東京ガスの電気が東京電力よりも安い理由を専門家が解説

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燃料費調整の関係で2023年現在、東京ガスの電気は
東京電力従量電灯Bよりも高くなっています

東京ガスの電気が「安い」理由


 東京ガスの電気は、なぜ安いのか。その理由を電力自由化の専門家としてこれまでに多数のメディア取材を受けてきた私が分かりやすく解説します。



東京ガスの電気の公式サイト

東京電力より「安い」東京ガスの電気


 まずは東京ガスの電気料金プランを紹介します。


世帯人数別の料金シミュレーション


 世帯人数別の平均的な使用条件をもとに、東京電力の標準的なプランである従量電灯Bと料金を比較します。


シュミレーション条件
お得率と年間節約額
1人
20A / 月170kWh
2人
30A / 月348kWh
3人
40A / 月391kWh
4人
50A / 月437kWh
ずっとも電気1
ガスとセット
20A契約不可 -7.8%
-8896円
-8.5%
-11331円
-9.1%
-13880円
ずっとも電気1S
ガスとセット
-3.3%
-1682円
-5.6%
-6340円
-6.2%
-8269円
-6.7%
-10328円
ずっとも電気1
電気のみ
20A契約不可 -4.9%
-5596円
-6.0%
-8031円
-6.9%
-10580円
ずっとも電気1S
電気のみ
-2.8%
-1429円
-5.1%
-5793円
-5.7%
-7634円
-6.3%
-9600円

 4人世帯では月に1000円以上安くなる料金設定です。他の新電力と比較しても、ガスとのセット契約の場合は上位のお得な料金プランであると評価できます。


 「電気」という商品はどの会社から購入しても「同じ」なのに、なぜ東京ガスは安い料金で提供できるのか。その理由を以下、詳しく解説します。


東京ガスの電気の公式サイト

東京ガスの電気が安い理由


 東京ガスの電気が安い理由は主に以下の3点が要因として指摘できます。


3段階制料金プランというトリック


 東京ガスや東京電力を含め、日本の多くの電力会社が「3段階制料金プラン」という料金体系をとっています。使用量が増えるにつれて、料金単価が3段階で高くなっていく料金体系です。


3段階制の料金プラン

使用量が多くなると料金単価が高くなり、電力会社が儲かる

 この3段階制料金プランの、1番安い料金単価は電力会社にとって利益がほとんど出ないか、場合によっては赤字になる水準です。一方、最も高い3段階目の料金単価は、電力会社が多くの利益を上げられる水準に設定されています。


 東京ガスの料金プランは、主に2・3段階目の料金単価を東京電力よりも大幅に割り引くことで、東京電力よりも安くなるように設計されています。実際の料金単価を見てみましょう(ずっとも電気1)


東京電力
従量電灯B
東京ガス
ずっとも電気1
1段階目 19.88円/kWh
〜120kWh
23.67円/kWh
〜140kWh
2段階目 26.48円/kWh
121〜300kWh
23.88円/kWh
141〜350kWh
3段階目 30.57円/kWh
301kWh〜
26.41円/kWh
350kWh〜

 東京ガスの「ずっとも電気1」は、使用量が一定以上(30A契約、セット契約の場合、月160kWh)になると東電よりも安くなる一方、使用量が少ない場合は東電よりもむしろ高くなる料金設定です。


 東電が大きな利益を得ていた部分の料金設定を、割安に設定することで無理の無い範囲で「安い」料金プランを設定していると言えます。


 なお、使用量が少ない場合でも東電より安くなる「ずっとも電気1S」というプランも提供していますが、このプランでは1段階目が東電よりやや安く、3段階目が大幅に安く設定されています。値下げ幅は3段階目の方が大きいです。


東京ガスの電気の公式サイト

ガスの契約者を繋ぎ止めたい


ガス


 2016年の電力小売自由化に続いて、2017年にはガス自由化も実施されました。東京ガスは、東京電力を始めとする新規参入の「ガス会社」に顧客を奪われる立場にあります。


 そこで武器となるのが、電気とガスのセット契約です。東京ガスは電気とガスをセット契約にすることで、月275円もしくは0.5%の「セット割引」を提供しています。


 電気・ガスを東京ガスで契約した人が、仮にガスを他社に切り替えてしまうとセット割引が適用されなくなるため、電気代が高くなります。そうした障壁があるため、一般的に「セット契約」は電気のみの契約と比較して解約率が低いと言われており、東京ガス以外のガス会社やソフトバンクauといった通信会社もこぞって「セット契約」を押しています。


自社で大規模な発電所を保有している


 電力自由化で参入した新電力の多くは、発電所を全く保有しておらず、卸電力取引所などからの調達に頼っています。


 多額の設備投資を必要としない点などにメリットがある一方、株価や為替相場と同じように価格変動リスクがあるため、卸電力取引所に頼る新電力は相場の動向によっては業績が悪化するケースがあります。


出光興産と共同出資している扇島パワー(横浜市)

出光興産と共同出資している扇島パワー(横浜市)

 東京ガスは昭和シェルやENEOSなどと共同で、大規模なLNG火力発電所を関東各地で運営しています。LNG(液化天然ガス)は都市ガスの主原料でもあり、東京ガスはガス事業でこれまで保有してきたルートを活用して発電所を効率的に運営しています。


 また、東京ガスは栃木県真岡市にある神戸製鋼所グループの発電所から15年にわたり電気を購入する契約を結んでいますが、この発電所の燃料は東京ガスが供給する「都市ガス」です。ガス事業の資産を活用した電力事業を展開しています。


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