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タダ電が2024年1月に大幅値上げ 利用者の対処方法は
タダ電が2023年9月に続き二度目となる値上げを2024年1月に実施します。値上げで電気料金はどうなるのか、利用者が取るべき対処方法を解説します。
タダ電とは サービスの特徴
まずはタダ電の特徴を紹介します。既にご存知の方は読み飛ばしてください。
毎月の電気代が一定額まで「タダ」
タダ電は2023年5月、「毎月1万円まで電気代がタダ」という触れ込みでエスエナジー社が開始した電力小売サービスです。
毎月一定額まで電気代が「無料」になるという、これまでに無かった料金体系からサービス開始当初は情報感度が高いネットユーザーから注目を集めました。
タダ電が値上げする背景は?
タダ電が値上げを実施する背景を、これまでに電力自由化・電気料金の専門家としてメディア取材を受けてきた私が独自に考察し、まとめます。
ビジネスモデルに無理があった
まず指摘すべき点は、ビジネスモデルに「無理があった」点です。
私はサービス開始当初から、タダ電のサービスを解説する記事の中で以下のように解説してきました。
一般的に、電気を販売する際の原価(電気の調達コスト+託送料金)は1kWhあたり20〜30円以上にのぼります。月100kWh使うユーザー1件あたり安くとも月2000円以上のコストが掛かります。
タダ電はアプリで広告を配信するとしていますが、1ヶ月で2000円あるいは3000円の収益を賄えるほどの広告を配信するのは、なかなか難しいのではないかと思います。例えばネットフリックスには「広告つきベーシックプラン」がありますが、これは広告がない「ベーシックプラン」と比べて月200円安いです。また、広告無しで視聴できるYoutubeの有料プランも月額1180円という料金設定です。1ユーザーから月額数千円の収益を広告配信によって得る、ということがいかに難しいかお分かり頂けると思います。
したがって、使用量が少ないユーザーばかりが増えた場合、ビジネスモデルとして継続が難しくなるでしょう。
電力を販売・供給するにはコストが掛かります。1kWhの電気を供給する際の「原価」は地域によっても差はありますが、25円以上です。タダ電の無料ライン月70kWhではざっくりと1ユーザー2000円以上のコストが掛かります。
エスエナジー社はアプリを通じた広告配信などを行うとしていましたが、無料ユーザーばかり増えると広告配信ではサービスを維持するのは難しいことが推察できます。
容量拠出金が始まる
2024年度から、容量拠出金という新たな費用負担が始まります(負担者は新電力)
容量拠出金は将来の電力不足を防ぐため、みんなで発電所の維持に対しお金を負担する「容量市場」という制度によって発生する費用負担です。2024年度の費用負担は1kWhあたり換算で3.86円/kWh(日本総研試算)とされており、これは一般的な電力会社の家庭向け料金メニューの1割にあたる金額です。

容量拠出金のイメージ
タダ電に先駆けて既にいくつかの新電力がこの容量拠出金を理由に電気料金の値上げを予告しています。なお、2023年6月に値上げを実施した大手電力の多くがこの容量拠出金を織り込んだ料金算定を行っており、またそれに追随して料金改定を実施した新電力も既に容量拠出金を織り込んでいるものと予想していますが、2023年下半期に料金改定を実施していない料金メニューは今後、タダ電と同じく値上げに踏み切る可能性があります。
値上げでどうなる?利用者が取るべき対処方法は
タダ電の値上げで電気料金はどうなるのか。利用者が取るべき対処方法とあわせて解説します。
多くのユーザーで大手電力より「割高」に
- 毎月無料枠を6500円から5000円に縮小
- 月5千円以上利用すると基本料金280円が加算
- 電力量料金単価を65円から70円/kWhに値上げ
- 市場連動型に移行
タダ電が2024年1月に発表した料金改定は上記の内容となっています。
燃料費調整額の算出方法について現時点で手元に情報が無いため概算となりますが、毎月約70kWhまでが無料、それを超えると大手電力標準メニューの約2倍の従量料金が加算されることになります。
当サイトでは一人暮らし世帯の平均使用量を月170kWh/20Aと設定しており、この水準だと電気代は月7885円になります(再エネ賦課金、政府電気代補助金を含まない)
| 内訳 |
金額 |
| 電力量料金 |
+11900円 |
| 基本料金 |
+280円 |
| 割引 |
-5000円 |
燃料費調整額 (4.15円/kWh 24年1月東京) |
+705.5円 |
| 小計 |
7885円 |
東京電力の標準メニュー(従量電灯)で同じ条件で電気を使うと料金は約4975円です(同額の再エネ賦課金、政府電気代補助金含まない) 燃料費調整単価が異なる点には注意が必要です。この部分でも約10円/kWhの差が生じています。
| 社名 |
2024年1月東京単価 |
| タダ電 |
4.15円/kWh |
東京電力 東京ガス CDエナジー等 |
-6.15円/kWh |
東電エリア、2024年1月分燃料費調整単価・20A契約で試算した場合、約110kWhを上回ると東京電力の標準メニューよりも高くなると推定します。この水準を上回ると加速度的に電気代が割高になります。
市場連動型に移行した点も要注意 料金高騰リスクが
タダ電は今回の料金改定で市場連動型プランに移行しました。細かな計算方法は省略しますが、電力取引価格が上昇、具体的にはエリアプライスの月間平均が15円を上回ると電気代が高くなります。取引価格が下落した場合の割引はありません「電力使用月の前月1日〜末日の平均単価が15.00円を超えた際にのみ適用いたします。」と約款に記載

高騰していた2022年の電力取引価格月間平均推移
例えば2023年1月の東京エリアの平均取引価格(2023年2月の電気代に反映)19.84円/kWhで計算すると、この市場連動型部分により調整単価が11.82円/kWh上昇することになります。一人暮らし世帯の平均使用量、月170kWhでは電気代が2009円上昇することになります。
平均取引価格15円という水準は、東京電力管内2023年の年間で見ると1・2・11月に超過しており、それを除けば電気代への影響は無かったものの、過去最も高騰した2021年1月の水準(66.53円/kWh)では調整単価を63.18円/kWh押し上げることになり、電気代が大幅に上昇する恐れがあります。
電力取引価格はしばしば高騰しており、その取引価格を電気代に反映する市場連動型プランはリスクが大きいため当サイトでは一律に利用を推奨しておりません。
割高になるなら他社への切り替えを
タダ電は一人暮らしの平均的な使用条件で、大手電力標準メニューよりも「割高」となる可能性があります。以前よりも無料になる水準も切り上がっており、また無料水準を上回ったときの電気料金も上昇しているため、注意が必要です。
1月5日発表、15日実施なので他社に切り替えるならばすぐに行動することをおすすめします。まずはご自身の直近の電気使用量を確認してください。1〜3月は電気使用量が増えがちなので、12月実績から少し余裕をもって計算することをおすすめします。
使用量が平均的な水準より大幅に少ない場合は、引き続きタダ電は大手電力各社そして他の新電力各社よりも割安です。
他社への切り替えは2週間〜1ヶ月程度掛かることが多いです。早めの行動をおすすめします。
タダ電からの切り替えにおすすめの電力会社(地域別)
タダ電からの切り替えにおすすめの電力会社を地域別に紹介します。各地域の大手電力の標準メニューと、世帯人数ごとの平均的な使用条件で料金を比較します。なお、関西・九州では基本的に大手電力(関西電力・九州電力)の従量電灯への切り替えを推奨します。
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