もありますが、日本ではまだまだ受け入れられていません。
契約する際の注意点は以下の2点です。
- 電気代が大幅に高くなるリスクもある
- 事前の料金シミュレーションが不可能
西日本エリア、特に九州や四国では太陽光発電の普及により「晴れた休日・昼」の取引価格が0.01円/kWhとなることが日常茶飯事です。タダ同然なので、このタイミングでは自然電力の電気代も非常に安くなります。
平均的な取引価格は8〜10円程度ですが、特に冬の時期などは価格が高騰することも珍しくありません。場合によっては70円を超えることもあり、その時に電気を使うと電気代があっという間に高くなる恐れもあります。取引価格の下限は実質0.01円ですが、上限は無いようなものです。100円を超えたこともあります。
また、事前の料金シミュレーションも「不可能」です。公式サイトや他の電力比較サイトでは過去の実績に基づいた試算をしています。公式サイトのシミュレーションは2017年の年間平均値とのことです。
しかし、過去のデータはあくまでも過去のものです。相場は刻一刻と変動するため、正確な予想は出来ません。トヨタ自動車のような大企業ですら、為替相場の見通しを大きく外すことは珍しくありません。
公式サイトや電力比較サイトの「試算」は参考にすらならないのではないでしょうか。そうした理由から当サイトでは自然電力を含め、料金単価自体が市場価格連動になっているプランをシミュレーションに掲載しないこととしました(2019年4月末に掲載を取り下げ)
一方で、使い方によっては電気料金が「大幅に安くなる」場合もあります。メリットの部分については記事の最後で解説します。
解約時の違約金は?
契約上は1年契約となっていますが、いつ解約しても違約金の発生は無いとしています。
なお、以前は契約時に5千円のデポジット(解約時に全額返金)が必要でしたが、2018年10月に廃止され、現在はありません。
支払い方法は?
クレジットカード払いのみです。

自然電力の評価
自然電力について更に詳しく解説します。
顧客対応は?
2018年6月にメールで問い合わせを行ったところ、土日をはさんで2営業日後に返信がありました。また、2019年4月にもメールで問い合わせていますが、翌日には回答を得られました。速さの面では問題無いと感じます。
不満点を挙げるとすると、ウェブのメールフォームに200文字という字数制限があり、とても不便だと感じました。
環境面・エコ
2018年4月の実績では、51%が卸電力取引所、36%が再エネ(FIT電気)、その他13%となっています。
電源構成上の「再エネ比率」が実質半分程度であるにもかかわらず「再エネ100%(SE100プラン)」を名乗れるのは、非化石証書という仕組みを利用しているからです。
再エネで作られた電気には、「CO2排出量がゼロである」という価値があります。その価値を「証書」として権利化し、売買できるようにしたのが非化石証書です。公的に認められた制度です。
非化石証書によって得られた収入は、近年負担が大きくなることで批判が高まっている「再エネ賦課金」にあてられます。つまり、再エネの買い取りを直接支える資金となり、再エネ導入を支えることが出来ます。
自然電力のでんきでは、この非化石証書を利用することで再エネ比率を100%、CO2排出係数を実質ゼロとしています。

市場価格連動にはメリットも
記事前半では市場価格連動型プランの注意点を中心にまとめましたが、使い方によっては通常の料金プランよりも割安になる場合もあります。
前述のとおり、電気の「市場価格」は地域・季節・時間帯によっては0.01円/kWhと「タダ同然」で取引されている場合もあります。
例えば取引価格が0.01円の時に自然電力の「SE100」プランで電気を使った場合、諸手数料を含めた電気代は1kWhあたり12.55円となり、料金が安い新電力でも1kWhあたり20円程度であることをふまえると、非常に安くなります。
「安い時」に多く使い、「高い時」に使わなければ電気料金を大幅に圧縮できるのが市場価格連動型プランのメリットと言えます。具体的に、電気が安いのは以下のタイミングです。
- (休日)晴れた日の6時〜16時
- (平日)晴れた日のお昼12時台
- 春・秋
- 深夜(24〜7時くらい)
料金が大幅に高くなるリスクも
一方で、市場連動型プランは電気代が大幅に高くなってしまうリスクもあります。高くなりやすいタイミングは以下の条件。
- 真冬・真夏の夕方〜夜
- 夏・冬
電力の取引価格は平均すると1kWhあたり8円程度ですが、例えば2020年末現在、取引価格が暴騰しており、夕方などに数時間にわたり1kWhあたり70円以上をつける日も発生しています。このような事態が発生すると、大手電力会社より電気代が高くなるでしょう。

電気料金比較サイトで上位表示の理由は?
自然電力のでんきはいくつかの電気料金比較サイトで上位に表示されています。条件によっては一番上に出てくるものもありました(2019年8月現在)
自然電力を上位表示している料金比較サイトでは、入会特典の割引を試算に加えています。自然電力の場合、条件によっては2万円を越える割引があり、そのため上位に表示されるようです。
なお、入会特典割引には「契約から11ヶ月後の料金から値引き」などの条件があるので、適用条件をよく確認してください。また、こうした割引は1回限りの適用なので、長期間利用を継続するとお得感は下がっていくことや、度々説明してきたように自然電力の料金プランは「割高」になるリスクもある点にも注意が必要です。
他の料金比較サイトでは、市場価格連動型プランである旨の注意喚起が少なく、不親切だと思います。
2021年1月現在の価格高騰について(1/8追記)
当サイトではこれまで市場連動型プランについて注意喚起を続けてきましたが、2020年の年末から卸電力取引所の取引価格が異常な高騰を続けています。
年度 | 平均価格 |
---|---|
2020年度 | 38.85円/kWh |
2019年度 | 7.36円/kWh |
2018年度 | 9.95円/kWh |
2017年度 | 9.78円/kWh |
2016年度 | 8.49円/kWh |
これは各年度の年末年始、12月26日〜1月6日の取引価格の平均値(東京エリア)ですが、2020年度が突出して高いことが分かります。1月に入ってから更に高騰を続けており、1月4〜9日で平均を取ると79.6円となります。
既に自然電力側からも注意喚起が行われていますが、現在の取引価格の水準で電気を使用すると、電気代が大手電力の数倍と高額になります。年末年始の平均値で計算しても、東電が6800円のところ自然電力は15000円前後と2倍近くになります。
このタイミングで契約することは絶対におすすめしませんし、既に自然電力と契約している人は直ちに解約(他社への切り替え)を推奨します。詳しくは以下の記事をご参照ください。この価格高騰は春先まで続く可能性があります。
なお、当サイトでは今回のような価格高騰・変動リスクを考え、市場連動型プランを料金シミュレーションに以前から掲載していません。
エルピオが最短3営業日で切り替え対応
電力会社の切り替えは通常は毎月1回の「検針日」付で行われるのが一般的ですが、特例としてエルピオでんきが検針日に関係なく最短3営業日前後での切り替えに対応するとの連絡を受けています(スマートメーター設置済みの場合)
エルピオは大手電力よりも割安な料金プラン(取引価格高騰の影響も受けない)を提供している点、また短期間で解約しても解約違約金などの発生が無い点でも切り替え先として推奨できます。自然電力側との調整が付いているとのこと。
切り替え手続きはエルピオでんきに申し込みを行うだけで完了します。自然電力への解約手続きは必要ありません。申し込みはエルピオでんき公式サイトから。申込方法の詳細も記載されています。