東電が高圧・特別高圧を値上げ 対処方法を解説します
東京電力が高圧電力・特別高圧の値上げを発表しました。契約者が取るべき対処方法を、電力自由化の専門家が解説します。
- この記事の著者:石井元晴
2014年から当サイトを運営。産経新聞、週刊女性自身、週刊ポスト、女性セブンなど数々のメディアに電力自由化の専門家として取材を受けてきました。400社以上の料金プランに目を通しています。
目次
高圧・特別高圧電力を値上げする東電
東電は高圧電力・特別高圧電力の値上げを2022年9月20日に正式に発表しました。
2023年4月に見直しへ
今回の「値上げ」となる料金体系の見直しは2022年9月に発表、10月から順次契約者(需要家)に対して通知される見通しです。
実際に料金体系の見直しが行われるのは2023年4月以降となります。契約期間の満了日を迎え次第、順次新たな料金体系に切り替わることになります。
市場価格の変動を転嫁する
今回の料金体系の見直しにより、日本卸電力取引所における電力取引価格(スポット市場価格)の変動が電気料金に転嫁されます。
従来の料金体系では財務省貿易統計による「燃料価格」を電気料金に転嫁する燃料費調整制度が取られていましたが、今後はそれに加えて電力取引価格の変動も転嫁されることになります。
従来の変動項目 | 改定後の変動項目 |
---|---|
燃料価格による燃料費調整 | 燃料価格による燃料費調整 卸電力取引所の電力取引価格 |
電気料金への具体的な影響は?
東電が示している資料によれば、料金体系の変更により22年7月21日〜8月20日の電力取引価格を元にした試算では電気料金が1割弱上昇する見通しが示されています。
この見通しはスポット市場価格を32.29円/kWhとしており、直近の電力需要ピーク期の価格イメージと言えますが、冬場は更に上昇するリスクがあります。
一方、春・秋の需要閑散期には取引価格も下落するため、電気料金は従来方式よりも下落する場合があります。とはいえ直近の電力相場の水準では年間を通じてみると1割以上上昇することは避けられないと言えます。
値上げに至った背景
東電はなぜ値上げを行うのか、その背景を解説します。
世界的に続く異常な燃料高
世界的に燃料価格の高騰が続いています。
2021年秋頃から原油や石炭、天然ガスの高騰がみられました。それに加え2022年2月に発生したロシアによるウクライナ侵攻による地政学的リスクの高まりから一段と価格が上昇、原油価格は一時と比べて落ち着きを取り戻しているものの天然ガス価格は異常とも言える高騰を続けています。
電力需給の逼迫(電力不足)
日本では近年、電力不足が頻発しています。電力不足が発生すると電力取引価格が暴騰するため、電力会社(小売電気事業者)にとって調整コスト高騰の原因となります。
東京電力グループは多数の発電所を保有していますが、電力自由化が進められていく段階で東京電力は機能ごとに分社化されています。電気の販売を担う東京電力エナジーパートナーは、東電内の発電所を保有する企業から電力を購入する必要があります。
需給逼迫による取引価格により、東京電力エナジーパートナーは高値で電力を調達する必要が生じ、収益を圧迫しています。2022年6月末時点で67億円の債務超過となっており、8月には東京電力ホールディングスから2000億円の増資を受けています。
市場価格連動のリスク・問題点
市場連動型に移行するリスクや問題点を解説します。
電力取引価格高騰により電気代が高騰する恐れ
これまでの料金体系では、電力取引価格の高騰は需要家が負担する電気料金に直接的な影響を与えることはありませんでした。ですが今後は電力取引価格の高騰が電気料金に直接影響を及ぼします。
直近の電力取引価格は高止まりが続いており、今後も当面の間は高止まりすることが予想されています。つまり電気料金の値上がりは避けられないと言えます。以下は直近の電力取引価格の月間平均です。
11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 | |
---|---|---|---|---|---|
19年度 | 9.03円 | 8.71円 | 8.17円 | 7.59円 | 7.48円 |
20年度 | 5.35円 | 14.35円 | 66.53円 | 8.29円 | 6.70円 |
21年度 | 17.59円 | 18.04円 | 23.95円 | 23.36円 | 30.76円 |
契約者が取るべき対応は?
需要家が取るべき対処方法をまとめます。
値上げ実施までは現在の契約を死守する
料金体系の変更(値上げ)は2023年4月以降に順次、契約期間の満了をもって進められます。従って、現在の契約期間が継続している期間は従前の料金体系が維持されます。
現在、日本の電力業界全体が苦境に陥っており、東電から乗り換えて電気代を削減できる新電力も見当たらない状況です。したがって、現在の東電の契約期間中は東電の契約を継続することが最良の選択と言えます。
他社の料金プランと料金を比較する
新たな料金体系に移行する数ヶ月前の時点で、東電の値上げ後の料金プランと他社プランの比較を行ってください。現状、他社(新電力)でも市場連動型の料金体系を採用したものしか新規申込受付けを行っていない状況ですが、市場連動型同士で料金を比較することで電気料金を削減できる可能性があります。
以下の一括見積もりサイトを利用して複数の新電力から見積もりを取り寄せてください。
サイト名 | 対応種別 | 対応地域 |
---|---|---|
エネチェンジ | 高圧・特別高圧 | 全国 |
ただし、東電の「値上げ幅」が新電力業界から恨み節が聞こえるほどのものであったため、東電からの乗り換えで安くなる電力会社が無い場合も少なくありませんが、それを確認する意味合いでも一括見積もりをおすすめします。
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