タダ電のメリット・デメリット

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値上げについては以下の記事で解説しています
タダ電が値上げ!利用者が取るべき対処方法は?

「タダ電」を専門家が解説します


 「毎月1万円まで電気代がタダ」というタダ電のメリット・デメリットを、電力自由化の専門家としてこれまでに多数のメディア取材を受けてきた私が解説します。



タダ電とは(概要)


 タダ電の概要を簡単に解説します。


エスエナジーが2023年5月に開始


 タダ電は東京都港区に本社を置くエスエナジー社が2023年5月に開始した電力サービスです。


 エスエナジーは2020年設立の会社で、電力を販売する上で必要な登録小売電気事業者としての登録を2018年に行っている事業者です。設立と登録の間に2年のタイムラグがありますが、これは元々別の会社が取得したライセンスをエスエナジーが2020年以降のどこかのタイミングで買い取ったものとみられます。


タダ電のメリット


 大手電力各社や他の新電力と比較したタダ電のメリットを解説します。


一人暮らしなら安く使える可能性もある


 タダ電の料金体系は、一人暮らしのように電気の使用量が少ないケースでメリットを得やすいものです。


 タダ電の「タダ電プラン」では基本料金がゼロ円、電力量料金単価が65円に設定されています(約款に1プランしか記載が無いため単価は全国一律とみられる) 別途、燃料費調整費と再エネ賦課金が加算されます。


 料金の内訳は以下のとおりです(2023年6月分)


電力量料金単価 65.0円/kWh
燃料費調整単価 7.91円/kWh
再エネ賦課金 1.40円/kWh
合計 74.31円/kWh

 10000円を74.31で割ると134.58です。つまりこのケースの場合、134kWhまでは電気代が「タダ」ということになります。←他ウェブメディアの記事によれば燃料費調整、再エネ賦課金を含めない金額で無料ラインを計算するようです。


 一人暮らし世帯の平均的な電気使用量が月170kWh程度なので、1Kや1Rの部屋で一人暮らしをしている方はメリットを得やすいと言えます。上の数値の場合、使用量が約270kWhを超えると東電よりタダ電が高くなる計算です。関西・九州では損益分岐点がもう少し低く、約220kWhを上回るとタダ電が関西電力や九州電力の従量電灯より高くなります(20A契約の場合)


解約違約金・初期費用無し


 解約違約金や初期費用が無いとしています。


市場連動型プランではない


 昨今、電気代が「電力取引価格」に連動する市場連動型プランが急増しています。大手のソフトバンクでんきauでんきでも、地域やプランによっては市場連動型プランに移行しています。


 市場連動型プランは電力の取引価格によっては電気代が高額になる場合もあり、リスクが大きい料金体系と言えます。当サイトでは基本的に市場連動型プランの契約は推奨していません。


暴騰を繰り返す電力取引価格

暴騰を繰り返す電力取引価格

 タダ電はサービス開始時点の約款を見る限り、市場連動型プランではありません。燃料費調整単価は2023年6月分で約7.91円/kWh(私の計算による)と、東京電力エナジーパートナーの値上げ実施前の単価と同水準です。


 今後、料金体系を変更する場合もあるのでタダ電に限らず新電力の約款変更には注意してください。




タダ電のデメリット


 タダ電にはデメリットもあります。


料金単価が大手電力の1.5〜2倍と高価


 タダ電は上でも指摘したとおり、電力量料金単価が65.00円/kWhに設定されています(基本料金は無い)


 例えば東京電力エナジーパートナーの標準メニューである従量電灯Bの場合、料金単価は30.00〜40.69円/kWhに設定されています(使用量が増えると単価が3段階で高くなる) つまり、タダ電の料金単価は大手電力と比べて1.5倍前後高いというわけです(単価が安い関西は約20〜29円なので2倍を超える)


 「1万円分」の値引きはあるものの、そもそも電気代自体は割高に設定されている点には注意が必要です。大手電力の電気代から1万円引き、と勘違いしないよう注意してください。


ファミリー世帯では大手電力より割高になるリスク


 電力量料金単価が割高であるため、電気を多く使うとメリットが小さくなり、デメリットが大きくなる料金体系です。


 一人暮らしのように使用量が少ない場合は「1万円」という割引が大きな効果を発揮することでメリットが大きくなりますが、ファミリー世帯や戸建て住宅では電気の使用量が大きくなるためデメリットが大きくなります。


 例えば4人暮らしの平均使用量、50A契約・月437kWhで試算するとタダ電の電気代は21861円(再エネ賦課金除く)となりますが、東京電力従量電灯Bでは16461円なので明らかにタダ電の方が割高です。


持続可能性にやや不安も


 使用量が少ない場合、電気代が大幅に安いかあるいは「無料」になる一方、使用量が多いと大手電力よりも割高になる料金体系です。消費者が「賢い」場合、使用量が少ないユーザーばかりがタダ電を契約することになります。


 一般的に、電気を販売する際の原価(電気の調達コスト+託送料金)は1kWhあたり20〜30円以上にのぼります。月100kWh使うユーザー1件あたり安くとも月2000円以上のコストが掛かります。


 タダ電はアプリで広告を配信するとしていますが、1ヶ月で2000円あるいは3000円の収益を賄えるほどの広告を配信するのは、なかなか難しいのではないかと思います。例えばネットフリックスには「広告つきベーシックプラン」がありますが、これは広告がない「ベーシックプラン」と比べて月200円安いです。また、広告無しで視聴できるYoutubeの有料プランも月額1180円という料金設定です。1ユーザーから月額数千円の収益を広告配信によって得る、ということがいかに難しいかお分かり頂けると思います。


 したがって、使用量が少ないユーザーばかりが増えた場合、ビジネスモデルとして継続が難しくなるでしょう。


ガスの乗り換えもおすすめ


 ガス会社(都市ガス)を乗り換えると、ガス料金が安くなります。一人暮らしの1ヶ月分のガス代くらいのキャッシュバックを出しているガス会社もあるので、ガス会社の乗り換えもこの機会に検討してみてください。


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