ヨコハマのでんきが供給終了へ 利用者が取るべき対応は?

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供給終了するヨコハマのでんき 契約者が取るべき対応を全解説


 2023年3月をもって電気の供給を終了、すなわちサービスの提供を終了する「ヨコハマのでんき」 現在契約している人はどう対処すべきか、過去にヨコハマのでんきを利用していた経験がある私が、他社の動向をふまえながら分かりやすく解説します。HTBエナジーやハルエネへの切り替えは推奨しません。



サービス提供を終了するヨコハマのでんき


 まずはサービス終了について分かりやすく解説します。


全プランが2023年3月で供給終了に


 ヨコハマのでんきは2023年3月31日をもって、全プランにおいて電気の供給を終了します。すなわちサービスの提供が終了となります。4月以降はヨコハマのでんきからは電気の供給が行われなくなります。


終了する背景と原因


 全世界的な資源高に加え、急速に進んだ円安により日本が輸入しているエネルギーの価格が2021年秋頃から高騰を続けています。それに加え、国内では電力需給の逼迫による要因も電力の取引価格を押し上げています。


 電力は日本卸電力取引所という取引所で取引が行われています。ここでの取引価格は月間平均で8〜10円/kWh程度が平均的な水準ですが、2022年以降は20円以上と平均の2倍3倍という水準での取引が続いています。月によっては月間平均が30円を超えることもある状況です。


東京エリアプライスの推移

電力取引価格の推移(電力不足が起きた21年1月にも暴騰)

 ヨコハマのでんきを始め、多くの新電力はお客さんに供給する電力を卸電力取引所や、他の企業から調達してまかなっています。この調達価格が高騰しているため、多くの新電力が苦境に陥っており、ヨコハマのでんきのようにサービス提供を終了するところや、倒産に至る新電力も相次いでいます。


 ヨコハマのでんきの場合、相対契約による調達(火力発電所などを保有する企業と直接契約して電気を調達する手法)が69.2%、30.8%が風力や太陽光発電といった再生可能エネルギーによる調達であることを公表しています(2020年度電源構成) 本来、再生可能エネルギーは燃料価格高騰の影響を受けませんが、ヨコハマのでんきが調達している再生可能エネルギーは「FIT電気」と呼ばれる、固定価格買取制度を利用して買い取られた電力でした。このFIT電気を電力会社が購入する際の価格は、基本的に卸電力取引所での電力取引価格に連動するため、ヨコハマのでんきのようにFIT電気の調達割合が高い新電力は昨今の電力取引価格高騰の影響をより受けやすいという構造的要因があります。




契約者が取るべき対応は


 現在、ヨコハマのでんきを契約している人はどう対処すべきか、対処方法を解説します。


出来るだけ早く東電に切り替え申し込みをする


 2023年3月をもってヨコハマのでんきからの電力の供給が終了するため、なるべく早くほかの電力会社に切り替える必要があります。理由は後述しますが、切り替え先は東京電力エナジーパートナーの「従量電灯B・C」を強く推奨します。


 東電の従量電灯は私が知る限り、電話でしか申込みが出来ません。1〜3月は引っ越しシーズンであるため、ただでさえ電話が繋がりづらいことに加え、昨今はヨコハマのでんきのようにサービス終了する新電力や値上げをする新電力から東電の従量電灯に移る人が続出しているため、手続きが混み合うことが予想されます。


 2022年秋に、値上げする楽天でんきから東電に切り替えた週刊誌記者の方は電話が繋がるまで20分以上待ったと言っていましたし、私自身も2022年春に当時契約していた熊本電力がサービス終了になったため東電の従量電灯に切り替えた際も15分近く電話が繋がるまでに時間を要しました。


 時間に余裕をもって対処することを強く推奨します。


 東電を含め、他の電力会社への切り替えには住所や契約者名義などに加え、供給地点特定番号と呼ばれる22桁の数字と、ヨコハマのでんきのお客様番号が必要です。手元にそれらの情報を用意した上で手続きを行ってください。いずれもヨコハマのでんきマイページの「請求明細」から確認できます。


