東京ガスの電気の燃料費調整額には上限が無い

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東京ガスの燃料費調整額の上限を専門家が解説


 東京ガスの燃料費調整額には上限はあるのか。電力自由化の専門家としてこれまでに多数のメディア取材を受けてきた私が、約款の内容を分かりやすく解説します。



2023年6月以降は「上限無し」でも問題無し


 東京ガスの電気の燃料費調整の上限については記事後半で詳しく解説しますが、東電が従量電灯を値上げした2023年6月以降は当面、よほどのことが起こらない限りは燃料費調整の有無はスルーして大丈夫です。


 2022年から2023年5月まで、東京ガスの電気は燃料費調整に上限が無いことで東電の従量電灯より割高になっていました。ですが東電が大幅な値上げを行うにあたって、燃料費調整がリセットされています。高くなったところから更に再び上限まで上昇する危険性は「当面は」無いと言えます。


 なお、2023年の料金改定に伴い、東京ガスの電気は東電従量電灯と同じ燃料費調整単価になっています(東京ガスは上限無し、東電従量電灯は上限あり) ロシアによるウクライナ侵攻を上回るような事態が起これば、再び上限に達する可能性もゼロではありませんが、当面は問題無いと言えます。


東京ガスの電気の公式サイト

以下、2023年6月以前の情報に基づく解説です
燃料費調整上限について解説しています

燃料費調整額に上限が無い東京ガスの電気


 東京ガスの燃料費調整額には上限がありません。上限が無いことによって生じるリスクや問題点を正しく解説します。ちなみに、撤廃というのは勘違いで「基本プラン」には最初から上限がありませんでした。


燃料費調整額とは


燃料費調整額


 まずは燃料費調整額について簡単に解説します。


 燃料費調整額とは、燃料(LNG、石炭、石油)の輸入価格の変動を毎月の電気料金に転嫁する仕組みです。東京電力のような大手電力と多くの新電力が採用しています。


 財務省が発表している「貿易統計」の数字を元に計算されます。東京ガスが輸入している燃料の価格によって計算されるわけではなく、日本全体の燃料の輸入価格に応じて計算されます。


 また、東京ガスの燃料費調整額は東京電力と同じ計算方法なので、金額自体も「基本的には」同じになります。


直近の燃料費調整額の推移


 直近の燃料費調整単価の推移を紹介します。


燃料費調整単価(東電)


 2021年1月の燃料費調整単価は新型コロナ禍による世界的な経済停滞により燃料価格が低迷していたことを受け、-5.2円/kWhという単価でしたが2022年8月は5.1円と10円以上値上がりしています。


 月300kWhの電気を使う一般家庭では、燃料費調整額の高騰によりこの1年半の間に電気代が月3090円も値上がりしています。燃料価格が安かったところから、一転して高騰したためより負担感が大きくなっています。


上限が無い影響・リスクは?


 燃料費調整単価は上昇を続け、22年8月時点で既に上限にほぼ到達しています。9月以降、上限を設けていない料金プランでは上限を突破する可能性が濃厚です。


 東電の従量電灯や、一部の新電力の料金プランでは燃料費調整に上限があります。ですが東京ガスは以前からその上限を設けていないため、燃料価格の高騰が続いた場合電気代が相対的に高くなる恐れがあります。


 例えば2人暮らし世帯の平均使用量(30A契約・月348kWh)で試算した場合、東京ガスの「基本プラン」(ガスセット契約)は東京電力の従量電灯Bと比べて年間6626円安くなる料金設定ですが、燃料費調整単価が上限を超えて推移した場合、例えば上限+1円/kWhで半年間推移した場合を想定すると年間の料金削減幅は6626-2088(上限超過分)=4538円となります(東京ガスの方がお得、という意味)


上限超過期間→ 3ヶ月 6ヶ月 1年間
燃料費調整単価
(上限無しの場合)
11.47円/kWh 8.30円/kWh 6.71/kWh

 1年間の料金削減額(東電従量電灯Bと比較して)と、燃料費調整単価の上限を超過する期間を比較して、東京ガスの方が電気代が高くなってしまう「損益分岐点」を計算しました。


 上限を超過する期間が3ヶ月で済む場合、燃料費調整単価が11.47円/kWh以上で推移すると東京ガスの方が高くなる計算です。


 上限超過期間が半年の場合、燃料費調整単価8.3円/kWh以上で東京ガスの方が高くなります。超過が1年続く場合は燃料費調整単価6.71円/kWhで東京ガスの方が高くなります(いずれも2人暮らし平均使用量での試算)


 2023年3月追記:2022年7月にこの記事を書いた時点では上記の「損益分岐点」を長期間にわたり超え続けると予想できていませんでした。実際には損益分岐点を大きく超えて推移しており、東京ガスの電気は東京電力従量電灯Bより割高な状況が続いています。


東京ガスの電気の公式サイト

燃料費調整額に上限がある料金プランは?


 短期的にでも高くなるのは嫌だ、リスクは最小限に抑えたいという人のために燃料費調整額に上限を設けている料金プランを以下の記事で紹介しています。


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