電化上手が値上げ。乗り換え先として最適なプランを紹介します
東電のオール電化「電化上手」が大幅に値上げされることが発表されました。なぜ値上げされるのか背景にある事情を解説した上で、乗り換え先として最適な料金プランを紹介します。2025年春の値上げについても記事の最後で解説しています。
目次
ついに値上げされる電化上手
まずは電化上手の値上げを解説します(2022年10月の値上げに関する解説です 25年春の値上げは記事の一番最後へ)
22年10月から大幅値上げされる電化上手
東電が2022年1月に、電化上手の「料金見直し」を発表しました。同年10月1日から値上げされます。料金プランの変更点は以下のとおり。
内訳 | 旧料金 | 新料金 | ||
---|---|---|---|---|
電力量 料金 |
昼間 | 夏季 | 39.44円/kWh | 34.16円/kWh |
その他季 | 32.32円/kWh | 30.67円/kWh | ||
朝晩 | 26.49円/kWh | 25.94円/kWh | ||
深夜 | 12.48円/kWh | 15.12円/kWh | ||
割引 | 5時間通電機器 | 253円/kVA | 割引無し | |
通電制御型夜間蓄熱式機器 | 154円/kVA | 割引無し |
なお、基本料金と全電化割引(5%)の部分に変更はありません。
全体的に深夜以外の時間帯は値下げ、深夜は値上げという形の「料金改定」です。
値上げ幅は年間1万円以上
値上げされる時間帯もあれば値下がりする時間帯もあり、イメージしづらいと思うので当サイトのオール電化住宅のモデルケースで試算した結果を紹介します(10kVA契約・月480kWh)
旧料金 | 新料金 | |
---|---|---|
夏季 | 12330円 | 12548円 |
その他季 | 11903円 | 12391円 |
割引(電化割引・通電機器割引)を含めていない試算ですが、明らかに新料金の方が割高です。年間で5040円の値上げとなります。廃止される通電機器割引を含めると、年間1万円以上の値上げとなるでしょう。
昼間の料金は値下げとなる一方、深夜は高くなるので特に太陽光発電を導入している住宅で値上げ幅が大きくなります(モデルケースは太陽光発電未設置を想定)
なぜ値上げされるのか
電化上手の値上げの背景には、日本の電力事情の急激な変化があります。
電化上手の料金プランが設計された2010年代以前には、東電も福島や新潟で原子力発電所を稼働していました。原子力発電所は発電量を一定に保って発電を行うため、原発が稼働していると電力需要が少ない「深夜」に電気が余りやすくなります。電化上手はその余りがちな深夜電力を多く使ってもらうため、深夜の料金を大幅に割り引く形で設計されました。
ですが2011年に東電が起こした原発事故以来、東電を始め日本の電力会社は多くの原子力発電所の稼働を停止させています。代わりに火力発電による供給が増えましたが、火力発電とくにガス火力発電は発電量の調節が容易です。需要が少ない深夜は発電量を落とすことが出来るため、以前ほど深夜に電力が余りにくくなっている状況にあります。
例えば、2021年12月の東電アリアの電力の取引価格は以下のようになっています。
時間帯 | 平均取引価格 |
---|---|
8〜22時 | 19.06円/kWh |
23〜7時 | 15.9円/kWh |
深夜帯とそれ以外の時間帯との差は小さいと言えます。また、15.9円で調達した電力を、1kWhあたり9.46円の送料(託送料金)を払ってお客さんに届けると、単純計算で25.36円/kWh掛かる計算です(実際には市場調達100%ではないため、原価はこの水準より安い) 電化上手の12.48円/kWh(旧料金)という料金設定は、東電にとって赤字となるリスクが大きいと言えます。
値上げ後の15.12円という水準でも、東電にとっては変わらず赤字となるリスクがあると言えます(その分、割高な昼間の料金で採算を取る)
電化上手契約者は何をすべきか
年間1万円近く値上げされる電化上手。契約している人はどうすべきか、対処法を紹介します。
割安な料金プランへの乗換がおすすめ
電力自由化で参入した新電力の一部が、オール電化用のプランを提供しています。その多くは東電の現行のオール電化プランである「スマートライフ」に準じた料金プランであるため、電化上手から乗り換えることで電気代が年間2万円前後割高となるリスクがあります。モデルケース(10kVA契約・月480kWh・割引含めず)で主な新電力のオール電化プランと料金を比較します。
社名・プラン名 | 月平均料金 |
---|---|
東電・スマートライフ | 13480円 |
出光興産・オール電化 | 13690円 |
CDエナジー・スマートでんき | 13662円 |
東京ガス・もらえる電気 | 13455円 |
東電・電化上手(新料金) | 12430円 |
東電・電化上手(旧料金) | 12010円 |
新電力のオール電化プランは東電のスマートライフと比較すると安いものの、値上げ後の電化上手と比較しても大幅に高いことが分かります。新電力への乗り換えには注意が必要です。
そもそも電化上手は、以前の日本の電力事情を基準に設計された料金プランであるため、2016年以降に参入した新電力が電化上手と同じ条件で料金プランを設計できるはずもなく、電化上手に相当する新電力のオール電化プランは「皆無」と言える状況にあります。
2023年6月に再値上げへ
東電は2023年6月に家庭向けの電気料金を一斉に値上げします。既に2022年10月から値上げされている電化上手についても、23年6月に再び値上げされる見通しです。値上げ幅は標準的なケースで4.6%となります。22年10月に値上げされたところから、更に4.6%値上がりします。
2025年4月に値上げ(全電化住宅割引廃止)
2025年3月末をもって電力量料金の5%を割り引く「全電化住宅割引」を廃止します。東京電力では平均的な世帯で月に約1000円の値上げになると発表しています。
この値上げ後の料金を、東電の現行のオール電化プランであるスマートライフと比較します(10kVA契約・月480kWhの場合 同額の燃料費調整額、再エネ賦課金は含まない)
料金プラン | 月の料金 |
---|---|
電化上手 | 18265円(その他季) 18474円(夏季) |
スマートライフL | 18860円 |
近年の度重なる値上げにより、差はだいぶ狭まってきていますが引き続きスマートライフよりも電化上手の方がやや安いことになります。
また、同条件で試算すると新電力各社のオール電化プランと比較しても、電化上手の方が引き続き「やや安い」状況が続きます。例えばCDエナジーのスマートでんきは月18603円、出光でんきのオール電化プランは月18750円となりスマートライフより安いものの電化上手(25年春値上げ後)よりも高いです。
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