なぜ東電が良いのか


 切り替え先として東電の従量電灯が最適である理由は以下のとおりです。



 現在、燃料の輸入価格が高騰しています。ほとんどの電気料金プランには、燃料の輸入価格の変動を毎月の電気代に転嫁する「燃料費調整制度」を導入しています。多くの新電力では各地域の大手電力の従量電灯プランと同じ計算式の燃料費調整制度を採用しており、通常は燃料費調整の部分で電気代に差が生じません。


 ですが大手電力の従量電灯では燃料費調整に「上限」が設けられているのに対し、ほとんどの新電力そして大手電力の新しい料金プランには上限がありません。2022年9月以降は東京電力でもこの上限に達しており、9月以降は燃料費調整の上限の有無によって電気代に差が生じています。


燃料費調整単価
2023年4月分
電気代の差
月300kWh
上限あり 上限無し
北海道電力エリア 3.66円/kWh 8.57円/kWh 4.91円/kWh 1473円
東北電力エリア 3.47円/kWh 11.80円/kWh 8.33円/kWh 2499円
東京電力エリア 5.13円/kWh 10.25円/kWh 5.12円/kWh 1536円
中部電力エリア 5.36円/kWh 9.93円/kWh 4.57円/kWh 1371円
北陸電力エリア 1.77円/kWh 9.34円/kWh 7.57円/kWh 2271円
関西電力エリア 2.24円/kWh 9.67円/kWh 7.43円/kWh 2229円
中国電力エリア 3.19円/kWh 13.77円/kWh 10.58円/kWh 3174円
四国電力エリア 2.55円/kWh 10.76円/kWh 8.21円/kWh 2463円
九州電力エリア 1.94円/kWh 7.56円/kWh 5.62円/kWh 1686円
沖縄電力エリア 3.98円/kWh 17.32円/kWh 13.34円/kWh 4002円

 差がわずかであれば問題ありませんが、2022年12月分や2023年1・2月分の燃料費調整単価では、燃料費調整に上限が無い全ての電気料金プランが、基本的に大多数の一般家庭において、東電従量電灯(燃料費調整に上限がある)よりも電気代トータルで見て割高になっています。東京ガスENEOSでんきauでんきなど「有名所」も軒並み、燃料費調整に上限がありません。


 注意点としては、東電でも「スタンダード」や「プレミアム」といった従量電灯以外の料金プランでは燃料費調整に上限が無く、従量電灯よりも割高になっています。また、東電の従量電灯は2023年5月以降に値上げが予定されていますが、少なくともそれまでは割安な状況が続きます。


ハルエネ・HTBエナジーは推奨しない


 ヨコハマのでんきが「業務提携先」として案内しているハルエネ、HTBエナジーと契約することは推奨しません。


 ハルエネ、HTBエナジーは「電源調達調整費」と呼ばれる特殊な料金項目を導入しています。


 電源調達調整費は、卸電力取引所における電力の取引価格の変動を電気代に添加する仕組みです。取引価格が安くなると電気代が安くなり、高くなると電気代が高くなるものです。一般的な電力会社が採用している燃料費調整制度は財務省が発表している「貿易統計」をもとに計算されるため、燃料費調整とは異なります。ハルエネ、HTBエナジーでは燃料費調整に加えて電源調達調整費を加算しています。


 記事前半でも解説したように、現在は卸電力取引所での電力取引価格が通常の2〜3倍の水準で高騰を続けています。だからこそ、ヨコハマのでんきを含め多くの新電力がサービス終了や倒産に追い込まれているわけで、このタイミングで電力取引価格の変動が転嫁される料金プランはデメリットの方が大きいです。


2023年1月単価 東京電力
従量電灯
HTBエナジー
燃料費調整単価 5.13円/kWh 12.99円/kWh
電源調達調整単価 - 5.84円/kWh
合計 5.13円/kWh 18.83円/kWh

 例えばHTBエナジーの2023年1月分の燃料費調整単価は12.99円/kWh、電源調達調整単価は5.84円/kWhと、変動部分で合計18.83円/kWhです。東電の従量電灯の燃料費調整単価は5.13円/kWhなので、月300kWhの電気を使った場合、HTBエナジーは変動部分で4110円も高くなります。電気代本体部分では若干安くなるものの、電気代支払額トータルで見て月数千円以上割高になることは避けられません。




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