ソフトバンクでんきが市場連動型に移行へ
ソフトバンクでんきは一部地域で「市場連動型プラン」に移行します。市場連動型プランには電気代が高騰するリスクがあり、注意が必要です。契約者の方に向けて注意点を解説します。
目次
一部地域で市場連動型に移行するソフトバンクでんき
まずは市場連動型プランについて解説します。
市場連動型プランとは
市場連動型プランとは、電気代が「電力取引価格」に連動する料金体系のプランです。
通常、電気代は石炭や石油などの燃料の「輸入価格」の変動に応じて、毎月変動する「燃料費調整制度」というものが導入されています。この燃料費調整は、財務省が発表している「貿易統計」から計算するもので、ソフトバンクでんきもこれまで燃料費調整制度を採用していました。
ですが今後は日本卸電力取引所という取引所での「電力取引価格」に応じて電気代が変動する「電力市場連動額」が新たに導入されます。
2023年6月1日から電力市場連動額が導入されることで、ソフトバンクでんきは市場連動額プランとなります。
市場連動型に移行する地域は?
ソフトバンクでんきでは、以下の地域で電力市場連動額を導入します。
- 東北電力エリア
- 東京電力エリア
- 関西電力エリア
- 九州電力エリア
上記4エリアのおうちでんき、くらしでんき、自然でんきなどで導入されます。
上記以外のエリアや、対象外のプランでは電力市場連動額は導入されませんが、燃料費調整に上限が無いことで大手電力標準メニューよりも電気代が高くなっている場合があります。この記事の最後をご覧ください。
市場連動型プランのリスク
市場連動型プランにはリスクがあります。注意すべき点を解説します。
電力取引価格によっては電気代が高額に
市場連動型プランは電力取引価格によっては電気代が高額になるリスクがあります。
ソフトバンクでんきの「電力市場連動額」は、「電力市場連動単価」に電気の使用量を掛けて計算します。
電力市場連動単価は、電力取引価格によって変動します。電力市場単価は電力取引価格によって30分単位で決まるもので、例えば4月5日の17時00〜30分の時間帯が10円、17時30分〜18時の時間帯が15円といった形で値段が付けられています。
分かりやすく言い換えると、ソフトバンクでんきは今後、30分単位で電気料金の単価が変わる料金体系になる、ということです。
2022年から取引価格が高騰中
通常の電力取引価格は月間平均で1kWhあたり8円程度とされていますが、過去には月間平均が66.53円(東京エリア、2021年1月)を付けたこともあります。また2021年秋ごろから、国際的な資源価格の高騰や円安、電力需給のひっ迫により電力取引価格の高騰が続いており、2022年はほとんどの月で平均取引価格が20円以上で推移しました。
電力取引価格は燃料価格のほか、電力の需給にも左右されるため電気の需要が少ない春と秋に安く、逆にエアコンなどで電気を多く使う夏と冬に高くなる傾向があります。
ソフトバンクでんきの「2023年5月以降の料金改定について」のページでは市場連動型への移行で電気代にどれだけ影響が出るのか試算できるシミュレーションがありますが、2022年11月以降で最も取引価格が安かった2023年3月の取引価格を元にした試算(2023年4月5日確認)であるため、夏や冬の時期はこれより影響(悪影響)は大きくなります。
ソフトバンクの市場連動は特にリスク高
2022年以降、電力取引価格の高騰により多くの新電力が経営に打撃を受けており、その対策としてソフトバンクでんきのように市場連動型プランに移行するところが増えています。実はその中でも、ソフトバンクでんきの料金体系はリスクが高いものです。
他社の市場連動型プランでは、電力取引価格の「月間平均」を元に金額を算定するものが一般的です(電源調達調整費と呼ばれる仕組み) 30分単位で電気代が変動するものではなく、1ヶ月単位で電気代・単価が変動するものです。
電力の取引価格は1日の中でも大きく変動します。電力の需給に応じた変動で、皆が多く電気を使う夕方に取引価格が高くなる傾向があります。
一般的な市場連動型プラン(電源調達調整費)では、時間帯による取引価格の変動の影響は無く、取引価格が高い夕方も逆に取引価格が安い深夜も含めた平均の取引価格で電気代が計算されます。
それに対しソフトバンクでんきでは、取引価格が高い時間帯に使うと電気代がより高くなります。取引価格は需要が大きい時間帯に高くなる傾向があるため、つまり一般的な生活リズムで生活していると、電気代がより割高になるということです。
ソフトバンクでんきの電力市場連動単価は完全に電力取引価格に連動するものではありませんが、連動の度合いを決める「市場調達比率」が値上げ実施前に公表されていない点もリスクが大きく、不透明と指摘できます(2023年度分は23年5月に公表するとのこと)
電力市場連動額でいくら高くなるのか
執筆時点(2023/04/05)で約款が公表されていないため、電力市場連動額導入のリリースを元に解説・予想します。
電力市場連動単価は電力取引価格の他、ソフトバンクが定める「基準市場価格」と「市場調達比率」によっても変動します。基準市場価格はリリースでは0.00円/kWhに設定されているようなので、計算結果に影響を与えないため今回は無視します。
月300kWhを使用するケース(東京電力管内2023年3月の電気料金で12000円くらいのケース)で、市場調達比率を30%とした場合の取引価格別の電力市場連動額の概算予想は以下のとおりです。
取引価格 | 電力市場連動額(月) |
---|---|
10円/kWh | 900円 |
20円/kWh | 1800円 |
30円/kWh | 2700円 |
40円/kWh | 3600円 |
50円/kWh | 4500円 |
60円/kWh | 5400円 |
70円/kWh | 6300円 |
80円/kWh | 7200円 |
電力市場連動額導入前に1.2万円だった電気代が、電力取引価格によっては2万円近くになる恐れもある、ということになります。公式サイトのシミュレーションでは、市場調達比率が30%より低いか、基準市場価格が0円よりも高く設定されているようですが、市場調達比率が30%よりも高くなるリスクもあるため予想として妥当性があるものと考え、掲載します。市場調達比率が60%になれば電力市場連動額は上表の2倍になります。
公式サイトのシミュレーションは2023年3月のデータを元にしており、取引価格の月間平均額は11.15円(東京エリア)です。上記の試算は約款の公表後に改定する場合があることを予めご了承ください(あくまでもリリースから読み解いた予想です)
電力市場連動額により電気代が安くなる可能性もありますが、直近は電力取引価格の高騰が続いておりリスクを重視すべきと考えます。また、値下がりする幅よりも値上がりする幅の方が大きいです(取引価格の平均水準は8円、下限は0.01円のため)
市場連動型移行前から既に電気代が高騰中
ソフトバンクでんきは電力市場連動額を導入する前、あるいは導入しない地域でも以前から電気代が高騰しています。
燃料価格によって変動する燃料費調整について、燃料価格が高騰した際の「上限」が以前は設けられていましたが、これが2022年11月から廃止されています。
東京電力や関西電力などの大手電力会社の従量電灯プランでは、燃料費調整の上限が引き続き維持されており、2022年以降上限に張り付いたまま推移しています。この影響でソフトバンクでんきの燃料費調整額が相対的に割高になっています。
電気代トータルで見ても、ソフトバンクでんきは基本的に全国の大多数の一般家庭において、大手電力各社の従量電灯プランよりも電気代が高くなっています(2023年4月分燃料費調整単価での試算)
最新の燃料費調整額を含めた料金試算は当サイトの電気料金一括シミュレーションで確認出来ます。
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